孤島の華 7 カブトと桜が関係を持ちはじめてから概に3ヶ月が経とうとしていた。 あれから毎夜のようにカブトは桜の部屋にやってきて桜を抱く。 桜は抵抗しているが何の意味もなかった。 コレでは花伝にいた時とおんなじだ。 桜は少し悲しく笑った。 「桜様・・最近顔色が優れないですね。」 「多由也・・・」 カブトとの関係は多由也は知っているのであろうか? 多由也もカブトには逆らえないから、何もいえないのだろう。 「疲れているなら休まれてはいかがですか?」 「ううん大丈夫。」 「あんまり無理をなさらないで下さいね。大蛇丸様も心配されてますよ。」 「ありがとう。多由也。」 大蛇丸・・・・ 自分の継母は、カブトとの関係を知っているとカブトは言っていた。 しかし、それなら何か言ってきてもいいはず。 でも大蛇丸は桜の体なんぞに興味を持たないだろう。 もう自分の体は汚れてしまって元には戻せない。 花伝にいた時はまだ太夫としての誇りがあった。 でも、今はそんなものはない。 カブトに振り回される毎日だ。 きっと今日も彼は私の部屋へやってくるだろう。 そして、私をみるみる悦楽の世界へ引きずりこむ。 もう・・考えるのはやめよう。 そうやってカブトの思惑通りにはなりたくない。 「大蛇丸様・・お茶をお持ちしました。」 「あら、多由也ありがとう。」 午後になると大蛇丸は必ず粋に入りのメーカーのお茶を飲む。 西洋でいうアフターヌーンティーだ。 「桜様最近元気がないようですね。」 「そうねぇ・・・カブトのオイタが過ぎてるわね。」 「え・・・・」 大蛇丸は、窓へ目をやり庭にいた桜を見た。 「・・・多由也・・・お願いがあるんだけどいいかしら?」 「なんでしょう?大蛇丸様。」 「ちょっと火の国まで行ってきて欲しいの。頼みたいものがあるのよ。」 「はい。」 「桜も連れて行って欲しいのよ。」 「と・・言うことは桜様もですか?」 「そうよ・・・。」 大蛇丸は不気味な笑みを浮かべた。 「大蛇丸様・・・。」 「あら、多由也ごめんなさい。桜を呼んで来てくれる?」 「はい・・・」 多由也は庭にいた桜を急いで大蛇丸の部屋に行くように呼びに行った。 「桜様!!」 桜は庭の花畑で花を摘んでいた。 「あら、多由也見て。綺麗に咲いてるわ・・。」 「そうですね・・。・・大蛇丸様が来て欲しいとのことで・・・」 「お母様が?すぐ行くわ。」 桜は摘んだ花を綺麗に束ねて、自分の部屋の花瓶にさし多由也と大蛇丸の部屋へ行く。 ドアをノックしてあけた。 「お母様失礼します。」 「ごきげんよう。桜、突然なんだけど頼みがあるのよ。」 「え・・・?」 「一週間後にね。火の国行かなくては行けないんだけど、私は都合が悪くていけないの。」 火の国はここの地方の中で一番の栄えた国だった。 木の葉花伝がある花町と目と鼻の先。 「定期的にね。まぁ・・・こういう資産家達との馴れ合いみたいなものがあるのよ。」 「はぁ・・」 話しが大きくて桜は不安になってきた。 「そこで、私の代わりに桜に行って欲しいのよ。本当は私も行って、桜を紹介したかったのだけど無理そうだから。」 「そうですか。」 「大丈夫よ。多由也も行くようにしているから。護衛にね。」 花伝にいる時、そういうお偉い方の接客をしたことがある。 なにかとすぐお金を使い込んで、何でもしようとする人たちだった。 桜はあんなところに行くのは少々不安がある。 「お前の考えていることはわかるわ。だから私もあそこへはあまり行きたくない。」 「お母様・・・。」 「でも、あそこは良く私のように子供もいる奴らもいる。令嬢や子息がね。 お前はずっと此処へ来て多由也ぐらいしかいなかったらいい機会だと思ったのよ。」 金持ちの世界。社交を避けては通れない。 「それでドレスを用意しておいたんだけど、手直しのために一回着て貰えるかしら?」 「はい。」 桜は大蛇丸の用意したドレスを身に包んだ。 色は桜色の髪の毛に似合う綺麗な薄い桃色のドレス。 ノースリーブだが露出は控えめな綺麗なシルエットになるドレスだった。 「うん・・・素敵ね。楽しみだわ。」 「いえ・・・ありがとうございます。お母様・・。」 当日を向かえ、桜は多由也と馬車で火の国へと出発した。 日帰りは難しいので、少しの間は自由に羽を伸ばしてきていいと言ってくれた。 「それではいってらっしゃい。」 「桜様は火の国へ行かれるのは、初めてですか?」 「え・・・あそこは私の両親と一緒に暮らしていたところなの。」 「・・え・・すみません。」 「イイのよ。もう、遠い昔のことなんだから・・・・。」 幼少時代 両親が死ぬ前はそこで暮らしていた。 母譲りの桃色の髪の毛でお母さんにそっくりねっていわれたこともある。 優しかった両親はもういない。 「何年ぶりかな〜。あそこに行くのは・・・」 「桜様・・・・・。」 「多由也は社交界が終わったら、行きたいところとかある?」 「私は・・・時々大蛇丸様のお供で何度か行きましたが・・・やはり茶通りでしょうか・・・」 「ホントに?私もあそこは良く連れてってもらってたの。