孤島の華 8 堅苦しい社交界を終えて、桜と多由也は約束通り茶通りへ着ていた。 どっと疲れが出たのか、お店に入り甘いものを食べることにした。 サクラは小さい頃から、白玉あんみつが好きだったのでここでも頼むことにした。 多由也は、いろんな種類のようかんを会わせたものを頼んだ。 「多由也、あれってどのくらいの周期でやるの?」 「・・・う〜ん・・確か一ヶ月おきだった気がしますが・・・。」 「そうなんだ・・・。」 「今日は桜様一人でしたが、次はきっと大蛇丸様だけか一緒ですよ。」 「そうね・・・」 さっきの社交界で、一人自分をかばってくれた人を思い出した。 名をうちはイタチといったか・・・ 「多由也、うちはイタチさんはどうしてこんなの開いているのかな?」 「・・・金持ち同士の隔たりをなくすためだとか聞いてます。 それでイタチさんが会うことによってその辺の状況を探ったりするのではないでしょか?」 「ふうん・・・。」 「まぁ、こういう場は跡取りの紹介や、自慢や交流にはうってつけですからなくなるのは無理な話ですよ。桜様。」 「はいはい・・わかってるわよぉ〜。」 二人はのんきに会話などをして、女だけの楽しみに夢中になっていた。 暫くすると、店のほうがガヤガヤと騒ぎ始めた。 何事かと思って、騒いでいるほうを見たらうちはイタチがいた。 「・・・あいつ・・ちゃんとこういったところも気にかけているからな。人気者だよ。」 「そうなの。じゃぁあの人が大名になったらきっと火の国はもっといい国になるわね。」 他人事のように桜は大好きなあんみつをほおばっていた。 次第にざわめきが大きくなってきた。 耳障りだな。 桜は多由也に早く帰ろうと言い出そうとしたときだった。 「こんにちは、また会いましたね。」 イタチがいた。 「・・・!!」 「・・・あぁ・・・こんにちは。」 「・・・・また貴方に会えて光栄です。春野桜嬢。」 「いえ・・私こそ・・こんな時にみっともない・・。」 「いえいえ・・そんなことは・・ここは、菓子を楽しむところ。当然ですよ。」 静かな笑顔が本当に綺麗な男性だと思う。 さっきは凛々しく今は優しく、桜の前にいた。 多由也は面白くない顔をして席を立った。 「私は、暫くしたら戻ってきます。桜様イタチ様はどうぞごゆっくり。」 「え・・・!多由也!!」 桜は多由也を呼び止めたが、多由也はそのまま行ってしまった。 イタチは多由也の座っていたところに座る。 「・・・邪魔をしてしまったようですね。」 「いえ・・そんなことは・・」 実際もっと話してみたかったのは事実だ。 多由也が行ってしまったのが計算外だった。 でも、二人になれたことに少し多由也に感謝をした。 「なにかお困りですか?」 イタチは鋭い男だった。 思っていることをズバリ指摘してくる。 「すみません・・いつも多由也がいたので・・・一人じゃ・・」 「そうでしたが、すみません。」 「いいんです・・・」 桜は少しモジモジして顔をうつむかせた。 何をしゃっべたらいいかわからない。 こういったかしこまったことには慣れていない。 「普通で良いですよ。ここはそういったところではないのだから。」 優しいな。 この男の第一印象はこれだった。 何か特別な強さの中にある優しさだった。 でも、それだけじゃとまどう。 さっきあったばかりで、相手は国の時期大名。 普通でいられるほうがおかしい。 イタチは先ほど座った時に店員からもらったお茶を飲み静かに座っている。 「・・・貴方は・・とても優しい人ね。」 「それほどでもない。」 「でも・・・」 「なんでしょう?」 「とても悲しい瞳をしている。」 桜は人の感情にとても敏感だ。 花伝に入ってから人の心を読むというようなことをしてきた。 客に金を出させるように。 最高の女を演じきる。 そこではいろんな男を見てきた。 