この恋を君に捧ぐ 2 ブリタニア本国では長い会議が行われていた。 無論枢木スザクの花嫁を誰にするかだった。 予想は大方決まっていた。 皇帝以外の人間は、皆”ルルーシュ”という。 忌々しい庶民出の子供を、追い出す絶好のチャンスなのだ。 誰もがそう思うだろう。 しかし、ルルーシュは数ある皇帝の子供中でも、一番皇帝の血を濃く継いでおり、一番可愛がっていた。 父親譲りの、皇族の紫・見るものを魅了するカリスマ性 母親譲りの、漆黒の髪・美貌 正直言って皇帝は、ユーフェミアを差し出す予定だった。 しかし、ユーフェミアの母親、もとい后妃は、断固反対した。 この后妃はなかなか身分の高い出だ。 いくら皇帝といっても、一人だけ意見が違っていては大きくも出れない。 ルルーシュはブリタニアでは、俗に言う”弱者”だった。 母親を失い、妹も失い、後ろ盾のアッシュフォードも事件の責任を問われて、伯爵の地位をなくしてしまった。 皇帝が、皇族がブリタニアのルールを守らないで、誰が守るというのだ。 皇帝は今だけ、ブリタニアの規則を先代達を呪った。 「決断を・・陛下・・。」 これは・・・腹を括るほかない 「・・・仕方ない・・・日本へは・・・ルルーシュに行ってもらうとしよう。」 「ルルーシュ!!」 「・・クロヴィス兄上・・。」 アリエスの離宮にクロヴィスは息を切らしてやってきた。 「どうなさったのですか?」 「どうしたも、こうしたも!!ルルーシュ、お前・・・」 「・・日本に嫁ぐ事になりました。」 「な・・!!」 そんな一大事を何故平然としていられれるのだ?とクロヴィスに言われたが、 この話が来ていたときには、ルルーシュは自分になるだろうと思っていた。 いくらクロヴィスを初め、兄や姉、・・・気はひけるが、 父親からも愛されている事はルルーシュには痛いほど分かっている。 だが、他の貴族が許さないだろう。 后妃たちが快く思わないだろう。 自分の追い出す絶好のチャンスに、食いつかないわけが無いのだから・・。 「分かっていました。兄上・・はじめから。」 「ルルーシュ・・。」 「泣かないでください。兄上・・兄上は本当に泣き虫ですね。」 「・・感受性が豊かと言ってもらいたいな。」 泣いているクロヴィスにルルーシュは微笑んだ。 「それより私を初め、兄上や姉上もお前を心配してるんだぞ。それに・・・ルルーシュ・・君は・・」 「・・・平気です。しょうがないもの・・きっと慣れると思います。」 「ルルーシュ・・。」 ルルーシュの兄姉は心配しているのだ。 数年前の悲惨な事件、それ以来ルルーシュはすっかり笑顔をなくしてしまったのだから。 少し微笑む程度はあっても、決して笑いはしなかった。 これ以上、妹を傷つけたくない。 ルルーシュ以外の兄弟妹姉達は、心に誓ったのだ。 そして、今度はそれすらも出来なくなってしまう。 「さっき、シュナイゼル兄上と、コーネリア姉上と、ユフィもきた。」 「みんな考えることは同じなんだな。」 「でもすぐには行かない。私はまだ17だ。」 「ブリタニアは、女子も18以上でないと結婚できないからな。」 ルルーシュはちょっと顔をにごらせた。 「なんか大分話がややこしくなってな・・?」 「どういうことだい?ルルーシュ。」 クロヴィスは紅茶をだしたくれたメイドに礼をいうと、ルルーシュの言葉を待った。 「説明するのがメンドクサイ。」 「なんだよ、ルルーシュ・・。」 何も言ってくれないルルーシュに、クロヴィスはがっかりした。 「とりあえずに兄様、私はまだ暫くはブリタニアには居ます。」 「そうか・・」 ほっとしたのもつかの間だ、ルルーシュはいつもの遊びをクロヴィスに要求してきた。 「やりませんか?」 「はは・・・ルルーシュが行く前までに、一勝でもしておかないとな。」 「そうですね。」 二人はチェスに集中し始めた。 「チェックメイトです。兄様。」 「・・・どうやら、ルルーシュお前に勝てる日は来ないかもな・・。」 「そんなこと無いですよ。兄様。」 ルルーシュは悲しく笑った。 スザクの婚約者騒動から数日過ぎた頃だった。 ゲンブから、正式に誰が婚約者になるか決まったようだ。 「スザク、ほら写真だみておけ。」 渡されたのは見合い写真のような大きさの用紙。 「名前はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。お前と同じ年だそうだ。」 ・・・同じ年と聞いて少し安心した。 ブリタニアは皇子が殆どで、皇女が圧倒的に少ないと聞いている。 年の近い女の子なんて居ないと思っていたのだ。 とりあえず、少し離れた年上でも覚悟はしていたが、年下だけは勘弁だったのである。 同じ年でも、蝶よ花よと育てられたので、話が合うか良く分からない。 完璧に年上といえばよかったのかも知れない。 「お前の好みは・・年上といっていたが・・。」 「いないのですか?」 「・・いや・・・ルルーシュ殿下は第三皇女、第二皇女のコーネリア殿下とは年が一回り以上違っていてな・・。」 「はぁ・・・。」 「お前・・それでも27歳の年上でも良かったというのか?」 「俺は別に・・。むしろ・・・そっちの方が・・・・」 スザクの問題発言にゲンブは、肩をガクリと下げた。 さすが年上キラーというべきか・・・どこで育て方を間違えたかと困惑した。 「兎に角だ!失礼のないようにな!欧米のマナーを勉強しておけ!」 「分かってるよ。」 「それにルルーシュ殿下の事も調べてある、ちゃんと好みの事も頭に入れておけ!」 「はいはい、分かりました。」 これ以上ゲンブにガミガミ言われるのは嫌で、スザクは適当に返事をして部屋に戻った。 写真を開くことなくスザクは部屋に置いた。 ブリタニは女子も結婚年齢は18歳らしい。 ルルーシュ殿下はまだ、誕生日がきてない、ルルーシュ殿下の誕生日もとい12月5に日本にくるらしい。 そこで正式に婚約。 国の一大事だ。 各国のマスコミも煩いだろう。ゲンブは厳重に言われている。 新聞に載るらしい・・・。さっき新聞記者が来たといっていた。 明日の各新聞の一面トップは、スザクとルルーシュ皇女の婚約だそうだ。 はた迷惑な話だ。 式は来年の春。 これからは大変になりそうだな。 スザクに残された自由な時間は、冬までなのである。 「はぁ・・・やりたい事早いうちにやっておかないとな・・。」 チラっとさっきの資料が目に入った。 完全に興味が無いと言えば、嘘になる。 スザクはあまりブリタニアは自分とは関係ないと、あまりその関連の記事や雑誌、を見ていなかった。 中にはブリタニア皇族の公式プロフィールもあるだろう。 でも、明日新聞にもこのルルーシュ皇女の写真も載るだろうか? 確かに国家、日本にも、ブリタニアにとっても一大事だ。 でもこのじゃ、中華連邦やEUには完全に敵対宣言する事になるだろう。 まぁ、超大国がバックにつくのだから、もともと同盟を結んでしまった時点で、敵対しているそんなのどうでもいい。 「勝手に・・・決めやがって・・これで相手が、甘ちゃんだったら俺本気で殴るぞ。」 明日の新聞記事のことを考えると、スザクは憂鬱になった。 |
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