隣人は密かに笑う。   8





夜も大分更けた。
外へと耳を澄ますと、夜に鳴く虫の鳴き声が聞こえた。

ナナリーは携帯を握りしまる。
今日はリヴァルとスザクと出かけてくると、連絡が入ってからそろそろ帰ってくるだろうと思っていたが
一向にルルーシュは帰ってこない。


携帯にかけようか、かけまいか、そろそろ帰ってくるかもしれない・・・。
そんな葛藤が続いていた。
でも、声を聞いて安心したい。

ナナリーは携帯の短縮ボタンを押した。

しかし、ルルーシュの携帯は電波の届かないところなのか?故意的に切っているのか繋がらないとアナウンスが流れた。
ルルーシュの性格上、ちゃんとナナリーとの連絡は取れるようにしているから、電源を切る事は少ない。


「お兄様・・・。」



ナナリーはシュンとして、リビングで一人寂しく折り紙を続けた。


「ナナリー様、お食事はどうなさいますか?」

「咲世子さん。」


ナナリーはルルーシュと連絡が取れないことを話した。
咲世子もルルーシュがナナリーからの連絡を無視することはありえないと驚いた。
携帯の電池が切れているのか?


「ナナリー様、私少し外を見てきますね。」

「お願いします。咲世子さん。」



咲世子も最近のルルーシュの様子の可笑しさに気付いていた。
もしかしたら、何かあったのでは・・・?


ここのところ朝から顔色の悪いルルーシュ。


咲世子は学校にまだ残ってるかあたりを見回したが、
流石に夜遅いため、人一人見当たらなかった。


「あら?」


ふと外灯の傍になにか落ちているのを見つけた。


「これは・・・」



カバンと、何かプレゼントだろうらしきものが落ちている。
こんなところに落ちているなんておかしい。
咲世子はカバンの中身を確認すると、ルルーシュの持ち物だと分かった。

「ルルーシュ様・・・?」









「あ、咲世子さんお帰りなさい。どうでした?」

「・・それが・・・。」


咲世子はナナリーにルルーシュからのお土産を渡した。

「まぁ、これはお兄様からですね。今どこに?」

「それが・・・・・・。」









「やられたな。」

ルルーシュの部屋で一人、C.C.がつぶやいた。



ルルーシュの行方不明は、アッシュフォードの耳にも伝えられた。














「ね、ルルーシュ見なかった?」

「いや、見てないけど?」

「私も、今日ルル学校にも来てなかったよね。」

「ルルーシュ奴、今日はちゃんと学校いくって言ってたのに!」


「それっていつ?」


ミレイの真剣すぎる顔に、生徒会のメンバーはビックリした。


「えっと・・・何かあったのですか?」

スザクは、いつものミレイの様子と違うから、まるでルルーシュの身になにか起こったかのような感じみたいにとれる。
ミレイは一瞬躊躇ったが、正直に昨夜からルルーシュが帰ってないことをいった。


いなくなったり、外泊するときは必ず連絡が来るはずなにのに、昨夜はなかったのだ。
心配した咲世子は、昨日の夜、探しに行ってルルーシュのカバンとナナリーへの土産が落ちていた事を話した。


「え・・・それって俺が、別れてすぐ後ってこと?」

「どういう事?」


昨日、放課後、ルルーシュ、スザクとリヴァルで遊んでいたのだ。
帰りはスザクは軍の施設に、リヴァルとルルーシュは学校でクラブハウスと寮へと道が分かれるところで
また明日といって分かれたのだ。

ルルーシュの身に何かあったのかとすれば、その別れ道からクラブハウスまでの道のりだろう。


まだ詳細がハッキリしないから、ルルーシュのことはまだ誰にも言わない。
何かあったらまず、アッシュフォードに連絡する事とミレイは釘をさした。



ルルーシュの最近の様子の可笑しさと関連するのだろうか?

