この恋を君に捧ぐ  7




「とうとうこの日が来てしまったか・・。」

挙式当日。

スザクは白のスーツを着て、ルルーシュの準備を待っていた。
一度見ているからワンクッションダメージが減る。
あの時のルルーシュの姿を見て正直、お手伝いの人がいなかったら、どうしていたか分からない程動揺した。


「父さん緊張しすぎだよ。」

「さっき第二皇女、コーネリア殿下とその妹姫のユーフェミア殿下に挨拶してきたが
 ・・・ブリタニア皇族の器量には驚かされる。」


「・・・そういえば皇帝陛下いらっしゃらないんだよな。誰がバージンロード歩くの?」


スザクは大まかな段取りは把握しているが、自分の事だけで誰がどう行動するかは知らない。
本当はこういうのはいけないのだけれど、挙式自体に興味がないから。
世界共通、結婚式は女性にとっては何度もしたいもの。男性にとっては二度とやりたくないものだ。

「お前な・・・段取りをちゃんと見てないのか?」
「俺のところは初めのところと、指輪交換と誓いのキスだけじゃん。」

「・・・はぁ、本当は第二皇子シュナイゼル殿下の予定だったが、この前いらした第一皇子殿下だよ。」
「え?」
「他のエリアのテロ撲滅に、シュナイゼル殿下の新鋭技術部が新しい兵器の実験に行かれることになったみたいだ。」
「へぇ・・・恐ろしいね。」

核兵器の実験だ。
スザクはブリタニアと戦争にならなくてよかったと今更ながら思った。
それにあの綺麗な皇女様も自分のものになるのだから、ハッキリ言ってしまえばブリタニア万歳だ。






そろそろ時間ですと、スタッフに呼ばれてスザクとゲンブは控え室をでた。
普通ならここで一度、新郎新婦顔合わせをして何か、甘い言葉の一つや二つ出てくるはずなのだが・・・

「スザク様、ルルーシュ様は後から来ます。」


他の皇族たちは、ルルーシュの花嫁姿をギリギリまで見せたくないらしい。
そんな悪あがきも今のうちなのに。
どうせスザクのモノになってしまうのだから、今更そんなことをしても・・・。
前に一度ルルーシュのドレス姿を見た。
今日はこの間とは比べ物にならない位着飾れてるだろう。

想像しすると目に浮かぶルルーシュは、顔をソワソワさせて縮こまっているのが目に浮かぶ。




一礼して、チャペルの手前へと歩いていく。
途中で、ルルーシュの異母兄弟姉妹からの殺気らしき視線を感じるが無視を決め込んだ。
さすがに本番になるとスザクも緊張してきた。
扉が開くと、全員が花嫁の姿に注目する。
薄いベールに包まれているが、その姿は花の如く。
美麗という言葉でも、ルルーシュを表す言葉が見つからない程の艶やかさだった。

ゆっくりとバージンロードを歩いてくる姿に、スザクは固まっている。
本当にこんな人が自分の妻でいいのか?と一瞬思ってしまうほど。

第一皇子から、ルルーシュの手を渡されて、二人で祭壇に立つ。



緊張していて、スザクは事の流れをよく覚えていなかった。
ただ誓いのキスをするとき、ルルーシュの頭から飾られているベールを取ったとき、
聖域に触れるようか感覚に陥ったのは、よく覚えてる。
そしてこの人をこれから、己が自分色に染め上げる。なんて気分がいいのだろう。


二人の初キスは結婚式なんて、今時居ないのでは?
なんて心なしか思い、それでもとりあえずは父の言いつけを面倒ながらも守ってよかったと思った。
何度かは迫ろうとして、ことごとく邪魔されたが今思えばそれでよかったと思ったほどだ。
それほどルルーシュは綺麗だったのだ。


真っ白で穢れを知らない。


神式の挙式でも同じ感想を抱く。
黒髪で色白なだけに着物も似合っていた。
枢木家の挙式は代々神式で行われるので、こちらも行う。

異母妹のユーフェミアが”私も着物を着てみたい”と言い出し、
スザクの母はユーフェミアに似合いそうな色を見立てて、選び着付けてやる。

「お姉さまとお揃い。」

なんて可愛いことて言ってくるのもだから、緊張していたルルーシュも少し顔が緩んだ。
ユーフェミアは着ている着物が気に入ったのか、自分の土産にして自国に持って帰ることにした。
最近では日本人でも着物を着る人は少ない。

それだったらいっぱい着て貰えるユーフェミアに上げた方がいいと思い、
スザクの母親は言葉二つで、了解した。
スザクの母曰く
「ルルーシュさんが娘になるんだもの、妹のユフィちゃんも私の娘よね。」
と、だいぶ楽観的な考え方をしていた。

本当に息子ではなく娘が欲しかったんだなと、スザクは心なしか”俺は一体・・”と思ってしまう。






挙式が終わってからが、本当に慌しかった。
ゲンブを初めとくるる家の親族も、すぐに議事堂だ。やれ仕事だと去ってしまう。
ブリタニアの皇族たちも然り。

途中でもいいから出席をしたかったシュナイゼルは結局、来ることは出来ず。
コーネリアはすぐにまた公務があると、ユーフェミアも姉についていく。




枢木家のゲンブ以外の一部の親族たちはそのまま残り、本家で宴を行った。
これも恒例であり、正面にスザクとルルーシュも座っている。
ルルーシュは初めての事でずっと表情が硬かった。

