この恋を君に捧ぐ 13 リムジンは都内の一等地へと道をすすめる。 「うん、枢木邸はまずまずなところにあるな。ここはなかなか自然もある。」 シュナイゼルは車の中から、外の景色を眺めた。 「殿下、もうすぐ枢木低に着きます。」 「分かった。」 シュナイゼルは可愛い妹の事を思い出した。 一番可愛がっていた妹が、突然異国の者と結婚が決まって以来、ゆっくりと話が出来ていない。 「楽しみだよ、ルルーシュ。そして、枢木スザク・・・・。」 「は〜!!」 テニスコートから離れて、ベンチに座った。 真夏のテニスは汗がすごい。 スザクは大学のサークルに一応は所属している。 スポーツ一種目に限られることなく、幅広いスポーツを楽しむサークルだった。 アウトドアでいろいろなものを楽しみたいスザクにとってはいいサークルだと思う。 たまにの活動しかないが、忙しいスザクにはそれがありがたい。 今日はテニスだった。 テニスサークルがコートを使わない日だったので、今日はそうなった。 1プレイ終えて、ベンチに座る。 やっぱり運動は楽しい。 「お疲れ。」 「やぁ、カレン。」 カレンはブリタニアと日本人とのハーフだった。 もともとは日本人の母親と日本で暮らしていたが、途中で父親と一緒にブリタニアの本国に行ってしまったみたいだ。 また日本に戻ってきたのは高校生の時だ。 スザクの通っていた高校に留学生として訪れた。 カレンはどちらかといえば日本にいるほうが好きらしく、高校を卒業をしても日本に住み着いている。 純粋な日本人より、根っからの大和魂を持つ彼女は男女問わず人気がある。 「今日は暑いわね。」 「夏だからね。」 「でも、この湿気のある暑さいいわ・・。」 「カレンらしいね。」 二人はベンチに座り、水分補給をした。 コートは埋まっていて、他のサークルメンバーが、テニスを楽しんでいる。 「そういえば、随分と皇女様に夢中だって聞いたけど?」 「でも、なかなか落ちてくれなくてね。」 「そんなに好きなんだ。」 「うん、とても・・・。」 「でも、その様子じゃ上手くいってないみたいね。」 「じゃぁ、慰めてくれる?」 スザクはカレンの肩を掴んだ。 この二人、高校生の頃付き合ったことがある。 高校生活の中では一番付き合いの長かった相手だったと思う。 さばさばしているカレン。 こうやって活発なところは、今でも変わっていない。 しかし、カレンはスザク手をはたく。 「冗談じゃないわ。」 カレンは立ち上がった。 どうやらプレイを終えた組がいたようで、そのまま対戦相手へとコートへ入っていった。 「俺だって嫌だ。」 ルルーシュ以外の女のにはもう、興味がない。 こんなに惚れてるのに、上手くいかないのはどうして? 「ルルーシュ殿下、お客様ですよ。」 「私にか?」 ルルーシュは畳の部屋で花を生けていた。」 最近教えてもらったこの生け花が、気にいているようだった。 ルルーシュの部屋は頻繁に作品が変わっている。 「あら、今日も素敵ですね。」 「椿さんに言ってもらえると嬉しい。でも・・私に客なんて、いないはず・・。」 「ルルーシュ様も知っている方ですよ。」 「?」 玄関まで案内されると、ルルーシュが良く知っている人物が経っていた。 「久しぶりだね。ルルーシュ。」 「シュナイゼル兄上?!」 ルルーシュはシュナイゼルの姿を見たとたん、周りの目を気にしないで抱きついた。 シュナイゼルは倒れないように、ルルーシュをしっかりと支える。 「元気だったかい?」 「はい・・。」 ルルーシュは笑っていた。 初めて見せる年齢相応な可愛い笑顔に椿は驚いた。 ルルーシュにも、こんな顔は出来るのだ。 心を完全に許していない相手には、決して見せない表情だ。 まだ日本に来てからは見れていない。 まだまだルルーシュは、完全に心を開いてくれていないのねと椿は残念に思った。 「でも、兄上。どうしてこちらへ?」 「挙式は出席できなかったからね。兄上に話を聞いたけど心配でな。」 シュナイゼルはどうしても仕事の都合で、スザクとルルーシュの式に出席できなったのだ。 ヴァージンロードを一緒に歩くのは、もともとシュナイゼルの予定だったが、 急遽、一番上の兄、オデュッセンスに変更になってしまったのだ。 