切なさの行方2〜風の通り道〜   6






夜が明けてサクラが目を覚ました。


何か喪失感を覚えた。
なにかがなくなったというような感覚だった。

サクラは身なりを整えて、イタチの部屋に入った。


「あれ・・・イタチさん・・・?」


部屋はがらんとしていて、人のいる気配がなかった。
どこかにいるのだろうか?
サクラはイタチの部屋を出て、周りを見回したがイタチを見つけることが出来なかった。


「あら?おはよう。サクラちゃん。」
「あ、無花果さんおはようございます。」

「イタチを探してるの?」

サクラはこくんと頷いた。
無花果はじれったいような感じをため息をついた。

「なんで話してないのかしら?」
「?」

「・・・・・一ヶ月の任務の話は聞いているよね?」
「はい・・。」

無花果は重く口を開いた。

「私もさっき聞いたんだけど・・・イタチと鬼鮫一ヶ月の情報収集任務に出たって・・。」
「え・・?」
「それがなんか突然イタチが言い出したことらしいのよ!」
「私・・・何も聞いていない。」
「・・・そっかサクラちゃんも何も聞いていないのね。全くイタチの奴何考えてるのよ!」

どうやらイタチと鬼鮫は他の者には言わないで行ってしまったらしい。
ボスには了解を得ていたよだが・・。

「大丈夫よ。サクラちゃん一ヵ月後には戻ってくるんだから・・。」
「はい・・・無花果さん。」

サクラはイタチのことが分かると部屋に戻っていった。
そうだ、約束事を守らなければ。
紫苑と無花果には近づかない、ソレがイタチと約束したことなのだから・・・。

以前、連れ去られたとき一度だけ逃げ出して酷い目にあったことがある。
もしまた約束を破って、イタチに知られたら彼はまた同じことするのだろうか?
自分はきっとイタチの事を好きになってしまったのだと思う。

ストックホルム症候群なんかじゃない。
それにそんなにイタチは残虐なことはしなかったと思う。
全くされていないと言えば嘘になるけど、あのイタチの悲しい目を見ていると胸が苦しくなる。
サクラはひとまず落ち着こうと思い、一度眠りについた。





















「あら?サソリにデイタラじゃない?久しぶりね・。」
「・・・無花果か・・久しぶりだな。みんな元気してる?」


髪の毛を一部結い上げで片目を前髪で隠している男が、人懐っこく無花果に挨拶をした。

「・・・なんかここの雰囲気随分かわったな。」
「サソリの旦那もソウ思う?」

ゴツイという印象がぴったりの男が、ここの空間の異変にいち早く気づいた。
それは隣にいるデイタラも同じだったらしい。


「あぁ、それはね。イタチの奴女の子連れてきたのよ。」
「「?!!」」

無花果の爆発発言に二人は驚いた。
しかし何故?

「うずまきナルトの思い人だから、てっきり人質かと思ったんだけど・・なんか違うみたい。
 イタチの方が夢中だもん。」

「へーイタチをこんなにさせる子、見てみたね。うん。」
「・・・」


「・・・にしては、イタチの気配がないな。」


「さすがサソリ。鬼鮫と任務行っちゃった。」

無花果がお手上げ状態。
一体この状況をどうしたらいいのか分からないのだ。
まぁ、早くいってもらってこちらは好都合だとは思っている。
そしてサクラに何もいっていない辺り、サクラはショックを受けているはずだから・・。


「サクラちゃんはここに残ってるけどって・・・あれ?」

気づくと二人の姿はなかった。
二人とも、サクラがどんな女の子なのか見に行ったのだろう。
無花果は好奇心旺盛だなと呆れた。
それも仕方がないだろう。相手はあのイタチなのだから・・・。



「あーあ、私は暇だな。紫苑の奴上手くやってよ!」











サクラの部屋は静まりかえっていた。
落ち着こうと思って寝ようとしたが、なかなか眠れなかった。
心臓の音が響いて気になる。

自分はコウもイタチの事になるとどうにかなってしまうらしい。
コレが自分なのか?と思ってしまう。
そう、以前ならサスケを相手に自分はドキドキしていたのだから・・・
相手が変わっただけなのだ・・・そう相手が・・・


「私・・・本当にとんでもない人好きになっちゃったんだね。」


ふと、ドアの向こうで気配がした。
サクラも忍びの端くれ。ソノぐらいは気づける。
一人では何・・・数人?
暁のメンバーなのだろうか?


「誰・・・?そこにいるの?」



「「・・・・・」」


ドアノブが動いた。
紫苑と無花果だろうか?