一緒に行きましょうよ!」 「そうですね。」 多由也が一緒でよかった。 きっと一人だったら、不安でおかしくなるところだったよ。 馬車に連れられてたどり着いたのは綺麗な大きな屋敷みたいなところ。 多由也によればここは、定期的に人が集まり宴を開いているそうだ。 豪華な造りのドアを開けると受付の人がいた。 「名前をお願いいたします。」 「・・大蛇丸の代理人、春野桜です。」 「同じく付き人の多由也です。」 「お話しは聞いております。ゆっくりしていってください。」 道を通され入ったのは奥深い部屋、天上にはキラキラと光る大きな飾り物。 圧倒的な豪華なつくりに桜は心臓が跳ね上がった。 「桜様。普通にしていれば良いですよ。」 「ありがとう多由也。」 桜の緊張は多由也にも伝わっていた。 大蛇丸は自分からあまり挨拶に行かないそうだ。 桜もそっちの方がいいだろう。 しかし、桜の妖艶なる容姿は、人々の視線をさす。 「はて?お目にしたのは初めてだ。ドコのお嬢様でしょうか?」 壁際に立っていた桜に一人の30代くらいの男が立っていた。 多由也がいない・・・ でも、ここで何かやったら継母に迷惑がかかる。 「私は・・・大蛇丸の代理人で参りました春野桜と申します。」 落ち着いて、挨拶をする。 「あぁ〜!大蛇丸の奴、ひとり養女にしたって子がいたと聞いていたが君だったのか。」 男は桜のことを少し知っているようだ。 その声大きかったため、近くにいた者の耳にも入った。 「へ〜噂に聞いていたあの子が養女か〜」 「綺麗な子ね〜。」 「桜様、すみません。飲み物を取りに行こうとして、他の奴らに捕まってしまって!!」 「いいのよ多由也。でも・・困ったな・・私のこと皆見てる。」 あたりを見回すと皆が皆桜と多由也を見ている。 「あら?あれっていつも大蛇丸といる多由也でしょ?」 「ってことは本物なのね。」 ヒソヒソと噂は聞こえる。 「桜様、堂々としていれば良いです。しっかりしてください。」 「うん・・」 「・・・・でも確か大蛇丸の引き取った女の子って、あの木の葉花伝の花魁だったんだろ?」 「・・・・・・」 一人の男が突然言い出した一言。 それが場の雰囲気を違う方向へ持っていった。 視線は、興味から一気にいやな目つきにかわっていった。 上流階級には受けつけられないのは事実だ。 ひそひそと転がるあられもない噂がたつ。 「なんでも花伝の一番の女郎だったそうだ。」 「まやかしの桜ですな。」 「体売ってたんでしょ?汚らわしい!」 会場を一気に負の発展してしまった。 「桜様。大丈夫でしょ。ここは他人を蹴落として他人をあざ笑う最低野郎達の集まりですから。」 「いいたいこと言うなよ多由也!この口悪女が!!」 このままでは悪化しそうだ。 「・・そこでなにをしている!」 さっと一人の青年が口出しをした。 皆その青年を見てしんと静まり返る。 20代半ばの長髪の黒髪青年。 彼はそこにいた全員を曇りない瞳でにらみつける。 「コレは一体どういうことだ?ここは他人を否定するところではない。もしそれがお望みならお引取り願いたい。」 「ですが・・うちは様・・・この大蛇丸の・・」 「・・言いがかりは結構だ!そもそも戸籍法をおふれに出したはずだ。そもそもあんな法が間違っている。 今後このようなことがあった場合。関係者は今後一切此処へ来るのを禁止する。」 青年の瞳のいろが見る見るうちに黒から赤へとかわわっていく。 それを見た人は一瞬怯えていた。 黒髪の青年うちはといわれた青年は桜の元へ行き詫びを入れた。 「すみません。お話しは聞いております。桜嬢この失態私の責任です。」 「・・・ふん。貴様なんかに謝られたってlここにいる全員じゃなきゃ意味がねえよ!」 「多由也!・・いいのよ私・・実際あそこに売られて、そうしていたのは事実ですから。」 「そうか、それなら良かった。」 うちはと呼ばれる青年はにっこり柔らかい笑顔を桜に向けた。 「失礼。遅れました。私はうちはイタチと申します。この会場の主催をしております。不具合があれば何なりと・・すぐ改善させます。」 「いいえ・・私は春野桜。言われたとおり大蛇丸の養女です。」 「存じ上げております。」 イタチは桜の手の甲に軽くキスをした。 「では皆、この件については一切の口出しは無用だ。」 イタチはさっさと人ごみの中へ消えてしまった。 「うちは・・イタチ・・・」 「イタチ様は火の国の大名の第一ご子息様でいらっしゃいますよ。」 多由也はイヤミな顔を浮かべた。 「へ〜。多由也あの人と親しいのね。」 「年が近いもので・・確かイタチ様の弟様が桜様と年が一緒だった気がするんですけど・・。 「へぇ・・・・・」 「兄貴お帰り。大丈夫だったか?」 「ふん、あそこにいる奴らは腐っている者ばっかりだ。」 「その割にはなんか嬉しそうだな。兄貴。」 「あぁ・・」 イタチは弟からもらったお酒を少し飲んでご機嫌な口調でいった。 「あの腐ったところにも凛と咲いてる綺麗な華を見つけたのだ。」 「?・・・・・?訳わかんねぇ・・」 |
BACK NEXT |