この恋を君に捧ぐ  11





帽子を深く被り、一目を気にする。
結局、ルルーシュは椿の強引な押しにより、スザクの大学まで行くハメになってしまった。


ちょっと前まで、ルルーシュは日本とブリタニア両国とも騒がれた皇女なのだ。
こうして一人で出かけるなんて自殺行為である。


”変装すれば大丈夫ですよ。日本人は結構気付かないんですよ”

そんな有名人は身近に居るはずなんかない。
という意識が強い日本人。
そう簡単に他人には気付かないのであると椿は言っていた。


瞳の色を変えるぐらいで大丈夫といわれたが、慎重なルルーシュは一応帽子で髪の毛を隠して深く被った。


街中や駅を歩いても、コレといって視線は感じなかった。
本当に椿の言うとおりだなと思った

コレがブリアニアなら、少しは違ったか?
いや、ルルーシュは身分の低い皇女だ。
他の華やかな兄弟たちとは知名度は違うから、やっぱりこそまで心配する必要はないのだろうか?

良く考えると、さっきからキョキョロとしている自分こそ不審に思われているような気がしてきた。
ルルーシュは下を向いて早く歩いた。















スザクの大学は家から大体1時間半かかる距離にあった。
自宅から通えて、ソコソコのレベルのところを選んだのだろう。
確か推薦で入ったとか聞いている。



「ここか・・。」


綺麗な校舎が立ち並ぶ。
思ったよりレベルの高い学校みたいだ。


入り口には警備員が居なく、自由に入れるようになっていた。
少々危ないのでは?


ここは大学だから、子供がいる小学校などより安心だが、平和ボケをしているな。
ルルーシュが普通に歩いていても、ここの学生とも見れてしまう。





「・・・・しまった。どこのクラスなのか分からない。」



仕方なく、ルルーシュは事務室に足を運ぶ。
大丈夫だ。
財布を拾ったから、クラスを聞くだけだ。

なんなら放送で呼び出してあげようか?と親切な事務員さんの言葉をルルーシュは断った。
せっかくだから、校舎をもっとみて回りたいし、普段スザクがどんな生活をしているのか少し気になった。


あのスザクが普段どうやって学生生活を送っているのか気になった。
やっぱり数人の友達を引き連れて威張っているのか?
ワガママ放題でクラスの中心にいるんどあろうか?

そんなスザクしかルルーシュは見たことが無いから、そんな態度しか思い浮かばなかった。



















「スザク!学食いかねぇ?」

「そうだね。おなか空いたし・・。あ!」


「どうした?スザク?」


スザクは鞄の中を見ると、財布が入ってないことに気付いた。
家に忘れてきたのだろうか?
今日はまだお金を使っていない。

家から学校までは鞄は定期が入っているポケットのところしか開けていない。
と、いう事は



「財布・・家に忘れてきた。」

「マジ?災難だな。」

「ね、なんか奢れよ。」

「うわ!それが人に頼む台詞かよ。」

「ゴメンゴメン。奢って下さい。お願いします。」

「よかろう!」




















「あ、ココだ。」


ルルーシュは事務員に書いてもらったメモを頼りに、教室に向かった。
入り口からちょっと中を覗くと、スザクらしき人物は見当たらなかった。


どうしようか、ここでスザクが戻ってくるのを待つのもイヤだ。
といっても、このクラスの中スザクと仲のいい人なんてルルーシュは知らない。
いっそ誰かに頼んだほうがいいのでは?
しかし、それじゃもしかしたら他人に渡して、中身を盗まれたら・・・
いや、そんな事する人今時・・・


