切なさの行方3〜〜真っ白に包んでくれたらなにもいらない〜  6






地響く。
工事が本格的に進んできたといっても過言ではないだろう。

敷地と同じ面積で耕された土。
土の固さをはかり、その土地に建物が建って崩れないか検査をしている。

イタチは作業員の様子をじっと見詰めていた。
結構規模の大きい工事だ。
きっと完成したら、この近くの村人は間違いなくここに出入りするだろう。
何か、祭りごともここを利用する機会が増える。


そんな近くにイタチたちの小屋がひっそり聳え立っている。
確かに、ここは村人の何人かは知っている。
といっても、食料を仕入れる時に、贔屓にしている店のモノだけだが・・・
こうやって、多くの人の目に付くのはあまり良くないことだろ。

一体誰なのだろうか?
こんなところに教会を建てようと考え出した者は・・・

ふと視界に一人の男が入ってきた。

見る感じは一目のよさそうな感じの人だ。
でもそんな人、この世の中そこらじゅうにあふれている。
イタチはその男を見据えていた。


「私の顔になにかついていますか?」



流石に、異常な視線を送っているので、見られているのに気付いたのだろう。
男はイタチの隣で腰を下ろした。

丁度、岩があり椅子代わりになっている。


「いいえ、随分と熱心にこの建物を見ているんだなと・・。」
「私が依頼したんですよ。この教会。」

「え?」


「私が、この土地に教会を建てようと思いました。」


すると、この男は神父なのだろうか?


「・・・・教会ならもっと人の多いところの方がよかったのでは?」

確かに、そのほうがいろんな人が祈りを捧げに来てくれる。
お布施も多くもらえるのでは?
式を上げるにしても、人が入りやすいし変な心配に越した事は無い。


「・・・こういった静かなところがいいですよ。」

自然と囲まれて、安息に暮らしたい。
もともとは街の教会で、神父をやっていたが息子に譲り渡したと言った。

老後はもっと自由気ままに暮らしたものだ。


「長年、こういった事をやっていると、人を匿う事も多くてね。私も何人もの罪人を匿い、罪を許してきた。」


イタチの胸の中を見透かしているよな言い方だった。
人の心を読むことはあっても、読まれることは初めてだった。
ああ。心の奥を読まれるのはこんなにも、平常心をなくしてしまうものなんだとイタチは思った。

さて、とんだ狸オヤジといったところだろう。
こんな白昼堂々ともう、人は殺したくない。


「貴方も・・・きっといろんな訳がおありでしょうね。目を見れば分かります。」


神父は目を伏せた。


「貴方が初めてです。こやって私の心に入ってくるのは・・・。」

「そうでしたか・・。私は別にどうこうはしません、それに今の貴方は違うでしょう。」

「!」


「貴方の瞳は血のように赤い。殺戮を繰り返してきた眼。でも、今はそんな中に憂いと、少しの優しさがある。」


だから大丈夫ですと、神父は笑った。
イタチはどうらやこの神父には、勝てないと悟った。

「貴方の言うとおりです。本当はこんな地に人が多く出入りするような施設は厄介だと思ってました。
 でも、貴方と話して少し気が変わりました。」

返答次第で、殺すと眼で訴えた。
それも神父にはお見通しだったようだ。

「貴方も、用心深いですね。大丈夫ですよ。これでも重罪人を何人も匿ってきたのですよ?」

「そういえば、そうでしたね。」


イタチと、神父は互いに顔を合わせて笑った。
ああ、大丈夫だろうこの人は。

こんなに澄んだ目をしているのは久しぶりに見た。
この人は嘘を付かないし、なにか術でもかけられない限りは、自分達の情報が漏れることが無いだろう・・。


「そういえば、貴方には大切な人は居ますか?」


「はい、命をかけて守りたい人がいます。」

「それは何よりです。その誓い、是非わが教会で誓いを立てていただけませんかね?」

「気が向いたらな・・・。」


「申し遅れました、私、縁と申します。」

「イタチだ。」


「それではイタチ殿。完成したら、是非寄ってください。」

「気が向いたらな。」


イタチはもう満足したのか、腰を上げた。
縁も重い腰をあげて、帰っていた。



教会の完成の日はそろそろ近い。
















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そろそろ勘のいい人は、この物語の終わり方がわかってくるはず
え?分かりすぎですか?
これは失礼しました。







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