この恋を君に捧ぐ   9




何度もやめてと言った。
何度も嫌と言った。

それでもスザクは行為を止める事は無かった。


本気で泣いて、やっと抗う事が出来、逃げようとした時にはもうつかまった。
それから、スザクの手つきは大分荒々しくなった。


怖かったのだ。
ルルーシュはただ怖かったのだ。
大人しくしてればいいと、言い聞かせても普通は怖い。
初めても女の子を気遣う余裕は、手馴れているスザクにはあるハズなのだが
性格が災いしてか、そんなことはひとかけらも無かった。

狂気に満ちた目は余計ルルーシュを混乱させるのに拍車をかける。



「うう・・か・・ぁぁ」


ルルーシュの声はもう大分掠れている。
もう抵抗する力なんて、ありはしない。
スザクの思い通りの格好をさせられて、揺さぶられて、指さえ動かす気力はない。


「ひ・・・うう・・。」

「ルルーシュ・・・何度もして、大分なれた?」


耐えるだけの行為に、気持ちよさなんてない。
スザクはまだ苦痛に歪む、ルルーシュの顔を見て暫くは無理かなと独り言をぼやいた。


「あ・・・。」



声にならない叫びだった。
実際は、喉がもう枯れて声が出てこなくなったのだ。



「あれ・・・ルルーシュ・・。」



ルルーシュは気を失っていた。
無理もない。
なれない体で、何度も求められ乱暴に扱われれば、誰だって根を上げる。


「・・・ルルーシュ・・。」



スザクはルルーシュを抱き起こして、浴室に向かった。
枢木の家の浴室は男女で別れてるが、こんな深夜に入る人なんていないだろう。
スザクは女風呂に入ると、ルルーシュの体を洗い始めた。

自分のつけた痕がハッキリと見える。
白い肌には赤が良く映えて見える。

「ちょっと・・やりすぎちゃったかな・・。」





「スザク様?!」
「え?」


入り口に、使用人がいた。
といってもその使用人を束ねる女将のような存在の人だ。
スザクは昔から、この人には頭があがらない。
古い言い方をすれば、この女性はスザクの乳母だった。


「何をしていらっしゃるのです!」
「なにって・・ルルーシュの体洗ってるんだけど・・。」
「そんなに力を入れてはいけません!私がやります!まだこれから入る者もおります!出て行ってくださいまし!」
「分かったよ・・。」

シブシブと、スザクは浴場から出て行く。

「あ、そうだ。着替えは俺持ってきてるから、それ着せてね。」
「かしこまりました。」

ピシャンと乱暴に戸を閉めると、自分の部屋に戻る。


「さてと・・これ、俺がやるの?」

自分で散らかした部屋。
一応避妊はしたものの、どっと疲れが出てきた。
いままでは相手の部屋だったり、ホテルだったから楽だったから片付けることが無かったんだ。

汚れたシーツは適用に洗濯機の中に入れておけば、誰かがやってくれるし
明日布団を取り替えてと言っておこうとスザクは思った。






「スザク様。ルルーシュ様の湯浴み終わりました。」
「分かった。今行く。」


新しい布団を敷きなおして、スザクは女将こと椿の後についていく。

「あの浴衣はスザク様の見立てですか?」
「そうだけど・・・」
「良くお似合いです。」
「・・ありがとう。」


「その素直さをどうして、ルルーシュ殿下に使わないのです?」

「え?」



椿は控え室を開けると、紫地に、撫子の柄の浴衣を纏ったルルーシュがいた。

「ありがとう。椿さん。」
「・・・・ご無理をなさらないでくださいね。」
「・・・努力するよ。」

スザクはルルーシュを抱えると、自分の部屋へ運ぶ。

「それと、このことはゲンブ様にも言っておきますからね!」
「え!そりゃないよ!!」


女性を気遣えない殿方には、きつくしかってもらいます!と仁王立でスザクを圧倒した。


トホホというように方を落として、スザクはルルーシュを新しい布団に寝かせた。
顔色を見ると青白い。

「はは・・無理させすぎってか・・。」

はぁとスザクはため息を落とすと、部屋の電気を消してスザクも眠りについた。













翌朝、

朝の早い時間からゲンブの怒鳴り声と、何かを叩く音が枢木邸に響き渡った。


その原因は椿のみぞ知る。

















ルルーシュの体をそよ風が優しく包んだ。
季節は春になったばっかりだから、少し肌寒い。

でもおかしい、室内にいたはずなのに、どうして風の気配を感じるのだろうか?
目を開けたいが、瞼が思い。
体を動かそうとすれば、鉛のようで動かない。

時期に動けるようになるだろうと、ルルーシュはそのまま体を何かに預けていた。


頬に何かが触れた。


その感触でルルーシュは目が覚めてしまった。


「あ、おはようルルーシュ。」


「え・・・。」



目がさせるとスザクがいる。
当たり前かと、ルルーシュは思ったが何かが違う。
何故自分は縁側にいるのだ?



「ルルーシュ、ホラあっち、桜が咲いてるよ。」


頬に触れた物を確かめた。
それはスザクの言う、桜の花びらだった。


ルルーシュはスザクに抱きかかえられて、縁側にいる。
ルルーシュはどうしてこういった状況なのかよく分からず、とりあえず桜を見ることにした。


「桜・・・知ってるぞ。日本の花といわれてるだろ。」
「そうだよ。綺麗でしょ。」


「あぁ・・・そうだな。」



薄紅色が満開に幹を包む姿と、風に乗ってヒラヒラと散る姿。
日本人はこれを見て美しいと思うのだろう。
いや、日本人ならず、ルルーシュも綺麗と思った。

こんな雰囲気をまとう人がルルーシュの中にいる。
色までそっくりだ。


「ルルーシュ、どうしたの?」

昨日の夜の態度とは打って変わって、スザクの態度は優しかった。
それに・・・

「俺の顔になにかついてる?」

「あぁ・・・ついてるぞ。」


左頬にリッパな赤い痣が。
スザクにこんな事を出来るのは、父親のゲンブぐらいだろう。



「桜・・・気に入った。」
「あぁ、ユーフェミアに似ているな。」

「・・?それってルルーシュの妹の?」
「そっくりだろ?」


スザクは式であった、ユーフェミアを思い出す。
あぁ、確かに髪の毛の色や、可愛い雰囲気からしてハマッテいるな。


「そうだね。でも、俺はルルーシュの方が似合ってるよ。」

「は?」



「儚く散るその姿は、ルルーシュそっくり。」





だって初めて会ったとき、綺麗過ぎて壊れそうだったから。



「私は、綺麗ではない。」


ブリタニアの陰謀に身を汚し、桜とは大違いだとルルーシュは思った。


「そんな事無いよ。まったく君は、ま、いいけどね。そろそろ戻ろうか。」
「え。・・・わ!」


スザクは立ち上がると、自動的にルルーシュの体も宙に浮く。

「暫くは咲いてるから、いつでもみなよ。ここの縁側は桜が一番綺麗に見える。」




それは初めてスザクが見せてくれた、ルルーシュへの心遣いだったのかも知れない。














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