この恋を君に捧ぐ 3 朝練を終えて教室に入った。 インターハイを控えているため、練習は少しハードだ。 ドアを開けると、クラスメイト全員がスザクに視線を向けた。 「おい、スザク〜!お前なんだよコレ!!」 仲のいい友達がスザクに新聞の一面を見せた。 そこには、案の定スザクと、ブリタニアの皇女との婚約発表が載っていたのだ。 スザクは興味がなくて、朝新聞を読んでこなかった。 何ゆえ乗る気じゃない婚約発表の記事を、読まなければいけないのか? 学校にくれば無理やり見せられるのだから、朝読まなくてもいい。 芸能雑誌のように、顔が大きく載られても困る。 一体どの様に載っているのか不安はあったが、普通の新聞に変なものは使わないだろう。 友達は返事をしないスザクに、コノヤローと悪態をついて、スザクの首を回した。 「なんだよこれ〜。しかも皇女様写真みたけど、超可愛い娘じゃん。」 「へ?」 「なんだお前、自分の婚約者の顔ぐらい、写真とかで見たんだろ?」 「写真、親からもらったけど、見てない。」 単にいえば興味がなかった。 ブリタニアの皇女は、みんな母親似の美人揃いと聞いている。 みんな綺麗なら、どれでも同じだろうと思っていた。 「もったいないよな〜。ルルーシュ皇女殿下だろ。お前みたいな最低野郎にね・・・同情するよ。」 この友達は、スザクの表の顔と裏の顔まで知っている、スザクには数少ない友達だ。 悪友ともいうだろう。 唯一のスザクの理解者だった。 「なんだよ。同情って・・。」 「お前女、とっかえひっかえじゃないか。最近は年上に手だして・・・うやらましいぞこの野郎!」 スザクは童顔で世間一般から見れば、可愛い部類に入るだろう。 それに伴いよく年上の女性から、可愛がられている。 それはスザクも十分理解している。 小悪魔のような可愛い顔で近づいて、その女性と関係を持つ。 中身はむしろ悪魔といったほうが、当てはまる。 育ちがいいだけに、学校の女の子からもモテる。 スザクの通う学校は、全国でもレベルが高い私立の進学校だ。 生徒はみな”いいところのぼっちゃんとお嬢様なのでさる。 好奇心で近づいてきた女の子に、毒牙をかけるなんてスザクにとっては当たり前なのだ。 この前のどこかの社長令嬢だったか、好きと告白さて付き合い始めたが、 甘やかされて育ったため、ワガママで融通が利かない。 ちょっと強引に事を進めようとすると、今度は泣き出した。 自分から寄ってきたくせに・・・・ ツマラナイ ウザイ それに懲りてからは年上の女性とのみ、後腐れ無しという条件で関係を持つようになった。 初めての相手とは今でも付き合いがある。 頼りになるスマートな考えを持った、まぎれもない”お姉さん”だ。 公式で、婚約発表をされては、この縁も終わらせなくてはならない。 惜しいことしたな・・とスザクはもったいなく感じた。 友達に渡された新聞はとりあえず、顔を見ないように文章のみを読んだ。 やる事が派手すぎるのだ。 そもそも日本は、ブリタニア・EU・中華連邦の三大勢力が入り混じる世界の中で、 唯一中立を図っていた国だ。 本来なら、この皇女と日本の総理大臣の息子の婚約は隠密に事を進めるべきでは? これでは他の中華連邦とEUの敵に回ると、全世界に発表している事と同じなのだ。 これでは単身でやってきる皇女の身も危険なのでは? 「・・・まぁ・・いいか。」 俺には関係ない。 「どうしたんだ?スザク。」 「いや、これじゃ日本はブリタニアと手を結ぶ形なんだなって・・。」 「あーなるほどな。」 スザクは父親から身にしみて、世界の情勢を聞くことが多い。 聞きたくなくても耳に入ってしまうのだ。 単身でくる皇女にはとてもつらいだろう。 