前では親族たちは普通に酒や、料理を楽しんでいる。
その光景は田舎の結婚式のようだ。
親族たちが新郎新婦に酒を勧めたらなおのことだが、二人が未成年のため気を使われたのかそんな事はなかった。

スザクも出された料理を食べている。
横に居る、ルルーシュの様子を見ると食べ物に一口も手をつけていない。
本格的な日本の会席膳だから口に合わないのは当たり前だ。

「ルルーシュ・・・。朝少ししか食べてないんだから、一口でも食べて?多分しばらくはここに缶詰めだよ。」
「え・・・そ・・・そう。」

ルルーシュは視線を泳がせていた。
別に食べたくないわけではないらしい。

それに普段の食事も時々ルルーシュに合わせて洋風にすることもあるが基本は和食だ。
ルルーシュは食わず嫌いをする事なく食べている。
”おいしい”と言っていた。でも何故食べない?
スザクは頭の中に?マークが飛んだ。

普段の食事をスザクは振り返ってみた。
別に・・普通に食べているが・・・・

「あの・・その・・スザク、こういったところには・・・」

小声でルルーシュは呟く。
ルルーシュから話しかけてきたのは、初めてだからちょっと嬉しい。

「・・・・フォーク置いていたり・・・する?」
「あ!」

思い出した。ルルーシュはまだ箸がうまく使えない。
決して使えなくはないが、改まった席では使うのが恥ずかしいのだろう。
スザクはフォークを持ってくるように頼んだ。

ルルーシュはフォークをもらうと料理を食べ始まる。
周りの者は酒が入り、心なしか部屋の雰囲気が賑やかだった。
フォークを渡されたルルーシュは、ゆっくりと食べ始める。
その様子を見てスザクは少し安心して、さっき世話になっている桐原から
堅いこと言わないで飲めともらった杯一杯の日本酒を飲み干した。













大分時間が過ぎた。
残ってる親族たちは酒が回りテンションが高い。

スザクはルルーシュを連れて宴の間の部屋から出て行った。

「ルルーシュ、疲れてでしょ?着替えてきていいよ。」
「・・ありがとう。」

スザクの歩くペースが早い。
ルルーシュはついていくのに必死だった。

スザクの後ろ姿を少し怖いと感じた、腕を掴まれている強さがそれを物語っている。

「着替え終わったら、俺の部屋に来て。」


その言葉の意味はルルーシュも理解している。

なんとか頷いて部屋に入った。
部屋の中に、一枚の浴衣がおいてある。
これを着ろというのだろうか?

そもそも着方なんてわからない。
すると丁度一人の女性が入ってきた。
「失礼します。ルルーシュ様、着替えを仰せつかっていますのでそのまま立ったままでお願いします

ルルーシュは着物から動きやすい浴衣に着替えさせられる。

「この浴衣、スザク様が選んだものなんですよ。よくお似合いです。」



藤色を地に朝顔の柄だった。
朝顔は一色にこだわらず、桃色や、濃い青をきかせた大人っぽいデザインである。
季節にはまだ早いが浴衣自体季節は夏だ。
夏らしい柄が普通なのである。

帯は簡単な結び方だった。
寝るだけなので、丁寧な結び方はしないだろう。出かけるわけじゃないのだから。

着替えが終わると、お手伝いの女性は部屋を出て行った。
”お気をつけて”と一言言われ、急に恥ずかしくなる。

夜は暗い。
王宮も暗かったが、ここは気味が悪かった。
風でサワザワと柱が揺れる音がしたり、第一廊下が寒い。
湿気の多い国だから、風通しがいい家造りだがまだ春を迎えたばかりの夜は冷える。

ルルーシュはスザクの部屋の前まで来た。
戸一枚の向こう側がしんと静かだ。
眠っているんだろうか?
いや、そんなはずはないだろう。
この部屋に呼んだのはスザクだ。
何度も迫られそうになったことはある。
しかしスザクは、律儀にゲンブの言うことをなんとか最後まで従っていた。

それが今日で終わる。

「・・・ルルーシュです。」

ノックをすると、スザクは”どうぞ”といって開けてくれた。
スザクも浴衣を着ていた。
ここの家はみんな浴衣で寝るのだろうか?

「ホラ、早く入って。廊下は寒いでしょ。」
「あ・・」

グイっと腕を引っ張られてスザクの腕の中に入る。
ここまで近いとさすがに、ルルーシュは震える。

「・・・ルルーシュ、震えてる?可愛い・・・。」

ふと横を見れば、ダブルサイズの布団が敷いてある。
疎いルルーシュでもこれからのことはわかる。

スザクはルルーシュを布団の方へ座らせた。
もちろん自分の腕の中にいさせるのは忘れない。

後ろから抱きしめる形になる。
スッポリとおさまる体に、いい匂いに惑わされる。

ルルーシュは一言もしゃべらないで、縮こまっていた。
両手で体を抱きしめて身を守っている。

「ルルーシュ、いい加減観念しなよ。もう俺たち夫婦なんだから。」
「・・ヒ・・!」

唇が首に吸い付いた。

肩を上げて必死に抵抗しているが、まるで意味がない。

「力ぬいて、悪いようにはしないよ。君がおとなしくしていたらね。」

スザクはルルーシュの浴衣を帯を解いた。
























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