「どうしたの?入らないの?」

「え?」



見上げると、男子が一人立っていた。


「ずっとそこに居ると邪魔になるよ?」

「あ、すまない。」


ルルーシュはドアの外に出て廊下にたった。


「誰か呼ぶの?」

「・・・枢木さんに会いたかったのだが、いないようだな。」

「あいつ確か、さっき友達と学食行くって行ってたな30分ぐらいで、戻るよ。」

「そうか・・。」



はやりスザクは席をはずしていた。
30分ここで時間を潰すのは、少々キツイな。

校内だから今は帽子を脱いでいる。
さっきから周りの視線が刺さるように居たいのだ。

勘のいいヤツはとっくに、気付いているだろう。
今目の前で話しているこのスザクのクラスメイトも、分かっているかも知れない。

瞳の色ではなくて、もっとちゃんと変装してくればよかった。


「しっかし、君もスザク狙い?結婚してもモテモテだな〜アイツ。」

「はぁ?」


この男、どうやらルルーシュに全く気付いていない。

「君みたいな、綺麗な子もあいつの毒牙にかかっちゃうのか〜。
 でも、最近スザクは結婚した皇女さまに夢中らしいけど、どうだかね?君もそう思わない?」

「私は・・よわからない。これを拾ったから届けに来ただけだ。戻ったら渡してくれるか?」


よかった本当に気付かれていない。
気分を良くしたルルーシュは、普通に学生と装ってスザクのクラスメイトに財布を渡した。


「あぁ!スザクの財布か。ありがとう、もどったら渡しておくよ。」

「頼むな。」

「で、君どこのクラス?この学年じゃ見たことないから・・・もしかして、年上?」

「あ・・いや、私は部外者だ!」


これ以上つつかれたらマズイ!
ルルーシュはクラスメイトの質問を無視して、慌てて走り去ってしまった。



「・・・綺麗だ・・・。今度スザクに紹介してもらおう・・。絶対知り合いだ。」






「はぁ・・はぁ・・・。」


ちょっと走っただけでルルーシュは息が上がった。


「全く、類は友を呼ぶ。スザクの友達は皆あぁなのか?」

正門をでて、物陰に隠れて息を整えた。


また、帽子を深く被り一定の速さで歩き始めた。






(今度であるときは、もっとバレなさそうにしよう。)


とうか、暫くは外を出ないほうがいいだろう。
























「あ〜食った食った。」

「スザクー!お前おごられる身でありながら、遠慮ないな!!」

「腹が減っては戦は出来ぬだよ!」

「ちゃんと返せよ。」

「わかって、明日ちゃんと返すよ。」




「ホレ、スザク!」


「あ、俺の財布!」


席に着いたら、クラスメイトがスザクの財布を差し出した。
でも何故スザクの財布を、この男が持っているのか?


「何で・・・」

「女の子が届けに着たんだよ。すっげぇ美人の!」

「マジ?どんなコ?」


美人という言葉に、スザクの友達は反応した。
スザクは興味なさそうに、キチント財布の中身を確認した。

「ちょっとスザク、中身なんて抜き取ったりしないって。」

「念には念をね。」

「で?で?どんな子?」


「そうそう、肌が白くてさ〜綺麗な黒髪でねサラサラのストレートだったな。あと、背が結構たかったよ170くらいかな?
 美女って言葉が似合うような子でー・・ああいうのをお姫様っていうのか?」

「!!」


「スザク?どうした?」


「いや・・・」



一瞬スザクの頭の中に、ルルーシュの存在がよぎったが、もし本当にルルーシュなら騒ぎになっているハズだ。
変装しても、生まれ持った高貴な振る舞いは隠せない。
ここの大学の人たちは、一度はルルーシュの顔を写真やテレビで見ているはずだ。

人違いだろう。
それに、ルルーシュがこんなところへくるハズなんかない。
しかし、スザクの予想はハズれた。


「スザク〜紹介してくれよ〜。パッと見さ、あのルルーシュ殿下っていったけ?良く似てたんだよね〜。」


ガタン

スザクは机を叩いた。
何かマズイことでも言ったのだろうか?クラスメイトは顔を青くした。


「アイツ・・・きてたのか・・ココに。」

「え・・」

「おい、似てるんじゃなくて本人だよそれ・・。」

「え?だって、殿下って瞳の色紫だろ?あの子、日本人の黒い瞳だったし、日本語普通に・・」


「変装してたんだよ!それに、ルルーシュはこっちに来る前から、日本語の勉強してたから、日本語はペラペラなんだ!」


「「嘘!!」」


まさか、皇女本人がこっちにくるなんて思っても無かったから、似ている人だと思ったのだろう。
100人100人は、そのクラスメイトと同じ反応を取るだろう。
簡単に、有名人は他人の意識に入らない。


「チ・・・なんで、会ってくれなかったんだよ。」





昼休みが終わりを告げる予鈴が鳴った。



















BACK          NEXT