この全ての罪の元凶は私

あの時、あの夜、予感はしていたのに。

流されたまま、受け入れた

子供が悪いわけではない

罰を受けるのは私だ

なのに、何故子供が罰を受けているの?

何故私は普通に生活をしているの?

子供を助けないで

世間の目が怖くて

何もできない、、、

誰も悪くなのに

私一人だけの罪なのに

私は罰を受けることさえできない罪を犯した。




第一部 −母が犯した罪−







贖罪〜贖いの翼〜   2



RRRRRRRRRR

「あっ!電話」
肩ぐらいの桃色の髪を右のほうに傾いて1つに束ねている女性が受話器を急いだ。
彼女の名前は春野 モモカ。
以前、高級会員制クラブで歌姫をしていた。
今でも仕事は続けているが、今日で退職となる。
実は彼女一年前に結婚をしていた。
左手の薬指の指輪がキラリと光る

「はい、春野です。」
『もしもし、僕だけど。今日、大事なお客様が来るから一時間早く着てくれないかな?』
「はい、かしこまりました。」
『ありがとう、ではよろしくね』

モモカは慌てて仕事の支度をする。
「全く、、大事な客が来るなら先にいえっツーの!!」









「いやー本当にごめんね。こっちも急に聞いたんだよ。だから失礼の内容にね。」
オーナーもモモカに訳を話す。
話し方から見ればお調子者っぽいが、実はかなりのやり手で
このクラブをここまで大きくしたのも彼の実力である。
全くどんな手を使ったかなんて創造できない。
「いえ、今日で最後ですから、、。」
「そうだね。頼むよ」


モモカが更衣室に入ったと同時に、入り口のほうに大きなリムジンが着いた。
他にも高級車はあったが、このリムジンが異様に目立つ。
乗っていたのは背の高い外人。
透き通った緑色の瞳、綺麗な濃い紫髪のオールバック
どうやら、今日言っていた大事な客人とは彼のことらしい。
オーナが慌てて彼に駆け寄った。
「やあ、初めまして」
「ささ、こちらへ。一番前のS席をご用意してございます。」
その男の名前は、ルーカス・アスター。
メディアの帝王とも呼ばれている世界的ビジネスマン。
頭の回転もよく、各国の語学を操る。
「あなたのお店、、、楽しみしています。」
「はい、、どうぞくつろぎ下さい。」



演奏がじっくり見れて、ピアノも見れる一番の特等席。
ソコに、ルーカスと二人のSPがきて座る。
カツカツとハイヒールの音がする。
モモカが来たのだ。

モモカが来てから、客足があがったのでオーナーは複雑だった。



だが、モモカから見たらやっと普通の主婦になれるので喜びが大きい。
赤いハイヒール、赤いドレス
ゆっくりピアノに座る。
ルーカスはモモカをじっと見つめていた。
歌いだしてもずっとずっと、、瞬きもせずに、、、。
ただ、その中に不敵な笑みがあった。
「おい」
ルーカスがSPを呼んだ。
「すまないが、オーナーを呼んできてくれ。」
「はい。」
ルーカスはニヤリと笑いながらウイスキーを喉に通した。


「はい、ルーカス様、なんでございましょうか?」
SPがオーナーを連れてきた。
「すまないが、向こうで話がしたい。」
「はい。」
ソコは客室と離れた暗いところだった。
「用件は簡単だよ。私は今歌っている女性が気に入ってね、、今夜一晩ともにしたいんだが、、」
「あ、、ですが彼女はもう結婚をしていて、、」
「金はいくらでも出す。少しの時間だけでいいから来るように言ってくれないか?」
「、、、、、、はい、、、、」
着々と交渉は成立。
モモカの歌も終りこっちへ返ってくる。


モモカはオーナーとルーカスが話しているのを目撃した。
戻りたいがかえるに帰れなく、そのまま立ちすくんでいた。
「宜しく頼むよ。」
「はっはい。」
オーナーが振り帰った。
ソコに立ちすくんでいたモモカが居たので驚いた。
“まさか、今の話聞かれていたんじゃないかって、、”
「あ、、ご苦労様春野さん。」
「はい、、」
モモカはルーカスとすれ違った。
ルーカスの視線が怖かった、あの突き刺さるような視線、、。



「あっ、そうだ。春野さん後で最上階に来てくれないかな?」
「スイートルームですよ?」
「あはは、、君の退職祝いを皆で打ち上げするから。」
「そうですか、、」
「30分後に来てくれるかな?」
「はい、わかりました。」


オーナーの態度がおかしかったのをモモカは見逃さなかった。

それに、、ルーカスのことも気になった。

何がおかしいのかわからないまま約束の30分がたった。
エレベーターで最上階の部屋へと急いだ。

「失礼します。」

誰も居ない。
明かりはついてる。
、、、誰かいた。
ソファーに座っている。
立ち上がった。
男が一人。
背の高い、濃紫髪の男、、。
「えっ?」
モモカに近づいてきたのはルーカスだ。
ネクタイを緩め背広を脱いだ。


----------騙された----------


そうだ!今日は大事な客が来るって言っていた。
それなのに、スイートルームでパーティーなんておかしい!!
逃げなきゃ
でも、体が怖くて動かない。
ガチャガチャとドアノブをまわすが混乱していて上手くできない。
出ようと思ったときには、、遅かった。

ルーカスはモモカの腕をしっかりつかみ奥の部屋へと連れ込んだ。
「いやあ!放して!!」

「逃げようと思っても無駄だ。貴女は自分からここへ来たのだから、、。」




「いやあ、、、だれか、、誰か助けて!!」





悲鳴は虚しく部屋に響くだけだった。
















どれくらい時間がたったのだろう?
少なくとも深夜は回っている
ベッドの上でモモカは死んだ魚のような目をして動けずに居た。
奥から、シャワーの音がする。
逃げるのなら今のうちだ。
気づかれないように、すばやく着替えて部屋を後にした。






モモカが家に着いたのは、1時を過ぎていた。









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