Angelica 1 木の葉の毎日は、任務に明け暮れる日々だった。 里に住む者はみな忍を目指す。 そんな世界には似合わぬ人影があった。 桜の象徴と見れるような風貌だった。 腰まである長い髪、それをリボンで横に止めている。 背中には真っ白な穢れを知らぬ羽がついている。 天使だ。 桜の木にその天使はいた。 「さてと・・これからどうしようか・・?」 天使は少しこの世界の様子を見ようと、羽根をおおきく羽ばたかせた。 それほど文明は進んでいない印象を受けたが、ところどころ近代化の香りを感じる。 これから発展していくような感じである。 天使が立っているところは、壮大な自然の森。 木の一つ一つが大きく、葉の色もみんな濃い。 木陰に入ると、真っ暗だ。 少し怖いと思った。 「天界の森とは少し違うな・・・。魔の森みたいで暗い。」 森を彷徨っていると、ふと人の気配を感じる。 下界へ降りて初めての人間への興味に胸を躍らせたが、一瞬で姿を隠した。 天使に向けられているのは、まぎれもない殺気だったからだ。 よそ者だと警戒されているのだろう。 しかし、人間でここまで力の印象を受けるのは初めてだ。 聖なる力を見せたら、すこしは崇めてくれるだろうか? 天使は姿を見せようとした矢先、何かが飛んできた。 「!!!」 飛び道具だろうか? 右の太ももにあたり、ざっくり切り裂かれた。 「いた!!」 あまりの痛みで羽根はしぼみ、まっさかさまに落ちた。 遠い意識の中、声が聞こえる。 どうやら天使を攻撃した者の声だろう。 ”探せ”や”見つけたか?”など天使を探していた。 しかし、運がよかったのか天使は見つかることなく難を逃れた。 「おい!ナルトそっちはどうだ?」 「全然見つからないってばよ〜!!サスケは〜?」 ちっとサスケと呼ばれた少年は、闇雲に森を彷徨っていた。 いつもの容易な任務だ。 マダムのネコ探し。 いい加減にペットに嫌われていることに気づけと、悪態をつきながらネコ探す。 「あのネコ・・・。隠れるのうまくなったな。」 余計な真似しやがってと言いたげな態度で、草を掻き分ける。 ふと、探している猫の声が聞こえた。 やっと終われると声に呼ばれるように、その場所にむかう。 そこには、猫のほかにもいた。 「え・・・おんな・・・?」 里では見た事も無い女の子だ。 サスケと同じくらいの。 里の人間で自分と同じぐらいなら、サスケは知っているはずだ。 この年の子供は、アカデミーにいるか、サスケのように卒業して忍びになっている。 記憶にない・・・ 「よそ者か?だから暗部にでもやられたか?」 「おー!サスケ!!」 丁度ナルトも、サスケの姿を見つけて来てくれた。 「なんだってばよ!女の子?」 「な・・・こいつ見た事あるか?」 「ない・・・俺がこんな可愛い子忘れる訳ないってば。」 「あのな・・。」 サスケはその天使を抱き上げた。 「あ!」 「お前は猫を頼むぞ。」 「ずりぃぞ!」 「先に見つけたのは俺だ。ウスラトンカチ。」 「サスケ!!」 ナルトの声が森中に響いたのは言うまでも無い。 とりあえず二人は、上司のカカシにこの天使のことをどうすればいいか聞いた。 怪我をしているなら、一度病院に見せたほうがイイ。 事情を聞くのはソレからだと、カカシはとりあえず里外の人間がいるのを火影に言ってくると消えた。 「う・・・ん・・。」 天使は目が覚めた。 ベッドにいるという事がわかる。 「あ、目覚めたってばよ。」 「え?」 天使を興味津々に金髪の男の子が顔をのぞかせた。 「あ・・・」 「お前・・・何者だ?」 黒髪の少年は、天使にあからさまに敵意を向け居ている。 「私の名前は・・・サクラ。」 天使、もといサクラは笑顔で自己紹介をした。 「怪我の手当てしてくれて、ありがとう。私は、サクラ・ハルノ。ガブリエル隊の力天使(ヴァーチェズ)階級はナンバー5よ。」 「「?」」 サスケとナルトはサクラが何を言っているのか分からなかった。 これは他の里の隠語なのか?それにしては不可思議なことがある。 敵意も殺意も感じない。 相手が忍びなら、表面は笑顔で隠せても、本来の拒絶の色は見えてたりする。 サクラには全く感じられない。 「どうしたの?二人とも?」 「サスケ〜ナルト〜いる〜?」 ドアをノックしたかと思えば、一人の大人が入っていた。 「カカシ。」 「カカシ先生!」 「へ〜。すごいね、その羽。ひょっとして天使?」 「はい。」 なんだちゃんと天使の存在を知っている人もいるのかとサクラは安堵した。 ここの世界の人間は、まず人を疑ってかかるようみたいだ。 それは今目の前にいる3人を見て、分かった事だった。 「火影様がね・・あ、火影はここで一番偉い人。」 「はぁ・・。」 「君の事は暫く保留。天使様だもんね。その羽みて思ったけど・・・君は・・・これからどうしようか?」 「それを決める為に、火影様に連絡したんじゃないのか?」 サスケは呆れたように、突っ込みをいれた。 ナルトは自分の家に来て欲しいと駄々をこね始める。 サクラはこうの状況をどうしたものかと思う。 どうやら一度心を開くと、甘くなるらしい。 この世界は結構先入観が多いなと思っていたことはある。 いきなり攻撃されたのだから。 でも良く見ると、三人が三人暖かい色を感じると、サクラは思う。 この二人の上司は、カカシといったか、人を沢山殺してる。 それでもこの人は命の重みを分かっている。 仕事以外の無駄な殺生は、しないだろう。 ここの世界は、人が人を殺して、コレが仕事なのだと、サクラはすぐに理解した。 メタトロンは一体、なぜここの世界を選んだのか分からない。 データを取るため?それ以外にも意図を感じた。 それに金髪の男の子はナルトといったか、とても綺麗だ。 心が真っ直ぐに育って、澄んだ瞳をしている。 あぁこの二人は大丈夫だ。 私が居なくても大丈夫。 素直にサクラはそう思えた。 そして問題は・・・・ 「何だ?俺の顔になにかついているのか?」 サスケという少年。 この男の子からは悲鳴が聞こえるのを感じた。 何故だか良く分からないけれど、この人を一人にしてはいけない気がする。 だって心が・・・綺麗な心が今にも真っ黒いものに押しつぶされて、苦しそう・・。 「あの・・・・」 喧嘩をしているカカシとナルトにサクラは声をかけた。 「何?サクラちゃん?」 「私・・・この人の家に住みたい。」 サクラが指を差したのはサスケだった。 |
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