切なさの行方3〜〜真っ白に包んでくれたらなにもいらない〜 5





「何?工事。」

「うん。昼間ね、責任者の方がね名刺とパンフ持ってきたの。」


昼間の工事現場の男が持ってきた資料を、サクラはイタチに渡した。
教会を作るようだ。
大まかにどんな施設かの説明が書いている。

白を基調とした神聖なる女神の像と、大きな十字架がいかにもソレらしい雰囲気をだしている。


神に祈りを捧げる場所。

ばかばかしい。
神がいれば、自分達はとっくに幸せになっているはずだ。


イタチはばかばかしく思いながらも、律儀に書いてある事は一字一句見逃さずに読んでいた。

確かに完成予定図は綺麗だ。
飾りも可愛いし、シャンデリアというものがいかにも女性受けをしそうだ。
結婚式場にもなると書いてある。

「異国の文化だな。」

「私もそう思いました。冊子にこの教会での結婚式の挙げ方なんて載ってたんですよ?」


サクラの言葉どおり、冊子をパラパラめくる。
モデルの男と女が真っ白な服に、身を包み笑い合っていた。

花嫁は綺麗なドレスを着ている。
純白のドレス。
これが異国の結婚式衣装なのだろう。

サクラはホウっと見ぼれてしまった。

女の子には堪らないだろう。
このドレスは・・・


さて、どうしたものか、
わざわざ工事のことを知らせに来た男。
放っておくべきか、何かアクションをいれるか・・・



「・・・サクラが釘を刺していたのなら別に問題はないかと思うが・・・」

「どうします?幻術でもかけて、私達の存在自体を記憶から消去しておきます。」

「幸い、顔を見られているのはサクラだ。しかし、サクラも今となっては追われてる身。」


やはりなにか手を打たなければいけない状況には変わりない。
イタチは、暫く考えたあと自室に戻った。


「・・・鬼鮫さん。」

「はい、何でしょう。サクラさん。」

「あれは”俺がやるから特に心配しなくていい”ってとっていいのかな?」

「サクラさんの予想通りでいいと思います。私も今そう思いましたから・・。」


幻術にかけるつもりでいるのだろう。
それとも家全体に結界を張って見えない状態にする。

初めからそうしておけばよかったかもしれない。
しかし、食料調達の時に家の説明をした際、人が住んでいる建物が無いのは怪しまれる。

この地方は”忍”という人間は出回っていない。
一般人をよそおり、旅人だったがここに腰を据える事にしたとでも言えば大丈夫だろう。

ここには、イタチたちがお尋ね者だなんて、みんな知らないのだから・・・・










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イタチは慎重派と見せかけて、ちょっぴり臆病者。
今度こそ、何にも囚われず自由になりたいと人一倍願っています。





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