「ルルーシュ・・・。」





















顔に水滴があたった。


ルルーシュはゆっくりと目を覚ました。
見慣れないところだった。


どこかのマンションの一室にも見える造りは、とても薄暗くて見通しが悪い。

「ここは・・・。」


状況を知ろうと、起き上がろうとするが体が動かなかった。

「な・・!!」


腕が後ろで縛られていた。
懸命に解こうとするが、逆効果らしくどんどん縄が食いこんで、腕に痛みが走った。
一番最近の記憶を辿る。

昨日は久しぶりに3人で遊んで、クラブハウスへもう少しとところで誰かを見た。
後ろから布を口にあてがわれたそれからの記憶がない。

「そうか・・・俺は、ここへ連れてこられたのだな。」


一気に状況を理解し、さてこれからどうしようと冷静に分析をする。


「・・・!!」


人の気配がした。
この前、賭けチェスの帰りに感じた視線と一緒だった。


コツコツと足音のするほうへ、視線をあげるとそこには一人の男が立っていた。



「やぁ・・・僕の顔を見るのは・・・初めてだったよね?」

「・・・お・・お前は・・・。」


「夜はいつも楽しませてもらってるよと言えば分かってもらえるかな?」


「!!!」


この男が、ルルーシュの今一番頭を悩ませている男だ。
部屋に詰め寄るのにも飽き足らず、今度は拉致監禁まで引き起こした。

しかし、いまこうやって顔が見えているのは好都合だ。
ギアスを使ってとっとと、永遠にさようならでもしよう。



執着心があだとなったなとルルーシュは笑った。

ルルーシュはギアスの力を解放させた。


「この縄を解いて、いますぐ俺の前から消えろ。」

「それは出来ない。」


「!!」


おかしい。今確かにギアスを使った。
しかし、この男はNOと言った。
以前にこの男に使ったことはあるだろうか?



「会うのは二回目だよね。覚えてる?」


ルルーシュは覚えていない。
だからきっとギアスを手に入れて間もない頃、実験でいろんな人に試して時にでもこの男と会っていたのだろう。


「今までずっと君の事見ていたんだ。」


一歩男が近づくたびに、ルルーシュは一歩下がる。
とうとう壁まで追いやられてしまって、追い込まれる。


ルルーシュは顎をつかまれた。


「そういえば、いつも目隠しだったね。こうやってやっと近くで君の綺麗な顔が見れた。」

「やめろ・・・」

「怖がってるのかい?いつもしている事だろう?」

「放せ・・・。」


「いや、もう返さないよ。君みたいな綺麗な子そう簡単にいるもんじゃないしね。」


「んん!!」



何度目かになる無理矢理なキス。
当たり前かのように舌が入ってくる。
気持ち悪いこの上ない。


「ぷは・・、ハァハァ・・・お前こんな事して、ただで・・・」

「見つからなきゃいいよ。ここは幸い完全防音の部屋で、オートロックだからね。」

























ルルーシュが姿を消して、数日たった。
無論手がかりは見つからない。


アッシュフォードが総力を挙げて探しているのだが一向に手がかりがつかめない。

警察にいいたいが、事情があるだけに迂闊に警察にもいえない。
















暗い部屋。
ルルーシュの腕の戒めは取れたが、今度は首輪につながれていた。
服らしきものは着ているが、これが服というのが怪しい。

これでは家畜のようだ。
ルルーシュは情けなく笑う。

困ったものだ。
連絡手段がない。
丸腰で、しかも室内は窓にも鍵がかかっていて開けられない。




「随分と、間抜けな恰好をしているな?」


「え・・・。」



そこには普段見慣れた女が立っていた。



「C.C.お前!どうしてここに・・・!」

「お前のことなど、すぐ分かる。」

「だったら、今まで・・・!!」



「落ち着け、ルルーシュ。」

「いや、悪かった。」



C.C.はルルーシュの首に嵌められている首輪をはずそうとするが、びくともしない。
頑丈に作られていた。
首輪は皮は硬く破れもしない、鎖に直接就いていて、簡単にはずせる構造ではない。


「これは鍵が必要だな。」


「どうする?」


「私の力では無理だ。多分普通の人間では無理だぞ。」


「・・・絶望的だな。」



「いや、まだ手はある。幸い私は、お前の場所を突き止めた。だから私がお前を探している者たちを誘導すればいい。」


「お前、それじゃ・・。」

「大丈夫、見つからないようにやるさ。」


「頼んだぞ。」


「あぁ、約束だ。」



そうしてC.C.は気配を消した。
























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