羽化   前編





お腹が痛い。

腹部に鈍い痛みが走る。
最近この痛みをククールは感じるようになった。


冷やしてもいない
別に食べ過ぎてる訳でもなにのに・・・・


なぜ?


兄のマルチェロにこの異変を訴えても
「暖かくして横になったほうがいいな・・。トイレはいったか?」


違う
何かがいつもと違う。
だって痛みの場所が違うもの。

















次の日、ククールはいつも通り学校へ行く。

今日は最後の授業は体育があった。
ちゃんと出来るか不安だ。






痛みは波がある。
なんかうまくたってられない。
クラクラする、でも我慢できないほどでもないから保健室には行かなかった。




そんな事してる間に、もう午後の授業だ。
ククールは憂鬱だった。
思春期を迎え始めたククールならびに、クラスの女子は着替えを別々の部屋にして欲しいと頼み違う部屋で着替える。


「ククールって結構胸あるのね。」
「ゼシカ・・・」
ゼシカはククールの一番仲のいい友達だ。
クラスではブラコンコンビといわれているが・・・・
兄の話題が尽きない二人だ。


「ゼシカ・・・もうブラしてるの?」
「うん、ママがねもう大きくなってるから付けなさいって」



「ククールの大きさもつけなきゃ駄目だよ。私よりおおきそうだし・・・。」
「え・・・でも・・」

ゼシカには、母親がいるからまだいいと思う。
いろんな相談が出来るし・・
マルチェロも一通り年が離れているから十分大人だ。
しかし、12歳の思春期を迎えたばかりの少女にはそれが恥ずかしい。

「・・・」
ククールは真っ赤になりうつむいた。

「あ・・・ゴメンね。でも、ククールのお兄さんって頼りになりそうだし・・・ね・・・?」
「ゼシカ〜。」
「・・・そうだよね・・。お兄さんに下着とかは無理だよね・・。」
ゼシカはバツの悪そうな顔して誤った。


「別に・・・でも・・・それだけは私もどうしようもないんだ。下着とか、洋服お金だけ貰って自分で買ってるから・・。」
ククールには親がいない。
ククールが物心ついた矢先、すぐに事故で亡くなった。
この人生殆んどククールはマルチェロに育てられた。
だからって、父親代わりにもなれない中途半端な存在。

「そっか・・・ククールは大変だね。何かあったらなんでも相談してね!」
「ありがとう。ゼシカ・・・。」







二人は着替えをすませ、グラウンドへ向かった。











あぁ・・・やっぱりまずかったか?

痛い。
何この痛み

いつもの腹痛じゃない・・・・


いやだ・・・


そんな痛みも関係なく時間は過ぎていく。


短距離を走り終わったと、ゼシカが血相を変えて走ってきた。
今はきっと自分は青い顔をしてるんだ。
だって、今にも意識はなくなりそうだ。


「ククール!!」
「・・・」
痛みは最高潮に来ていた。
はっきり言って辛かった。





「ククール!足に血が・・!!」


血?


ククールはゼシカが何を言っているのかわからなかった。
だって、転んでないし怪我してないし、血をだす原因が見あたらない。

そう思っていた。
足になにか違和感がある。
何か垂れてるような・・・









「初経が来たのね・・・。」


ククールはゼシカにつれられて保健室へ行った。
保健の養護の先生は、ククールの体の対応を図りククールをベッドで寝かせた。



「さあ、ゼシカちゃんは戻りなさい。」
「はい・・・・」






ククールはベッドの中で一体自分の体に何が起きてつのかわからず混乱していた。

「先生・・」
「何?」
「ナンなの?これ・・」



ククールは家族に女がいない
自然とわかってることも良くわからないことが多かった。
先生はそんなククールを優しく噛み砕いて教えてくれた。


これは子供から大人になるための準備なんだと・・・







下校の時刻、ククールは足取りが重たそうだった。



”ククールちゃんこれを家族の人に見せてね”


先生の配慮のつもりだったらしいが、ククールはこれをマルチェロには見せたくない。
でも・・・


”黙ってても気づかれるわ。いい?ちゃんと見せるのよ。・・・・・大丈夫よ。お兄さん素敵な人じゃない・・・”




マルチェロは今大学生の最終学年だった。
もう、就職先も決まり論文に頭を悩まされていた。

高校・大学と特待生で入り、学費も全て免除してもらっていた。
ゼシカの兄、サーベルトとは先輩・後輩でサーベルトが2つ下だった。
高校に入ってからマルチェロはバイトと勉学を両立し学年トップを維持してきた。

そんな兄をククールはとても尊敬していた。
だから、そんなにわがままも言わなかった。
裏でマルチェロが苦労しているのをククールは知っていたから・・・・




就職先が決まった日だ。
マルチェロは嬉しそうな顔で、

「ククール・・今度はお前のワガママも聞いてやれそうだ・・・でもお前はきっとそのうち兄の俺をうっとおしくなるんだろうな・・。」

そんな事ない、ククールにはマルチェロしかいなかった。
まだ、ククールが幼稚園の時だ。


高校の行事でマルチェロの帰りが遅くなりククールは寂しくて寂しくて泣いていた。
ギャーギャー泣いて、見かねた隣のおばさんがかまってくれた。
まさか、マルチェロもこんなに遅くなるとは思わなかったのだ。


帰ってくるなりククールはマルチェロに抱きついた。
マルチェロも優ししく抱き締めてくれた。
それがとても心地よかったのだ。




今日・・・初経がきたんだよって言ったらなんて顔されるだろう?






ククールは家に帰るなり、自分の部屋に閉じこもった。
たしか、今日はマルチェロはバイトは早く終わる時間だ、もう少ししたら帰ってくるだろう。
どうしよう・・・・
あわせる顔がない











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