切なさの行方2〜風の通り道〜 1 春野サクラが木の葉隠れの里から居なくなったのをハッキリと認識したのは、サクラが出て行った夜の翌々日だった。 サクラの両親もただ始めは朝散歩などと出かけているだけだと思っていたのだ。 しかし、その日サクラは帰ってこなかった。 おかしいと思った両親は、サクラの部屋に入り心当たりを探した。 サクラの部屋には額あてが置いてあった。 もしかしたら、つけないで出かけたかもしれない・・・ また、抜け忍にさらわれたのかもしれない・・・ サクラの両親は急いで火影のところへサクラがまた居なくなったと連絡を告げた。 「サスケ・ナルト・・・また・・・サクラがいなくなったそうだ。」 「「!!」」 次の日は任務だった。 昨日サクラは風邪で休みだと聞いていたが違ったらしい。 「・・・イタチか・・・・またはサクラが自分から抜けた。二つの路線で捜索している。」 「どうしてだってばよ!!?」 「サクラの部屋から額あてがあった。”捨てた”とも取れる。」 「・・・・」 サスケとナルトはただ現実に呆然と立ち尽くすだけだった。 「まあ、きっとサクラはイタチにそそのかされたというほうが可能性は高い3つかな?」 サスケは何も言うことなく下を向いて話を聞いていた。 「サスケ・・・聞いてるのか?」 らしくないサスケにカカシは声をかけた。 無理もない、一番ショックを受けているのは間違いなくサスケであるのだから・・・。 「つらいのはわかるけど、ちゃんと話聞いてた?」 「わりい・・・」 「じゃあ、もう一度言うけど、今日から俺達もサクラの捜索隊の一員に入ってるんだからね。」 「!」 サスケはがバット顔を上げる。 「はいはい、質問!!」 「はい、ナルト」 「じゃあさ、じゃあさ、3人で旅して探すの?」 「いや、ちょっと違う。」 「相手が相手なだけにうかつに動けない。基本は暗部が動く、緊急の場合のみ俺達も動く。」 「な〜んだ。」 ナルトはがっかりした。 無論サスケも・・・ 「ま、普段はいつもどおり任務だよ。それに相手は暁ハッキリ言えばSランク任務だ。そう簡単に指令は来ない。」 「「・・・・・」」 「じゃ、今日は任務ないから解散。お前ら無理だと思うけどあんまり気を落とさないでくれ。」 信じられなかった。 いや、予感めいたものはしていた。 サスケは一人で歩いていた。 いつもなら修行をしていくのに、今やそんな気にはなれなかった。 一人空を見上げながら物思いにふけって・・・柄でもないことをしていた。 信じられなかった。 でも、サクラが木の葉に戻ってきた時の態度は明らかに違っていた。 初めはきっとつらい思いをして、精神的に不安定なんだと思っていた。 事実、初めはそうだったし・・・・ 一番は退院してからだ。 いつも悲しそうな目でこっちを見ていた。 消えそうな笑顔をしていた。 「サクラ・・・・・・」 返事はない 「サクラァ・・・」 返って来るはずがない 「お前・・・どこに行っちまったんだよ・・・。」 涙が出てきた。 あれ以来 全てを失った日から、流した事はなかった。 「何でなんだよ・・・畜生・・・」 大切なものは失った時にやっと気づくもの 誰かが言っていた言葉だった。 まさに今のサスケには痛恨の言葉とも言えるだろう。 今まで毛嫌いしていて、居なくなったとたん手のひら返したような気持ちになるなんて虫が良すぎる。 なんて愚かなんだろう。 自分がこんなにも醜い人間だったなんて・・・ 無視をしても、嫌ってもめげすに自分についてきたサクラに十分すぎるほど甘えていた。 今までのつけが帰って気のかもしれない でも、これはあまりにも・・・・・・ 自分には酷な罰だ。 サクラは一体何を考えているのだろう サスケにはサクラの気持ちを全然理解していなかった。 自惚れて見えていなかった。 だから気づかなかったのだ。 さらわれたのか? 自分から抜けたのか? できれば前者であることを祈りたい。 サクラの状態を見れば後者とも受け取れるが、サクラは・・・・・? それと同時にイタチへの憎ししみが倍になって体に浸透していく。 「イタチ・・・お前は・・・俺の大事なものいくつ奪えば気が済むんだよ・・・。」 一人虚しく少年の言葉だけが夕焼けへと木霊する。 もっと優しくしてあげればよかった もっと気を使ってあげればよかった もっと話してあげればよかった もっと誘いにのればよかった 考え出したらきりがない。 その日一日、サスケの涙が止まることはなかった。 サクラへの思い イタチへの憎しみ 想いが交差して混乱し、頭の整理は暫くつきそうもなかった。 今更、後悔なんて遅いのに・・・・・・ |
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