風になりたい   中編




一晩あけてゼシカはマルチェロとルカとサラに別れを告げた。

この事をエイトとヤンガスに伝えようかと思ったがやめておいた。
特にエイトにはまだ言わないでおこう。
エイトは少なからずククールに好意を抱いていたからだ。


仲間になったときは男のフリをしていたが、事を期に男のフリをするのをやめたのだ。
それは冒険のほとんど最後のほうだった。
聖地の戦いが終わった後だった。
もう、ククールは男のフリをする必要がなくなったからだ。
ゼシカはうすうす気づいていた。


エイトとヤンガスはわからないけど、きっとエイトもうすうす気づいてるんじゃないかとは思っていた。






キメラの翼でリーザスに戻り、自分の部屋に戻った。
無断外泊をしたので母親にガミガミ言われたが、聞きもしなかった。

あんな事になっていたなんて思いもしなかった。
浮かぶのはククールの幸せそうな笑顔だった。
女の幸せを手に入れた彼女

一番の親友



ククールがマルチェロと暮らし始めたのをしってとても嬉しそうだったのを覚えている。
エイトは少しどう受け入れていいかわからなかったみたい。
ヤンガスは安心そうな顔してたっけ・・・

兄弟と知る者はいないひっそりとした人里はなれた丘の上で家をたてで暮らし始めた。
まぁそれにはゼシカを初めいろいろな人の協力のもと人の好意によってだが・

みんな安心していたのだ。

その下には教会をつくり旅人や商人の癒し所となる。
ククールもマルチェロも僧侶としても技量はあるのだ。

ここを立ち寄る旅人は多かった。

夜は二人とも家に戻っている。
その間は丘の家に来てもらうようになっている。

だからこの家は少しおおきかった。
というのも、大きく造りすぎてしまったのであった。


ときどき旅人が泊まりにきたりするのだ。

今思えば大きな造りにしておいて正解だったのかも知れない。













ゼシカがマルチェロの家に行ってから一週間ほどたった。
リーザス村に二人の訪問者が訪れた。
ルカとサラだった。



「あら?どうしたの二人とも・・・」

「ゼシカちゃん・・・パパが・・」


「え・・・?」


二人は今も泣きそうだった。
訳をきくといつもと様子が違うと泣く


ゼシカは母親に出かけるとそれだけ告げて、二人を連れて村をでた。



家へつくと、教会へ行っているはずのマルチェロがいた。


「な・・・お前・・何故?」
「この子達が連れてきたのよ。全く今度は何をしたってのよ!」
「この子達は何もしていない。」



良く見るとマルチェロも顔色は悪かった。


「って!!貴方熱があるんじゃない!」
「・・・情けないな・・この年になって・・」

「馬鹿ね!風邪なんてどの年でもひくもんなのよ!」


ゼシカの一括でマルチェロは大人しく、ベッドによこになった。


「全く世話のかかる兄妹ね!ククールもそうだったんだから!」
「・・・すまない・・・」
「嫌味男がこう素直に謝るなんて明日は雪ね・・・。」
「・・・・・」


ゼシカはタオルを濡らしてマルチェロの額にのせた。

「ゼシカちゃん・・・パパ大丈夫?」
「治るよね?」

ルカとサラは心配な瞳でゼシカをみあげた。

「大丈夫よ。ただの風邪・・明日ぐらになればよくなるわよ。」

二人に笑顔が戻る。

時刻はもう夕刻だった。
「貴方がそれじゃね・・・ルカとサラは私が見るわ。夕食・・・後でもってくるわ・・。」
「ありがとう・・」

マルチェロはそれだけ言って眠った。



ゼシカはルカとサラを寝かしつけた後、マルチェロに口当たりのいい食べ物をもっていきタオルを取り替えた。
寝てるかと思っていたが、おきていた。


「ねぇ・・・一つ聞いていい?」
「なんだ?」



「ククールってどうして死んだの・・・?」


一瞬マルチェロは瞳を大きくし戸惑ったが、冷静さを取り戻し語り始めた。



「・・・正直私も良くわからない・・。医者が言うには子供を生んだことが原因だったらしい・・・」
「そんな・・・」

「正直言って・・・子供を生むのはとめられた。けど、ククールは反対を押し切って生んだのだ。今度こそってと・・・」
「今度こそ?どういう意味よ・・・。」
「・・・・・一度流産している。それが原因でだ。」
「そうだったの・・・・でも元気だったじゃない・・。」
「ああ、確かに・・でも少し前だったんだ。体調を崩してそのままあいつは逝ってしまった。」
「・・・・ククールは貴方のことが本当に好きだったのね。」
「・・・・・こんなこと言ってしまうのは正直、君には酷かもしれない・・。」

「何よ・・・。」


「私は本当にククールを愛していたのだろうか・・・解からないのだ・・・」


「どういうことよ?」
ゼシカの顔色が変わった。
このごに及んで何を言い出すのか・・・・?


「こわいんだ。本当にルカとサラは私の子供なのか・・」
「え・・・?」


「教会には巡礼者も良く来る。・・・正直ククールは私から見ても器量はいい。マイエラと同じであいつ目当てでくる巡礼者が殆んどだ」。」
「・・・・・。」

「私のいぬ間に・・・・・」


「そんなことあるわけないでしょ!!」
ゼシカはマルチェロがまだ病人だともかかわらず、つい胸倉をつかんだ。


「巡礼者には・・・黒髪の男もいたし、碧の瞳をした者もいた。」
「ちょ・・・」

「本当に二人は私の子供なのか?!聴いた瞬間は驚いた。本当か?確証できるものがないじゃないか!!」
「ちょ・・・そんな大声出したら・・!」


ゼシカは入り口を見るとルカとサラがいた。
今の言葉を聴いてしまった様子だった・・・

「ルカ・・・サラ・・・」
ゼシカは慌ててルカとサラをなだめた。


「その・・・僕とサラ・・トイレに行きたくて・・怖くなってゼシカちゃんに一緒に行ってもらおうと思って・・」
「あ・・そうなの!じゃいこうね。トイレ・・」
ゼシカは冷や汗をかきながら、マルチェロの部屋から二人を出そうとした。


「パパ・・・私とルカちゃん・・パパの子供じゃないの・・・?」

サラが確信をつくようなことをいった。

「さ、さ、二人ともいい子だからお手洗いに行って寝ようね!!」
ゼシカは強引に二人をトイレにいかせ、寝かせた。
マルチェロも心配だったが、今はルカとサラの方がさきだ。
ゼシカは二人と一緒に寝た。




マルチェロはその夜は一睡もしていなかった・・・・。













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