切なさの行方2〜風の通り道〜   2




サクラがイタチの手を取った日から少し過ぎた。



あの後、二人は鬼鮫と合流して三人で行動している。



国境を越えるまでは駆け足で向かったが、国境を過ぎてからはサクラの体力を考えて歩くことにした。

もう何時間も歩き続けている。
「サクラ、大丈夫か?」
「え・・・ん・・」
サクラはだいぶ疲れているようだった。
「少し休もう・・。」
「そうですね・」
「あそこの木陰にしよう。」


サクラは気の木陰のところに座って幹に寄りかかった。
「15分くらい休もう。」









本当に抜けてしまった。
今更ながら、自分でも本当に凄いことをしてしまった。
サクラは自分を笑った。
でも、今更戻れない。
サクラはイタチを好きになってしまった。
それは、紛れもない事実なのだから・・・・・



「向こうに川があるから水を汲んでくる。」
イタチは川のほうへ移動した。
今ここにいるのは鬼鮫とサクラだ。



「・・・しかし、サクラさん本当についてきてしまったんですね。」
「え?」
サクラと鬼鮫は顔をあわせる。
「イタチさんきっと嬉しいと思ってますよ。」
「そうかな・・・私勢い余って付いてきちゃったけど・・」
サクラは下を向いた。
そんなサクラを鬼鮫は頭をなでてあげた。

「大丈夫ですから、自信を持ってください。」
「ありがとう鬼鮫さん。」





「サクラ、鬼鮫、水汲んできたぞ。」
「ああ、すみませんイタチさん。私の分まで・・」
「ああ、ついでに・・」





暫く沈黙が続いた。
たったの15分がとても長く感じられた。















それから暫くして、また足を動かす。



サクラは少し不安に陥っていた。
今はそんな状況じゃない、追っ手が来るかもしれないのに・・・・
会話がない
普段のイタチと鬼鮫は移動中はこんなものなのかもしれないと思い聞かせていた。


ふと、イタチが止まった。
「サクラだいぶ疲れてるな・・。」
「え?」
イタチは自分の横にサクラを連れてきて、手を握ってくれた。
「俺が引っ張るから、今日はもう少し我慢しろ。」
「はい・・・・。」
ちらっとサクラは鬼鮫を見ると、鬼鮫はサクラに向かってウインクをしていた。
「!」

鬼鮫の行為にサクラはなんだか嬉しくなった。


イタチの手は暖かくて、ぐんぐん引っ張られる感じがする。
安心感に満ちていた。
言葉はないけど、行動で示してくれるイタチに少し悪気を感じた。



”こういうところは、兄弟似てるんだなあ”



不謹慎ながらもサクラは嬉しくなった。
サクラはゆっくりイタチの手を握りなおした。
























どのくらい歩いたのか?
夕刻になり、外灯も建物もない森ではすぐに暗くなる。
イタチと鬼鮫は一晩ここで野宿することにした。


周りに結界を張り、人、猛獣を遠ざける。
念のため、イタチと鬼鮫で変わり番で見張りを置くことにした。
サクラは、なれない環境で疲れてゆっくり寝ている。




イタチと鬼鮫はまだ二人でおきていた。


鬼鮫は焚き火の炎を絶やさぬように、イタチはただ座ってボーっとしていた。
「・・・・・・」
イタチはすやすやと眠るサクラを見続けていた。




「なあ、鬼鮫・・・。」
「何ですか?イタチさん。」


「俺は・・・サクラをこのような目にあわせてよかったのだろうか?」
「どういうことですか?」
「サクラのことは・・・正直言って好きなんだ。」
「わかってますよ。」
「だから・・・自分でやっておいて不安になるんだ。」
「どういうことですか?」
「仮に、サクラが木の葉に戻るような事態が起きた時サクラの扱いは・・・・」

「そんな事考えないでください!」


突然鬼鮫は大声を上げた。
サクラが今にも起きそうな声だった。



「・・・・・・・・」

「イタチさんはサクラさんが好き。サクラさんもイタチさんが好き。それでいいのです。」
「・・・・・」
「サクラさんはイタチさんと一緒に居たくて、意を決してここへきたのです。」
「そうだったな・・・・。サクラには悪いことをした。」



イタチはサクラの頭をなでた。
サクラは少し寝返りを打つ。


「鬼鮫・・すまなかったな。誤解はしないで欲しい・・・俺はサクラの事は好きで一緒にいたいと思っている。」
「・・・・・・」
「だた・・・」
「ただ・・?」
「大切でどう接したらいいかわからない。」

鬼鮫は少し笑った。
なんともイタチらしい台詞だろうか・・・・


「イタチさん疲れてますよ。そんなに神経すり減らして今日は私が見張りをやりますから寝てください。」
「ああ・・・すまない。」
「そんなに、心配しなくてサクラさんは強いですよ。焦らないでください。」
「ありがとう・・」


イタチはすぐ寝てしまった。
気疲れだろうか?






「全く・・・今の言葉、サクラさんに聞かせてやりたいですね。」



鬼鮫は薪を炎の中へ入れた。












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