贖罪〜贖いの翼〜 9 夏になった。 二人で暮らし始めて半年が過ぎていた。 ある夜の事だった。 そのときは夏休みの直前でいつものように二人はくつろいでいた。 まあ、場所はソファーだったり、ベッドだったり、床のときもあるが・・・ 寝そべっていた時、カカシはサクラの脚にある大きな傷跡に気がついた。 「その傷・・どうしたの?」 カカシがその傷の所に触れた。 「あ、この傷ね・・・。」 サクラは傷跡を露に見せた。 とても大きく痛々しそうに見える。 「小さい頃のなの?」 「見えない所にあるからすっかり忘れてた。」 「なんか、訳ありって感じだね。」 サクラは大きく息を吐いてからゆっくり話始めた。 「この傷ね・・・もう・・・10年ぐらい前のときかな?4歳ぐらいだったと思うんだけど・・・」 それは、サツキと両親が死ぬ少し前のこと。 日々続く虐待に絶望を見た母・憎む父・怯える子供 怯えるといっても、実際に怯えていたのはサクラと母のモモカでサツキは反抗していた。 そんなサツキを父親は憎く見ていた。 その日の夜は行き過ぎた行動までいってしまったのだ。 父親のシランの手には包丁が握られていた。 狂ったシランをモモカはとめに入ったが、力及ばず倒れこんでしまった。 壁を背にしてサクラが座り込んでその前にサツキがサクラを守るようにして座っていた。 狐や猫が威嚇するような目つきをして・・・・・ その目つきがシランには気に入らなかったらしく酷く暴れた。 「・・・・・」 「なんだ?その目つきは?」 「・・・・・」 サツキはシランを睨み続ける。 「・・・ガキが!!ふざけんな!!」 包丁を振り回して回りのものに当たる。 「ぶっ殺すぞ!!ガキが!!」 包丁がサツキめがけて飛んできた。 「サツキ危ない!!」 一瞬、時が止まったように静かだった。 サツキは無傷で助かったが・・・・・ 目の前にサクラが倒れている。 よく見ると左も太ももの部分が血で染まっていた。 サクラはサツキをかばって怪我をした。 すぐ病院に運ばれたが針でたくさん縫うほどの大怪我となった。 「そんなことがあったんだ。痛々しいなその傷。」 カカシは傷を優しく撫でた。 引っかかれた跡のように今でもしっかりと残っている。 「多分、一生消えないわね。この傷」 傷を見ると昔の事を思い出す。 「どうしたの?」 「昔の事思い出してたの。今思えばこれだけが最初で最後の姉らしい行為だったなあって・・・」 「そっか。」 「サツキはたった5歳で自分の人生を自分で終わらせたの。私何も出来なかった。 この傷見てたら思い出しちゃった。」 サクラは腕の袖をめくり上げた。 「それは?」 「サツキが自殺する前に私につけた傷。」 「どうして?」 「だぶん・・・自分を加害者にしたかったんだと思うわ。私に容疑がかからないように・・・ 実際、この傷のおかげで私は被害者になった。」 カカシは黙ってサクラの話を聞いていた。 「私・・・何も出来なかった。妹を死へ追いやった。生きるべきなのはサツキのほうかもしれなかったのに」 ガタン!! カカシが隣にいたサクラを座りながら倒した。 「カカシ・・・?」 「そんなこといわないでよ?俺はサクラにあえてよかったと思ってるのに・・・」 「カカシ・・・」 カカシははっきりと断言した。 続けて言葉を述べた。 「はっきり言ってあのままサクラに会わなかったら俺はとっくに死んでいた。」 その瞳は真剣だった。 カカシの言う事は曇りは無いサクラはそんなカカシの言葉に少し嬉しくなった。 「ねえ・・・」 「何?」 「カカシって今までどんな生活してたの?聞きたいな」 カカシはサクラの頭を撫でた。 「俺はサクラとは違って普通に生活をしていたから、聞いてもつまんないよ。」 「それでも聞きたい。」 「わかった」 「ねたままでいい?」 よく見るとサクラはソファにねっころがっていた。 カカシも浅く腰掛けて直して寄りかかっていた。 「そうだね。どこから話そうかな・・・?」 -----もう、物心がついたときには絵を描いていた。 