この恋を君に捧ぐ   10






「つ・・・はぁ・・・」


スザクの部屋はここ頻繁に、夜になると女の艶がかった声がする。
無論その声の主は、ルルーシュという事はみんな分かっている。

夜な夜な聞こえる、無残な悲鳴に屋敷の者達はなんとかならないかと途方にくれていた。
これではルルーシュの体が心配である。

やっと契りを交わせて、少しは落ち着くかと思いきや、日に日にエスカレートしているのは目に見えている。

初夜の一件で、ゲンブに殴られてスザクは懲りたかと思いきや、ききめは無かった。
毎日ではないが、か細い悲鳴は聞こえる。
使用人たちは、ルルーシュが心配でいてもたってもいられないのだ。

父親のゲンブにまた活を入れてもらおうと提案するが、
ゲンブは今、ブリタニアへ首脳会談。
とはいっても、殆どが、結婚生活云々のバカ親暴露大会に違いない。
ブリタニア皇帝は分からないが、ゲンブはこうなる事は予想がつく。
ましてや、”うちの息子が申し訳ない!!”などと頭を下げなければいいのだが・・・
椿は、ため息をついた。
サクラダイトの生産状況や、軍事のことなんて二の次のような気がしてならない。


ブリタニア皇帝も一応は、人の子だ。
一応は娘が、他国へ嫁いだのだから、心配ぐらいしてるだろう。

特に姉君と上から1番目から3番目の兄達もだ。
この4人にしれたら、大変なことになるだろう。

一度婚儀で、第二皇子以外は面識があるから尚の事怖い。
特に、姉上といっていた、第二皇女コーネリア様。

(あの方にはなんとしてでも隠し通してくださいね。旦那様。)












「〜〜・・・!!!!・・・ぁぁぁぁぁ!!」


「あぁ・・ルルーシュ様・・・御労しいや・・。」


椿は自室に戻りはじめる。
もうそろそろスザクがルルーシュを頼むとこっちへ来る時間だ。

スザクは後始末は、自分の事は自分でやるが、ルルーシュのことは椿に任せていた。
一応スザクなりに気を使っているのだ。
気絶したあとでも、体を好き勝手されるよりかは、
ちゃんとした人に丁寧に体を清めてくれる人がいいに決まっている。



その夜もスザクはルルーシュを抱き上げて、椿の所へルルーシュを任せた。








「んん・・・。」

「ルルーシュ様、気付かれましたか?」

「はっ!!」


ルルーシュは目が覚めると、ガバっと起き上がり体を隠し辺りを見回す。
まだスザクとの情事の感覚が抜け気っていないのだろう。
まったく坊ちゃんはどこまで、怯えさせれば気が済むのか、
その前に、ルルーシュを落ち着かせるのが先だ。


「大丈夫ですよ。ここにはスザク様はおりません。」

「椿・・さん、そっか、また私・・。」

「いいえ、悪いのは全てスザク坊ちゃんですから、ルルーシュ様が気に病む必要はありません。」

「はぁ・・。」


椿はスザクのこととなると目の色が変わる。
それはコーネリアが、ユフィのこととなると顔色が変わるといったのと同じだ。

「気持ち悪いでしょう。お風呂はいりますか?」

「はい・・・そうさせていただきます。」


椿の部屋は、ルルーシュの第二の部屋でもある。
着替えが少量おいてあったりするのだ。
無論このような時の為に、準備は抜かりない。











「椿さんにはいつも迷惑かけてますね。」

「いいえ、むしろ迷惑なのはスザク坊ちゃんの方でございます。 
 こんどゲンブ様にキツク言っておくように言っておかないとダメですね。奥様じゃまるで歯が立たない。」


椿の仁王立ちの姿に、ルルーシュはクスクス笑った。

「ルルーシュ様、お笑いになったほうが綺麗ですよ。私、初めて見ましたけどその方がずっといいですよ。」

「え・・・」


「気付いてなかったのかい?ずっと笑ってなかったのよ。」


言われて初めて気がついたかも知れない。
そういえば、いう事を聞いていればいいやなんて投げやりな態度で感情を殺していた。
スザクの仕打ちに、時々困ったり泣いたり、怖い思いはしたが楽しい気持ちにはなったことがなかった。

「まったく、枢木家の男どもは!!」





















「笑ってない・・・私・・・。そう笑ってなかった。」


ちゃんぷんと檜の風呂に浸かる。

ルルーシュはこの檜の匂いがいつの間にか気にっていた。
優しい木の香りが心地よい。

ブリタニアの母の庭であった、アリエスの離宮も自然を基準とした野原のようなつくりと通じるものがある。

母が死んで、妹もいなくなって、そういえば最後に笑ったのはいつだったか?
付き合いの作り笑いを入れれば、つい最近になるかとおもうがさっきみたいに自然と笑えたのはもう何年も前のように思えた。

ルルーシュは満足するまで湯船に浸かり終えると、着替えて自分の部屋に戻っていった。
スザクは先に布団の中で、寝息をたてていた。

























パタパタと廊下を走る音が聞こえた。
外の騒がしさに、ルルーシュは目を覚ます。

襖を開けると椿が、辺りを見回していた。

「おはようございます。椿さん。」

「ルルーシュ様!スザク坊ちゃん見かけませんでした?」

「??・・・起きたらもういない・・」

「全く!!自分の持ち物くらい、ちゃんと管理して頂戴!!」

「どうかしたんですか?」

椿は、男物であろう長財布を見せた。
ああ、ルルーシュ事の事情を瞬時に理解した。

「スザクのですか?」

「そうです。」

「忘れていったのですね。」

「そのようです。」

「・・・・。」

「全くいい気味です!日ごろの行いが悪いからです!」

「・・・ふ・・・。」


椿といると、なんか楽しいイ。
ルルーシュはまた笑みがこぼれた。
それにつられて、椿も笑い出した。


「ルルーシュ様、大分なれましたね。初めは本当に綺麗な人形のようでした。」

「えぇ・・私もその様に振舞おうとしてました。」

「スザク坊ちゃんにも?」


「スザクは・・・何を考えているのか分かりません。私を見る目は・・・怖いです。」

「そうかい・・!」

(可愛そうに、やる事全てがルルーシュ殿下には裏目にでてるのかい。)








椿はスザクの財布をしまう。


「一日だったらなんとかなるだろう。スザク坊ちゃんにだって貸してくれる友達はいるだろうしね。」

「はぁ・・・。」

「それとも・・・。」



椿はルルーシュをじっと見る。
なんな嫌な予感をルルーシュは感じ取った。
もしかして、まさか・・・


「ルルーシュ様・・」

「はい・・」

ああ、この流れは、ルルーシュの最悪の展開が待っているに違いない。
いや、無理だ絶対無理だ。
自分は顔が割れている。一体どうしろと!!


「スザクぼっちゃの大学まで行ってみますか?」

「・・・・やっぱり。」

「殿下は本当に、頭の回転が速くて助かります。」

「・・・・・。」


ルルーシュは最初渋ったが、結果的には椿に圧倒され行くハメになる。











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