人事のようにスザクは、これからくる皇女のことを考えていた。 アリエスの離宮はここ頻繁に多くの使者が来る。 みなルルーシュの婚約の祝い品を持ってくるのだ。 厄介者のルルーシュを追い出すことに成功して、みんな機嫌がいい。 最後ぐらいにと、お祝いの品ぐらい豪勢にしてやろうじゃないかと貴族たちは考えていた。 もうすぐブリタニアともお別れなのに、今になって贈り物をされても正直困る。 むしろこれはイヤガラセなのか? ルルーシュは眉をへの字に形を変える。 「ルルーシュ殿下。こちらを」 離宮の執事が何か報告書を持ってきた。 兄弟姉妹たちが、”枢木”のことについて調べているのだ。 なにかあったら、必ず自分たちと、他の皇族たちに連絡する義務となっていた。 ここまでみはらわてて可愛そうに・・・とルルーシュは書類を受け取った。 スザクは武道全般をたしなんでいて、中でも剣道と柔道が得意分野らしい。 今回の報告は、今年の夏のインターハイというもので、優勝したと書かれてあった。 日本の武術の服なのか? 見たこのない服をきて、仲間と笑ってるスザクの顔があった。 優勝した瞬間の写真なのだろう。 これで自分と同じ年なのか・・・ やはり日本人は若く見えるのだな。とルルーシュは余計な事考えていた。 ほかに、女性関係の事についかかれてあった。 シュナイゼルとクロヴィス、コーネリアはコレを読んで相当機嫌が悪いらしい。 他のものたちは恐ろしくて近づけないという。 「私は別に・・・もうこういう事しないほうが・。」 「ですが、ルルーシュ様。これはシュナイゼル殿下の命令であって・・」 正直言って、こんな他人のプライバシーを覗くなんてことしたくない。 兄たちが自分を可愛がってくれている事なんて、わかっている。 無論、日本もルルーシュの事は調べてはあるだろう。 しかし、皇族だけに、むやみに奥までは調べられない。 大抵は公式のプロフィールや、外交の時に関係者から聞く話だけだろう。 ハッキリ言ってフェアじゃない。 妹の夫となる相手はどんな男なのか、知っておきたいという気持ちもわかる。 「兄上からは私が言っておく。それに、もう秋だ。もういいよ。」 庭では落ち葉の海ができていた。 マリアンヌの好みで出来た、自然な美しさが映える庭。 人工的に薔薇の花だけを一面に植えるだけの庭とは、だいぶ違うが、綺麗に手入れをされ美しさを誇れる庭だ。 そろそろ落ち葉を片付けなさせないとな。と執事はルルーシュに一礼をして部屋を出て行った。 もうここを出る荷物は出来ているのだ。 部屋にはものがほとんどない。 残ってしまうものは、もったいないからブリタニアの市民に譲り渡した。 マリアンヌもよくしていた事だ。 譲り受けた市民は嬉しそうに、品を抱いて家へ帰る。 秋の終わりは早い。 あっという間にもうすぐ冬だ。 ルルーシュの18歳の誕生日が近づいているのだ。 「・・・大丈夫。普通にしてればいい。怖くない。日本で大人しくしてれば・・・。」 大人しく従っていればいいだろう。 日本の家庭は女が男のいう事を聞くと言うのが普通らしい。 昔よりはゆるくなったというが、名家や梨園の家ではそれは強く残っているときう。 ”枢木家”も相当な日本の古来から、由緒正しい血筋が流れる一族だと聞いた。 「・・・亭主関白といったか・・・ただ黙っていう事をきいてればいいだけだ。」 そう、何も考える必要はないのだ。 そう考えれば少しは楽だと思った。 ルルーシュはベッドのシーツに転がり込んで、昼間なのに薄暗い部屋にこもった。 殺風景な部屋が時々怖く感じる。 それが寂しいという事を知らずに・・・・・・・・・・ |
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