ロシア人だった父親に絵を教えてもらった。楽しくてさ・・・毎日描いてた。 もともと、お絵かきとが好きなガキだったからさ・・初めて油絵をしたときなんかは感動したよ。 技法なんかも早いうちに教えてもらってさ・・ コンクールなんかでよく賞なんかとってた。 どちらかといえば芸術全般ではなくて俺は絵画専門なんだね。 父親からも“画家にむいてる”言われたからね。 「カカシ・・・お前は将来画家になったほうがいいかもな」 「がか?」 「絵を描くのを仕事とする人の事だよ。」 「じゃあ、僕画家になる!!」 「ああ、そうだな楽しみにしているよ。」 「うん!!」 その頃かな・・画家になるのを目指すようになった。 中学に入ってからは本格的に技術も学んだ。 描くのが楽しかったんだ。寝る時間が惜しいほどに・・ レベルの高い展覧会にも入選して周りからもチヤホヤされていたよ。 「すごいね・」 「さっすが!!才能あるう!」 高校の進路でも高校から美術科はあったが普通科進んだ。 美大目指していたけどね。 学年は忘れたけど名誉のあるコンクールで入賞してさ・・推薦で入れたんだ美大・・ 周りもそう思っていたし当然俺自身もそうなる予定だったからどうって事無かった。 ふつうにそれから入学して卒業した。 画家になったんだ。結構有名だったんだよ? “はたけカカシ”って 画家として軌道に乗ってきたけどね全然かけなくなちゃったんだ。 何度何度描いても決まらない 納得のいく作品が出来なくなった。 絵がなきゃ駄目なのに 俺の全てなのに 描けなきゃ意味が無い 気づいたら断崖の絶壁にいた。 迷わず飛び込んだよ。 ただ・・悩むことなく楽になりたかった。------ 「ソコでであったのがサクラ・・・君だよ。」 「ふーん」 「なんだよ?受け流しちゃってせっかく話したのに」 「苦労してたんだね。今は平気なの?」 「平気さ・・・今はサクラが俺の生きる活力なんだから・・」 「カカシ・・」 カカシが軽くサクラにキスをした。 二人を身を寄せ合う。 「どうしたの?カカシ?」 なんだかいつものカカシじゃないみたいだった。 「嬉しいんだ。」 「嬉しい?」 「なんか、相手を知る事って知ってもらう事って嬉しいって・・」 「私もよ」 「なんか、なんかお互いが理解しあえた感じがする。今なんか幸せなんだ。」 サクラは寝始めているカカシの上にまたがった。 「私も同じ気持ちだよ。カカシのこと知りたかった。」 「へえ・・」 「ねっ。もう寝ようよ。」 カカシはサクラをどかして起き上がった。 「じゃあ、部屋に行くか・・」 「まって!!」 「?」 「一緒に寝ようよ。」 「いつも一緒に寝てるでしょ?」 カカシはサクラの言う意味がわからない。 「ソファーで寝よ?」 「ソファー?」 「たまにはいいでしょ?」 「まっ、いいか」 でも、さすがに二人でソファーに二人で寝るのはきつかった。 二人で横になる事も出来ず、二人で外側を向いて寝ている。 サクラが寝静まった跡、カカシは戸締りをして電気を消した。 格好が決まらず暫くうとうとしていたが、暫くして睡魔に負けて夢の世界へとおちた。 次の日、二人とも起きたら体が痛く体が思うように動かなかった。 しかし、二人は嬉しかった。 |
第二部 完 -----サクラはずっと悔やんでいたね 妹を殺してしまったかのように・・・ 一生消えない脚の傷 君はそれを後悔の証にしていたね でも、俺は嬉しかった。 初めてお互いの素性を明かせたのだから・・・ 俺も明かしてよかった。 俺はサクラに俺を知ってもらいたかった。 程よい素性を・・・知り過ぎない領域の中で 俺はサクラをサクラは俺を知った気がする 彼女は今、後悔と、哀しみの中で生きている 後悔を罪として生まれてきた事を憎んでる 俺は君の事を見ているから 生きている証になるから 生まれてこなければよかったなんて思わないで・・・・------ |
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