切なさの行方2 〜風の通り道〜     3



幾日か過ぎたところだった。
イタチ・鬼鮫・サクラは”暁”の本拠地へ着いた。


中へ入ると洞窟みたいなところだった。
途中サクラは、正式な暁のメンバーではないので目隠しをして本拠地へ行ったのである。



「お〜イタチに鬼鮫・・・女の子を連れてお帰りですよ〜。」


イタチと鬼鮫は冷やかしに臆することなく平然と奥まで突き進む。
サクラは怖いのかイタチにぴたりとくっついて歩く。




奥まで進むと数人のメンバーが居た。
「イタチ・・」
「今帰った。」

「イタチ・・・お前の隣に居る娘はなんだ?」

「木の葉からつれてきました。」
「・・・ほう、珍しい娘だな・・・おい娘名はなんと言うのだ?」

「・・・春野・・・サクラです。」



サクラはじろじろ見られているのがいやなのか、イタチの服をぎゅっと掴みあまり目を合わせないようにしている。


「まあ、いい。これで全員そろったな。暫くは自由だ。好きにしろ。」
「「はい」」
イタチと鬼鮫はその場を立ち去り、自分達の部屋へ戻っていった。
無論サクラはイタチと同じ部屋になる。

「サクラ、疲れたろ?ゆっくりしていろ。」
「・・ありがとう。・・」


サクラはベッドの上で横になった。
大分疲れていたのかすぐ寝てしまった。

「イタチさん、入ってもいいですか?」
「鬼鮫か・・いいぞ。」


「おや、おや、寝てしまわれたんですね・・」
「・・・・」
「どうしたんですか?イタチさん?」



「下手な演技はやめろ・・」




「・・ふうん・・」


鬼鮫の声から高い女の声が発せられた。
見る見るうちに鬼鮫の姿から、黒髪の女の姿へとかわっていった。


「久しぶりね。本当に女の子連れてきたんだ〜。どういう風の吹き回しよ?」
「お前には関係ない。」

女は同じ暁のメンバーだ。
容姿はイタチと同じ黒髪に紅の瞳をしている。
年はあまり、イタチと変わらぬぐらいだろう。
イタチはこの女はあまり好きではなかった。

いや、むしろ煙たい存在であったかも知れない。
男に媚びるような声、態度・・・くノ一ならそんな技術も必要な時があるがいつもではイヤになる。



いつも何かと自分に纏わり付くこの女、名前は確か・・無花果といったか・・
イタチには嫌な存在であった。




「可愛い子ね。綺麗な桜色の髪の毛。血もきっと赤いサラサラ血液でおいしいんだろうな〜。」
「手を出した殺すぞ。」
イタチは低く無花果に忠告をした。

「何よ冗談だって!?」
無花果は手をイタチの頬に向けた。
「余計な態度をとるな。手をどかせ。」
「じゃあ、振りほどけばいいじゃない・・」

イタチは素早く手を退けた。


「言っておくがその子には指一本触れるんじゃない・・・」

「いいわよ。可愛い人質だもんね。」

「?!」




「イタチもいい作戦を取ったわけだ。ボスもほめてたわよ。”獲物をとるにはまず囮”ってね。」




「あら、春野サクラなんでしょ?うずまきナルトの想い人いい作戦じゃない。」
「!!!」
「でも、わざわざここにつれてくる必要ないんじゃな・・・・」
「!?!!!!」


「うるさい」


イタチはどすの効いた声で無花果がしゃべるのをやめさせた。

「・・・なによ・・」



「この子をどうしようとお前には関係ない!」
「関係あるわよ!!」


売り言葉に買い言葉つい反論してしまった。



「なんだ?」
「ここには男しかいないわよ。その辺女だからね私は・・・女にしかいえないようなことだってあるわ。
 身の回りはイタチになると思うけど、少し私にも協力の命令が来るはずよ。」
「断る。」
「な・・・」

イタチは即答だった。
無花果も言い訳がましかったのはしょうがないがここまでは言われたくない。



「とにかくだ!お前なんかにサクラの周りをうろちょろされるのはゴメンだ。」
「なによそれ!!」
「大体お前には関係ない!従来どおり俺と鬼鮫でやってこれたことだ。いちいち口出しするな!」


「・・・」



無花果は暫く不満そうな顔をしていたが、あきらめたようだ。







「・・・・別に・・・ふん・・」





無花果は機嫌を損ねて部屋を去った。


いつもいつも、あの女と会話することは疲れる。
イタチは心底思った。

だから、本当はここには帰りたくなった。
しかし、状況が状況だけにここへ帰らざるを得ない。



暫く、あわただしい生活になりそうだ・・・・



きっと、無花果を初め他のメンバー全員がサクラのことを”人質”としてみるだろう。
そうすれば・・・・・
そんなことがサクラの耳に入ったら・・・・・



「初めに、ちゃんと言っておくべきだったな。」



ベッドに腰をかけてサクラの頭を撫でる。
暫くは騒動が多そうだ。




「イタチさん入りますよ。」
「ああ。」


入ってきたのは今度こそ本物の鬼鮫だった。



「私の部屋隣でしたから、聞こえましたよ。」
「ああ・・」


頭が痛い。
どうもあの女は疫病神だ・・・心底どうにかして欲しかった。

「無花果さんここに来たんですね。」
「そうだ・・全くあいつはなぜいつもああなんだ・・・・・?」
「・・・・・・・・」




(サクラさんをここへ連れて行くのは多少不安がありましたが、初日からでしたか・・)


鬼鮫は事の広がりを予感していたようだ。


(それに・・・)


「なんだ?鬼鮫?」
「いいえ・・・サクラさんのためにも・・・私達がしっかりしなければいけないですね。」
「そうだな・・・・」


鬼鮫にもサクラには愛着があった。
サクラは二人にとっては大切な存在だ。
周りのメンバーには警戒しておかなければいけない。



「無花果さんが一番の鬼門ですね。」
「ああ、全くだ。」



(それにしても・・大丈夫でしょうか?イタチさん私は不安です。)



サクラの無邪気な寝顔を二人は見つめここそれぞれの思いが混じる・・・









サクラは指一本触れさせない・・・・・



サクラさんが原因で暁全体での騒動がありませんように・・・・・・・








何も知らない桜の姫は疲れ果てて眠っていた。










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