切なさの行方2 〜風の通り道〜   8





サクラは満面の笑みでカレンダーに印をつけた。

「ふふ・・・。」

そう・・・今日はイタチが変えてくる日なのだ。
時間は分からないが、そんなに遅くないだろう。




あれから紫苑はサクラに近づく事はなかった。
無花果もサクラを気遣ってか部屋に来ない。
もともと、デイタラとサソリは自分から話しかけるタイプではなかった。
今まで紫苑と無花果がいたから出来たことであって、サクラ一人だとかけずらいのだろう。

話し相手のいないサクラの退屈を凌いでいたのは、毎日みるカレンダーだけだった。
日に日に多くなるバツマーク。しかし、それも今日でおしまい。

















「・・・帰ったらまずサクラさんになんて言われますかね。」

「おかえりなさいじゃないのか?」



抜け人の二人には場違いな女の子向けのお店にいた。
きらきら光る髪留めや、ペンダント。
イタチは真剣に飾り物と睨めっこしていた。


「なんか前を思い出しますね。」
「そういえばちょくちょくサクラに買ってやってたな。」


何故あんなことをしていたのかは自分も分からなかったが、サクラの喜ぶ顔が見れて嬉しかったのを思えている。

「しかし、お土産とはまた違和感ですね。」
「本来ならこんなものはいらない。以前もそうだったな。」
「急ぎましょうか。」
「ま・・・待てなかなか決まらない。」

こんな色もデザインもありすぎるもの、どうやって決めればいいのかわからない。

「イタチさんがいいと思ったものでいいのですよ。」

「・・・・・そうか・・・じゃぁ・・・これにするか。」


イタチが取ったものは髪飾りだった。
サクラの髪の色より少し濃い目の桃色で小花がおおくあしらえたデザインだ。

「へぇ・・・いいですね。」
「そうか・・・?」
「はい、サクラさんに似合うと思います。」



















サクラはふと見に覚えのある気配がした。
これはもしかするとと部屋から飛び出した。


やはりそうだ。
イタチと鬼鮫が戻ってきたのだ。



「イタチさん!!」

「サクラか・・・。」


周囲を気にせずサクラはイタチに飛びついた。
それほどサクラには無理を強いたのだろう。

「ああ・・・ただいま。サクラ。」

そしてイタチは買ってきた髪留めをサクラにつけた。

「お土産・・・。」
「わぁ・・・ありがとう。イタチさん。」
「あとで部屋に行くから待っていろ。」
「はい。」


サクラはイタチから離れると、大人しく自分の部屋に戻っていった。


「全く・・・一目で熱いアツイ・・。」
「うるさい。」
「・・・」
「よそでやれ」



「まぁまぁ・・・」
鬼鮫が慣れているかのように宥めた。


サクラがいなくなると周りはブーイングの嵐だ。

「ところで、イタチ・鬼鮫今回はどうだった?」
「なかなかいいのが入った。」


「それと・・・また木の葉の自来也が動き出している。」

「俺達の偵察か?」

「ソレもあるだろうが、今回はここに居るサクラも絡んでくるだろう。巻いてくるのに時間がかかった。」


一気に真剣な話題に入り、空気が一変する。
全員が、顔を見合わせて静まりかえった。

「まだ下忍。木の葉はまだ”ナルトの人質”としてみている部分も多い。」
「そうか・・・」

「それと・・・大蛇丸も・・・」


また木の葉つぶしの準備に取り掛かっているだろう。







「そうだ・・・今言っておきたい事がある。」

「え・・・イタチさん?!そんな急に・・!!」



「俺と鬼鮫はここを抜ける。」



一同、騒然とした。
無理もない。いきなりこんな事を言われ、ハイそうですか。と簡単にはいえない。
ここには機密情報がたくさんあるのが。
抜けるというのはソレ相応の代償もある。


「本気か?」

「あぁ・・・サクラも連れて行くぞ。」

「あれは組織の人質だ。」

「サクラは個人的に連れて来た。勝手な判断をするな。」


まさに他のメンバーとイタチで一触即発。
鬼鮫はこれだからイキナリこんなこと言うのは嫌だったのだ。



「兎に角俺達は抜ける。これは決定事項だ。」


イタチは報告書を渡すと、鬼鮫も連れて行ってしまった。




「・・・どうするんだ?」


「困ったわね。二人も抜けるなんて・・。」


「・・・うん・・・困った。」

「・・・・・。」


「で、イタチの奴サクラちゃんと鬼鮫いつここ出ていくんだ?」


「「「「知るか!」」」」













「サクラ、入るぞ。」
「はい。」



ベッドに腰をかけていたサクラは、快くイタチと鬼鮫も迎えた。

「鬼鮫さんもおかえりなさい。」
「やれやれやっと私にもいってもらえましたね。」

「あ・・・ごめんなさい・・・そんな・・。」

「いいえ。大丈夫です。」

そう、サクラはすっかり鬼鮫の存在を忘れてしまっていたのである。
慌てて訂正したが、もう遅かった。



イタチはこの一ヶ月のことを教えてくれた。
他里の状態、治安。外の景色や一番気になっていた木の葉の事。


「木の葉はお前のことを取り返しに来るだろう。」

「・・・私は・・・・」

「分かっている。もうお前を返すような事はしない。」
「イタチさん・・。」


「そういえば・・・お前は大丈夫だったのか?」
「うん。みんな優しかったよ。」


「そうか・・。」


イタチの瞳は鋭い。どんな嘘をついてもすぐに見透かされる。
今もこの嘘に気づいてしまうのか・・・?


「・・・イタチさん。」


「俺は本当のことを聞きたい。もう一度聞く、お前は大丈夫だったのか?」



やっぱりイタチ相手に嘘をつくことは出来ないのだろう。


「あのね・・本当はね、・・・紫苑さん・・・・に」
「何かされたのか?!」

サクラの言葉にイタチが血相を変えて腕をつかんだ。
こんなイタチはサクラも見たことがなかった。

「イタチさん・・・痛い。」

「答えろ!!」

「されてない・・・サソリさんに助けてもらった。」
「そうか・・・」


イタチは顔色を変えないまま、腕を放して部屋を出ていった。
助けてもらったということは、そういったことをされかかったのだ。
イタチの不機嫌が直らない。


「あ・・・ちょ・・・イタチさん?!」

鬼鮫はどう行動したらいいのか分からず、とりあえずイタチの後を追うことにした。

「サクラさん、大丈夫ですから。イタチさんは私に任せて下さい。」











その夜、サクラはよく眠れなかった。


あの時とはまた違う凄みを増した瞳。
イタチは許してくれるのだろうか?

紫苑に近づくなと言われていたのに、ドアを開けてしまった自分が悪い。
言い訳が出来なのだ。

また・・・閉じ込められる?それとも拷問に近い行為を強制される。
恐怖がサクラを襲い、平常心が保てなかった。
























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