「花嫁姿は、写真で見せてもらったよ。とても綺麗だった。」 君の夫となる男を殺したいくらいにね。 嘘か本当なのか、シュナイゼルは笑顔で怖いことを言った。 きっと本気だろう。 怖い笑顔で放つ言葉は、シュナイゼルが本気な証拠だ。 「殿下、玄関じゃなんですから、どうぞお部屋へ・・・。」 「そうだね、上がらせてもらうよ。あぁ、君たちはどうしようか・・・?」 シュナイゼルの護衛についてきたSP達。 とりあえず、こえからどうするか決めるので、車に残ってもらった。 シュナイゼルはルルーシュの部屋に入る。 ルルーシュの部屋のみ、洋風の造りに変えていて、シュナイゼルも居心地がいい。 でも、家の中は履物を脱がなくてはいけないので、そこだけは違和感があったが・・・ 「コーネリアとユフィから手紙を預かっているんだ。」 「お姉さまとユフィが?」 「あぁ・・」 白い封筒を受け取った。 とても厚い。 ルルーシュは、封筒を開けて何枚となる手紙に目を通した。 コーネリアとユフィの心遣いに感動するルルーシュ。 一人異国の地に離れたルルーシュにも、こうして会ってくれるシュナイゼルに、連絡をよこしてくれる コーネリアや、ユーフェミア。 あぁ。今回は、クロヴィス兄上も入っている。 そういえば、ウェディング姿のルルーシュを絵にと、クロヴィスは煩かったと思い出した。 「只今・・・。」 「あら、スザクさんお帰りなさい。」 「はぁ・・お腹すいた。そういえばお客様来てるの?」 今日はゲンブから、そんなことは聞いていない。 客がくるなら予め言ってくるのに、アポなし訪問だったのだろうか? 「えぇ・・・ルルーシュ様がとても喜んでおられて、私も驚きました。」 「え・・・」 ドタバタと、煩い足音を鳴らしてスザクは走り出した。 「あぁ・・スザク様、そんなに音を立てて走っては・・・」 スザクの足は速く、もう遠くへ行ってしまった。 またこれは一波乱あるなと、椿は大きなため息をついた。 「シュナイゼル殿下・・・しばらくここに居座る気満々だものね。」 先が思いやられる。 「ルルーシュ!!!」 襖を力いっぱい開けた。 「おや?」 「あ・・スザク。お帰りなさい。」 そこには顔の赤いルルーシュと、胡散臭そうに笑うシュナイゼルの姿・・・。 「え・・・第二皇子・・・シュナイゼル殿下?」 「ほう、ちゃんと私の顔を知っているようだな。」 関心関心と、第一条件はクリアだ。 何が条件だと、スザクは文句を言いたかったが、シュナイゼルはルルーシュの保護者みたいなものだ。 迂闊な態度は取れない。 「申し訳ございません。今日いらっしゃるとお聞きしてないものでしたから。」 「いいんだよ。私が枢木首相に、黙っていてくれと言ったのだから。」 わざとかよこの野郎。と飛ばすような笑顔で、スザクはそうですかと頷いた。 「兄上、今日夜はどうされるのですか?」 スザクが帰ってきたという事は、もう夜になる。 「あぁ・・その事なんだけどね、暫くここにいさせてもらおうと思うんだけど・・・・。」 「え?!」 「兄上?」 護衛たちを説得させるのが、難しいかなとシュナイゼルは笑った。 ルルーシュ一緒に説得させるの手伝ってくれないか? と、シュナイゼルは頼んだ。 ルルーシュは、頼りにされるのが嬉しくて、すぐに頷いた。 顔を真っ赤にして、口角が上がっている可愛い笑顔。 「枢木首相からは許可を貰っているのでね、後はSPたちだけなんだ。」 本当に事前に根回し済みで、スキを与えないシュナイゼルの行動に、 スザクはナワナワと怒りを覚える。 (フザケンナこの野郎!!) しかし、立場的に客に当たるシュナイゼルにぞんざいな態度をとることも出来なく、 スザクは作り笑いで、シュナイゼルに接した。 「そうだ、枢木スザク君。」 「なんでしょうか?」 「急に決まった事だから仕方ないけど、私は君のことはまだ認めていたいからね。」 要するに品定めですか? 認めてもらう前で帰らないつもりでしょうか? 人知れず視線で火花が散る。 そんな二人の様子をルルーシュは、何してるのだと不思議がっていたが、 椿はあまりにも面白くて、笑いを堪えていた。 |
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