この恋を君に捧ぐ  4







「スザク!この荷物をあの部屋において!」


「わかってるって!」




11月末日。
先にルルーシュの荷物が、枢木家に届いた。


女の子の荷物の割には少ない。
最低限のものと+αみたいなごくシンプルな荷物だ。
旅行にいくなら、ベストな量かもしれないけど、これからずっと暮らしていくには少なすぎないか?



スザクは、大きな荷物を母親にいわれたとおりに、ルルーシュの部屋になる予定の部屋に運んだ。



ルルーシュの部屋となる所はスザクのところと結構離れている。
正式に婚姻をするまでは、触れるなとと父親の主張が聞こえるようだ。
ルルーシュの部屋となる所はそれほど狭くない。

いや、むしろ広いほうだろう。
ブリタニアの所とは比べられれば、狭い部類に入るだろうが、ここだって一応広い。


なんたってスザクの部屋より広いのだから。
スザクの家族は、スザクを入れて3人と、屋敷の働いている人たちだ。
母親は決して体が悪いだけではないが、子供はスザク一人だ。
女の子も欲しかったのだろう。
さっきから嬉しそうに、ルルーシュの荷物の整理をしていた。

「あんな綺麗な子が娘になるなんて夢みたいね〜。」


母親はずいぶんとルルーシュのことを気にってるみたいだった。
会った事も無い相手に何故そこまでデレデレになるのか、スザクにはわからない。

この世界情勢の中で、スザクの母親が一番呑気だ。
ニヤけている母親を見てスザクはため息をついた。

たかが美姫の婚約の一つや二つで、大げさである。




「・・・本当に来るんだな・・。皇女様。」


スザクは大荷物を運び終わると、一目で母親をデレデレにさせた”ルルーシュ”を見ようかと思ったが、結局やめた。

何度見よかと、写真をめくろうかとしかが、気がすすまなった。
会ってからのお楽しみという感覚も好きだが、ゲームではなく婚約なのだから本当は見ておいたほうがいい。

そう思っても、見ようとしないのはきっと心のどこかで、この婚約を納得していないのだろう。
初めて話を聞いたときは、勝手に決められて怒りを覚えた。

家柄事情で致し方ないが、よりにもよってブリタニアの皇女。




「・・・アホらしい。」



スザクは写真を丸めてゴミ箱に捨てた。



























「シュナイゼル殿下・・・陛下が頼みごとがあるとの事ですが・・・」
「父上が?」
「はい・・・何でも・・・至急らくして・・・。」

シュナイゼルは眉をひそめた。
総督としてエリアを統治する身で、これか新しくエリアに向かおうとしている時だった。
こんな時に、厄介だなと上手くかわせないかとシュナイゼルは思った。



「悪いが、私はこれからエリア13のほうに行かなくてはならない。しかし、父上からの呼び出しとは、そんなに重要な事なのか?」

「いいえ・・・誰にでも出来ることなので強制はしないと・・・」
「だったら、コーネリアやクロヴィスにでも頼んでおけ。」
「かしこまりました。」






しかし、その後コーネリアもクロヴィスも話の内容を聞かないで断った。
突発的な皇帝陛下の依頼は、厄介な事が多い。
それを子供たちは知っているのだ。

大抵はみんな断る。そしてそのとばっちりは、一番上の皇子にかえってくるのだ。
結果的、第一皇子が引き受けることとなった。
いつも貧乏くじを引くこの皇子は、今回はとんでもなくラッキーくじを引き、他の弟、妹に恨まれることを知らずに・・・















ルルーシュは手荷物だけを持っている。
玉座へと行き、最期の別れの挨拶をする。
以下、貴族と異母兄弟姉妹も無論同席していた。


簡単な挨拶で終わり、ルルーシュはブリタニアの皇族の地を出て行く。
皇帝はさすがに皇女だけでは失礼に、値すると、皇帝の代わりに保護者役として第一皇子の同行を命令した。
それに納得がいかないのは、もちろん3人だ。
何故そんなに力も無い皇子が、皇帝の代理としていく事になるのかと

我こそがふさわしいと主張をし始めた。


しかし、これはもう決定してる。
皇帝は”頼みごと”を断ったではないか。受けてくれたのはこの者だけだと、反論を切り捨てた。
皇帝の依頼は、皇帝陛下の代わりにルルーシュと一緒に日本へ挨拶にいく事だったのだ。

そう、多シュナイゼル達はあの時、断らなければよかったとひどく後悔した。

ルルーシュは過保護すぎる兄や、姉よりかは、一番年上のこの皇子でよかったと安心していた。
この皇子はルルーシュの事をもちろん可愛がっているが、度を過ぎない心地よい可愛がり方だった。




飛行機にのり、窓から生まれ育った故郷を見下ろした。
壮大に広がるこの地から、分かれる。

また春になれば、兄弟姉妹たちは、ルルーシュの式に出席するためあえるが、
この土地には行けないだろう。



”いつでも戻っておいで”
”なにかあったら必ず連絡するんだぞ。”

兄達の顔つきは凄みを増していて、ルルーシュを怯えさせるには十分だった。
ルルーシュは、とりあえず力なく”はい”とだけ呟いてきた。


横で貴族達の冷やかしが聞こえたが、知らぬフリを徹底した。









ブリタニアから日本までは12〜13時間かかる。
「ルルーシュ、日本へついたらいろいろ挨拶がある。今のうちにゆっくり休んでおいで。」
「はい・・。」

VIP席にゆっくり腰掛けているルルーシュは、しばらくの間眠ることにした。























「もうすぐお着きになる。」
「わかってますって・・。」

スザクとゲンブは都内の高級ホテルのスイートルームでルルーシュの到着を待っていた。
成田には使いのものが、こちらへ案内するようになっている。
はじめから、純和風な場所よりも、一度こっちに慣れさせたほうがいいだろうとホテルを選んだ。

なまじスザクよりも、ゲンブの方が緊張している。
さっきから立ち上がったり、座ったり、・・・。


「父さん。落ち着いて。」
「いや・・・すまん。」

ノックの音が入って、二人とも立ち上がった。

「失礼します。ブリタニア帝国皇帝陛下代理第1皇子様、第3皇女、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア様をお連れに参りました。」



扉から入ってきた一組の男女。

男は、今回皇帝の代理できた、第1皇子。
そして、横にいる娘こそ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア本人。



スザクは息をのんだ。
ぶっちゃけ本当に、親に渡された写真や、新聞の写真さえ見ていないのだ。

目の前に立つ皇女は、日本人でも持っているのは難しい艶やか黒髪。
目鼻立ちの通った顔つきで、スザクを見据えていた。



スザクはなんとも居た堪れない感覚に陥った。
























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