切なさの行方2〜風の通り道〜   5





「サクラ・・・暫く此処を空けるとこになった。」
「え・・?」


それは突然の任務だった。
暫くは暁も不穏な行動には出ないが、情勢を把握しておく必要がある。

イタチと鬼鮫だけではなく、交代制で行くようにとのことだった。
その一巡目が回ってきたのだ。

「どのくらい・・?」
「一ヶ月だ。」

「そんな・・。」



サクラの顔は不安色に一気に染まっていった。

イタチ・鬼鮫も長い間の留守は不安だった。
人質的な扱いではない、むしろメンバーと溶け込んでいる。
不当な扱いを受ける心配はない。


問題は他にある。


無花果と紫苑の存在


無花果はまだいいかもしれない
一番の厄介なのは紫苑の存在
最近なにかとちょっかいを出すこの男は、目が本気である。
イタチもサクラは何かと人を惹きつける魅力を持っているのを知っていた。

弟に然り、ナルトに然り・・。


「私はついていけないの?」

サクラはすがるようにイタチの服のすそを引っ張った。
「危険な任務だ。そんな危険なところには連れて行けない。」
イタチは名残惜しそうに言った。


「イタチさん。私は先に行ってますね。」

鬼鮫は自分は邪魔だと思ったのか、先に行ってしまった。
いたちから見れば少しフォローを入れてくれるようにまだいて欲しかった。

気を使ってくれるのはわかるが、言葉少ない自分には少々難関だ。

「・・・・」

「わかってくれサクラ・・危険な任務だ。巻き添えにさせたくない。」
「わかってる。」

「サクラ・・」
サクラの瞳は少し潤んでいた。
「わかってるの。足手まといになるくらい。迷惑かけたくない。」
「俺は・・」

「いいの。だって危険な任務ぐらいわかってるから・。」
「・・・」

「私、ちゃんと待ってるから。」

サクラはイタチを心配させないように、笑って見せた。
その笑顔がイタチは痛かった。



ここへつれてきたのはいけなかったのかもしれない。


サクラ一人でも心配だが、他の人間がいるのも不安だ。



「イタチさん。出発はいつなの?」
「5日後だ・・。」
「そっか・・」

急な話だったが、すぐにいなくなるわけではなさそうだ。
サクラは少しほっとした。


「サクラ、一つだけ頼みがあるんだが・・・・」
「何ですか?」
「俺と鬼鮫の留守中の間は、あの二人には自分からは近づくな・・。」

最近仲良くなったのか、サクラのほうから二人の部屋に行くことが多くなった。


「わかった。」

サクラも素直に返事をした。





























その日の深夜すぎ
イタチはなんとなく目が覚めた。

横にはサクラが規則正しい寝息をたてている。
あどけない寝顔・・
指先をそっと頬に触れる。


「ん〜・・っ・・」


反応して寝返りをうつ。


暫くサクラを見つめ、その後部屋を出て行った。
すっかり目の覚めてしまったイタチは外へ出た。


さっきのサクラの寝顔を思い出しては振り払うようにして顔を振る。




「イタチさん・・こんなところで何をやってるんですか?」
「鬼鮫?!」

振り返ったその先には鬼鮫がいた。

「そうか、今日の見張り当番はお前か・・」

「顔色があまりよくないようですけど・・」
「・・」

「サクラさんですか?」
「・・・・・・」

「イタチさんはサクラさんの事となるとすぐわかります。」
イタチはわざと鬼鮫の顔をあわせようとはしなかった。

「・・・・・このまま何も言わないで行ってしまうんですか?」
鬼鮫は二人のことを心配していた。
無花果と紫苑のことがあってからは、二人からのガードもしていたことを鬼鮫は知っている。
これほど思っているのに、イタチはまだ肝心なことを言っていない。


「・・・・怖い・・」
「何がですか?」
「自分が怖い。」

「一体なにが・・?」


「その・・サクラに本当に気持ちを伝えた後、どうすればいいのか・・」
「・・ぷ・・」
「鬼鮫・・・・!」

イタチの可愛い一言につい鬼鮫は噴出した。
そこら辺あたりはまだ、少年らしい面影があった。


はっきり言って、イタチは鬼鮫より強い。
大人びた顔立ちで落ちつきがある。
油断も隙も見せないイタチだったから、まさかこんな言葉が来るとは思っても見なかった。

サクラとあってからのイタチは内面的に少し変化が現れたのかもしれない。



「いつもどおりでいいんですよ。」



「鬼鮫・・・ちょっとついて来い。」
「はい」




イタチは鬼鮫をつれて中へ入る。
一体ドコへ連れて行くというのか?


どんどん奥へ進んでいった。
「イタチさん・・ここボスの部屋ですよ。」

「いいのだ、此処へ来るつもりなのだから。」
「??」






ノックをすると、声が聞こえた
どうやら起きているらしい。

「なんだ?入れ・・・」


「失礼します。」
ドアを開けてイタチに続いて鬼鮫もはいる。


「用向きはなんだ?」

「・・偵察の話しですが・・」
「それがどうかしたのか?」

「今出発してもよろしいでしょうか?」
「イタチさん!!」

何も聞いていない鬼鮫はわけがわからない。

「別にいい・・」
ボスはあっけらかんと言葉を返した。

そのままイタチは出て行った。
鬼鮫も慌てて後を追う。

「どういうつもりなんですか?」
「・・」
「黙ってないで答えてください!!」
「鬼鮫・・・」
「・・・・」


「任務が終わったら話したいことがあるんだ。」
「それは私ではなく、サクさんに言ってください。」
「サクラにもいう・・・お前にも言わなければならないことがあるんだ。」
「はぁ・・」

イタチの不穏な行動に鬼鮫は驚きの連続だ。






部屋へ戻ると、イタチは準備を始める。
サクラを起こさないように慎重に・・・・







「ゴメンな・・・サクラ・・」



イタチはそう言い残して部屋を出た。





「行くぞ鬼鮫・・・。」


「ハイ。」


















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