贖罪〜贖いの翼〜   11


8月はのんびりすごしていた。
1日家にいたり、夜にひっそりと買い物をするぐらいで終わっていった。
宿題も終わってしまったので暇だった。


とりあえず図書館でありったけの本を読むことにした。
知識を蓄えるのは嫌いじゃない。
カカシは勉強は嫌いといっていたが・・・

本を読むことはサクラの小さいころからの日課みたいで、本が友達だった。

外からは蝉の声と車の音や、人々の楽しそうな声が聞こえる。


「はじめは、ずっと一緒だからいいなと思っていたけど、暇だま・・。」
実際、相変わらずベタベタするのは夜だった。

生活費は、あの男が全額払いだし困っていない
カカシだってバイトもしていない。
するつもりもないと思うけど・・・



なんかつまらなかった。



「そういえば、去年の夏ってどうしてたっけ?」

思い出してみてもいいものではなかった。
一人でやっぱりいろんな図書館にこもってた気がする。




「カカシって去年の夏は何していたの?」

「エーべつに普通に絵を描いていたけど?」
「それだけ?」
「はじけたことはしてないよ?俺大人だしね・・・」
サクラは子ども扱いされたのが悔しくてそっぽ向いた。


「ねえ、サクラ?」
カカシがサクラのほうをむいた。
サクラはまた違うほうを向く。
「ほら、すねないの。」
「何よ?」





「いきなりで悪いんだけど、明日出かけない?」
「?」
「ちょっと行きたい場所があるんだよ。」
「・・・・・・・・・・」





翌日、二人は始発の電車に乗った。




サクラはついて行くだけで一体どこに行こうとしているのかはわからない。
何回か乗換えをしてさすがに疲れてきた。

「サクラ・・・顔色悪いぞ?」
「大丈夫」
「そうか・・。」


「ねえ、一体どこに行こうとしているの?」
「行けば教えてあげる。」
カカシは最後まで教えてくれなかった。
「・・・・・」
「まだ時間かかるから。寝てていいよ起こしてあげるから。」
「うん。」


サクラは言葉に甘えてカカシの肩をかりてすぐに眠りについた。
いつも、眠りが浅いが疲れていたからすぐ寝付いて深かった。


カカシはボーっと窓から見える景色を眺めていた。
頬杖をついて目的地への駅に着くのを待っていた。




目的地への駅は終点で1時間かかった。





そこは見たこともない町だった。
サクラは遠出をしたことがなくあまり出かけないので新鮮に見えた。
近くに海がある。
港町みたいだった。

「カカシ、ここどこなの?」
「べつに、ちょっとね・・・」

カカシは潮の香りを味わいながらゆっくり浜辺を歩く。
今日のカカシは何かおかしい。

かれこれ30分は歩いている。
さっきから人通りの少ないところをばっかり・・・
カカシはそわそわしていて様子がおかしかった。

「ねえ、」
「?」
「人通りの多いところ行かないの?きたかった場所なんでしょ?」
「・・・・見ておきたかったんだ。」
「え?」
「場所変えよう・・」


日が暮れようとしている。
二人は海にいた。
子供たちが帰り・サーファーも身支度を整えている。

「サクラ、もうちょっとこっち」
「ここなら誰もいないかな・・」


サクラはカカシが考えていることがますますわからなくなった。
近くに数人の人が通りかかった。
「!」
カカシは慌てて後ろを向いた。
「なに?どうしたの?」

「知り合いなんだよ・・・」

「え?」

カカシが髪の毛をかきあげた笑った。

「ここね、俺が生まれて育ったところ。」
「・・・・」
あいた口がふさがらなかった。

「なんで、いまさらここにきたの?」
「一度、見ておきたかったんだ。」
「?」

「もう・・27か・・」

「話をそらさないでよ!!」

「きたくなったって言ったでしょ?」
「言ったけど・・」
「大丈夫。帰るわけじゃないよ。ここにはもう来ることはないから一度見納めに来たんだよ。
「そうだったの。」
「それに、サクラに見せたかったんだ。俺が育ったところをね。懐かしいな・・」
「カカシ・・・」


ずっと後ろを向いていてしゃべっっていかカカシが振り返ってサクラを抱きしめた。
「心配しなくても俺はどこにも行かないから。」
「うん。」
サクラの手がカカシの腕へと回った。
「俺がここへ来たのにはもう1つ理由がある。」
「え?」
「過去と決別するためだよ。」
「・・・・・・」
「今までずっと油絵を描いてて未練たらたらだったから。」
「カカシ・・・」
「だから、過去と決別するために。サクラ。」
「うん。」

「これから君と生きていくために。ごめんな。今までずっと過去にしがみついていたよ。」
「ううん?私もそう妹に・・父に母に・あの男だって・・」
「だから・・・捨ててしまおう?二人で。僕たちだけの・・」
「うん!!」

サクラの瞳から涙が出た。
日はどっぷり暮れている。
二人しかないこの場所でカカシとサクラは決意をあらわにした。


夜は遅く二人は終電に乗って帰っていった。
二人の遠出の出かけは終わった。
サクラはカカシの肩を借りて寝ていた。
そして、カカシは名残惜しそうに電車の窓から外の景色を見ていた。




そして、新たな決意をする。



そして今日のことはきっと忘れない。






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