しかし、姿を見せたのはサクラの予想に反する人物だった。
入ってきたのは、見知らぬ二人の男。

「こんにちは?」
「・・・」


ユニークに手のひらに目がある
もう一人はいやにでかい。



「・・・」

どうしたらいいのか分からず、サクラは黙ったままだった。


「へ〜君がイタチの連れてきた子・・・うん・・・オイラ、デイタラ宜しくね。」
「・・・名は・・・サソリ・・・。」


「春野サクラです。」

二人が名前を名乗ってたので、一応自分も自己紹介をした。
きっと今まで任務に出ていた二人だろう。
一度ざっとメンバーの顔と名前は教えてもらったが、この二人は見たことがなかった。


「今・・戻ってきた方ですか?」

それとなく聞いてみたら、どうやらソウだったらしく。
報告に行く前にサクラの事を見にきたという。
とりあえず先に報告してからまた来ると言って、二人は慌しくさっていった。


「・・・・・。」


また部屋が静かに戻った。
考えるのはイタチのことばかりだ。

まぁたった一ヶ月だ。なんとかなるだろうと言い聞かせて、サクラはそのまま眠ってしまった。


ソノ後、用を済ませたデイタラと、サソリがまた遊びに着たが肝心の、サクラが寝てしまったため
デイタラとサソリは少し困らせてしまったようだ。






























「よかったんですか?サクラさんに何も言わないで出てきて・・。」
「・・・サクラには・・・悪いとは思っている。それに”コレ”を早く終わらせてしまいたいからな。」

馴染みの暁の衣と笠をかぶり、顔を覆い隠す。
森の中、他国の情報収集は結構疲れる。
いくら自分達がSランク級の強さを持っていたとしても、大国相手ではリスクが大きい。
緻密な作戦が必要だ。
イタチは力を消耗して、息が荒かった。

「鬼鮫・・少し離れた場所へ移動しよう。」
「わかりました・・。」







任務に出てから幾日かたった。
今のところほぼ完璧に遂行しているが、いつ邪魔が入るか分からない。
スパイなど一瞬の油断が出来ないのだ。





「そういえば・・・」
「なんだ?」

「この前・・・任務が終わったら言いたいことがあるって一体何なんですが?」
「・・・後では駄目か?」
「気分がすっきりしません。」


そう、なにかイタチは決めたことがあるらしい。
それをもったいぶってイタチはなかなか教えてくれようとしないのだ。
任務が終わる事となにか関係があるのか?

「・・・俺は・・・・」
「はい・・・」


「暁を出て行こうと思う。」
「えぇ!!」

「鬼鮫・・声がデカイ。気づかれてしまうぞ。」

「あ・・すみません。」


イタチの唐突な発言に、鬼鮫はつい驚いて大きな声を出してしまった。
イキナリ暁をやめるという言葉に鬼鮫は、あることに気がついた。


「それってサクラさんのためですか?」



「・・・・そうだ。」




静かにイタチがうなづいた。
イタチはどうやら本気らしい。


「でも、やめた後どうするんですか?」
「別に・・・なにもしない。逃げるだけさ。勿論ちゃんと暁とは縁を切るがな・・。」
「はぁ・・・」


そんな簡単にきれるのだろうか?
大蛇丸の時も確か、ひと悶着あったのに・・・・

「本気なんですね。」
「お前はどうする?」
「ついてきていいのですか?」


鬼鮫は今までの流れだと、イタチは二人で逃げるというような形に取れる。


「正直言って・・・逃げたり、敵を倒すのは俺一人で十分だ。他の事となると・・・」

イタチの言っていることは、コミュニケーションのことを言っているのだろう。
口下手なイタチのことだ、二人でそうしていく自信がないのだろう?

「ようするに、私が潤滑油にと言うことですね?」

「・・・・」


鬼鮫はイタチの沈黙を肯定ととった。


「私は別にかまいません。イタチさんとサクラさんのことは結構好きですからね。」

「鬼鮫・・・。」

「それに私も、イタチさん一人じゃ心配です。」

「好き放題言いやがって。」

「本当のことではありませんか?」



「それもそうだな。いつもサクラには不安を与えている。」
「今回のコレもそうですよ。」

鬼鮫が言っているのはこの今遂行している任務件だろう。
それはイタチにも十分分かっている。
しかし、それは一日も早く終わらせたいが為の行動だったが、裏目にでたかもしれない。
やはり一言言っておくべきだった。




「さて、少しは体も休まりましたでしょう。そろそろ行きましょうか?」

「あぁ。そうだな。調べなきゃいけないものは、まだまだたくさんあるのだからな。」



イタチと鬼鮫は立ち上がり、他国へと進入する。


中枢へと入り、貴重な情報を得るために・・・・・。

















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