紫の人  1



良く夢をみる。人を殺す夢。

白い壁が真っ赤に染まって、気持ち悪い。
鏡を見てみると、自分の瞳は・・・・・・


赤い・・・・・・!!!




「はぁ・・はぁ・・・・、夢・・・ですか・・?」


夢見の悪さに目が覚めた。
時計を見ればまだ、午前2時を過ぎたところ。

寝汗が酷い。
場所が廃墟のため、満足にシャワーも浴びれない。

「そもそも・・ここは・・・?」

最後の記憶はどこだったか?あぁ、そうだもう一人の骸がイタリアから脱獄を果たして
日本へきているのだった。
ボンゴレ十代目を探しに来ているのだった。

「また・・・血を流すのですか?・・・つ!!」


もう一人の自分に話しかけると、頭痛がする。
お前には関係ないと牽制されている。
何も出来ない人間は、大人しく従っていろと・・・・。


(僕は・・・千種と犬と、静かに生活出来ればよかったのに・・・。)


水道はなんとか機能しているので、水を一杯飲む。
月が綺麗な夜だ。

何かがうごめくよな、赤い月。


「骸様?」


「千種・・・。」


どうやら千種を起してしまったようだ。

「どうしました?」

「いえ、目が覚めて骸様の姿がないと思ったので・・。」

探しに来てくれたらしい。

「すみません。ちょっと夢見が悪かったものですから。」

日本のジメジメとした天候は、イタリア育ちにはちょっとキツい。
じきに慣れるだろうと、ふっと笑う。

「骸様・・いえ、屍様と呼んだ方が宜しいですか?」

「よく分かりましたね。僕が・・・。」

いつもの僕じゃないという事を・・・・。

「・・・骸様はもっとオーラがトゲトゲしいお人です。貴方のオーラはとても優しい。」

「おや、嬉しいことを言ってくれますね。どちらでもいいですよ。僕は骸でも屍でも構いません。」

「骸様はよく貴方の事を、”屍”と呼んでいます。」

同じ”骸”ではややこしい。と赤い瞳のもう一人の自分は、自分を”屍”と呼ぶ。

「珍しいですね。貴方が出てくるなんて・・・。お久しぶりです。」

千種は、屍の手の甲に口付けた。
千種も犬も、骸も屍も大切な人には変わり無い。

むしろ、エストラーネオで初めて会った時は、もともと屍だったのだ。
六道眼の移植手術により、もう一人の屍と名乗る”骸”が現れた。

「骸は・・・今眠っています。神経を使いすぎてとても疲れています。」

「そうですか・・・?」

「千種・・・。」

「何でしょう?屍様。」

「本当に実行するのですか?」

”本当にマフィアを殲滅させるのですか”


「骸様の意志は僕たちの意志です。」

「僕だって”骸”です。やめてくださいこんな事・・僕は・・・うぅ!!」

「屍様?!」

『クフフ・・・屍、余計な事は無用ですよ?』

「む・・・くろ・・?」

『お前は何もしないで僕に委ねていればいいんです。』

「そんな・・・。」

さっきまで眠っていた骸が目をさました。
マフィア殲滅計画をやめさせようと千種を説得したとたんだ。

『サァ、お休み。僕の屍・・・次に君が目を冷めるときは・・・・』

「すみません。千種。」

「いいんです。骸様、屍様は・・?」

「眠っています。さぁ、大分時間が経ってしまいました。
 今は体をゆっくり休めて起きましょう。明日は星の王子様狩に行かなくては行けないのですから・・・」

「わかりました。」


日本へやってきたのは、ボンゴレ十代目の体をのっとるため。
しかしボンゴレ十代目の少年が誰だが骸達は分からない。

手に入れた情報によると、ボンゴレ十代目はランキングフゥ太の知り合いらしい。
ランキングフゥ太を先に捕らえて情報を手に入れるのが最も近い道のりだ。

「いよいよ、明日からですね。」

「ええ。随分と長くかかりました。屍の為にも・・・。」

この計画は成功させなければいけない。


優しい屍。愛しいもう一人の僕。
君はとても優しい。

貴方は静かに過ごせればいいと思っていますが、世の中は僕たちに優しくない。
逃げても逃げても、六道眼とエストラーネオの生き残りとして異端者の目で見られる。

捕まってしまえば、良くてモルモット、悪ければ死は免れない。


「僕達の平和のためにも・・・。」


「はい、骸様。マフィアの殲滅を・・・。」


明日彼らは実行に移る。














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