イタチはとても特殊なように見える。 よく強がっている人は見るがそんな類のものではない。 人の上にたつ立場として、いろいろあるのだろう。 不思議な感覚だ。 イタチと少し話をしたあと、イタチがこれから用事があると暫くしてから別れた。 「どうでした?桜様?」 「・・・多由也・・いきなりいなくならないでよ。」 「すみません・・・つい・・」 軽く多由也に文句をいうと、多由也は少しからかうようにぷっと笑い出した。 今日は宿をとって休むことにした。 甘いものを食べて、軽くおしゃべりをして宿へ行く。 あと2〜3日ぐらいはいても平気だと、大蛇丸から言われている。 羽を伸ばしてきなさいと・・ また花伝へいこうか。 もう何ヶ月もあっていない。 皆元気だろうか? 「桜様、やはり花伝へは行きますよね?」 「ええ・・いいかしら?」 「もちろんですよ。明日にでも行きますか?」 「そうね。ゴメンね多由也。」 「かまいませんよ。桜様のお友達も会ってみたいですから。」 「そう・・よかった。」 少し歩いて予約をしていた宿に着いた。 「もういいぞ。」 少し離れたところに豪勢な馬車が止まっていた。 その中にはイタチがいる。 「イタチ様・・随分とあの娘がおきに召してるんですね。」 イタチは窓から見える桜を眺めていた。 「今までの中でも一番だな・・。」 「まいったまいった。そんなことしたら、許婚のテマリ様が悲しまれますよ?」 「お前はわかっててそんな事言うな。あれと私はお互いそんな事思ってもない。」 「はい、存じ上げております。だから、各御両親様は困ってるのです。」 「私は妻は自分の愛した女しか娶らん。」 「ほう・・・するとあの娘ですか?綺麗ではありますが・・平民では?」 「あの人は大蛇丸の娘だ。」 「へぇ・・あの不気味な男にあんな綺麗なお嬢さんが・・」 馬車を引くものが桜をものめずらしそうに見る。 後ろにいるイタチもそれは同じ。 「そろそろ帰ろう。あまり遅いと父上がまた煩い。」 「はい、かしこまりましたイタチ様。」 従者は馬を動かし、ゆっくり大名の屋敷へと向かった。 「・・・・・桜様・・・そろそろお眠りになられてはいかがですか?」 月の綺麗な夜だった。 桜は眠れなく夜風に当たっていた。 どうやら多由也を起こしてしまったみたいだった。 「ゴメンね多由也、もうねるわ。それにもう寒いし・・・。」 今日のことを思い出していた。 うちはイタチ 変な確信だったけど、また彼と会うと思う。 社交界とかじゃなくで・・・・・そんなことじゃなくて別の意味で そんな予感がした。 次の日は、桜と多由也は木の葉花伝へ行った。 またいの達に会いいろいろとしゃべることができた。 綱手も自来也、シズネみんな元気そうだった。 桜、多由也、いの、ヒナタ、テンテンで一日楽しく過ごせた。 昨日社交界に行ってきたことを皆に話したら、皆目が輝いていた。 きっと、皇太子に会ったからだろう。 特にいのはその次男坊うちはサスケのファンらしい。 桜はサスケには会うことができなかったので、よくわからなかった。 いのは見たことがあるらしく、”とってもかっこいい”らしい あのイタチの弟なのだからわかる気もする。 一つ変わったことは皆に好きな人ができていたこと・・・ 暴露話になって盛り上がった。 ヒナタは顔に出てるのですぐ皆わかっていたらしい。 いのも何気にその人への態度が違うらしく、 テンテンはもう少しで借金が返せそうで、その人と暮らすらしい。 名前を聞いたら、日向ネジといった。 桜はその人を知っていた。 その人は日向分家ではあるが有名な家柄だ。 そのネジと言う人は、きっと日向なのなかで一番優秀だと聞いている。 宗家とは違い分家はそこまで厳しい規律もないから大丈夫だろう。 それにもう自分達も大人だ。 売られた頃の子供とは違う。 桜はテンテンが羨ましく思った。 いや、きっとここにいる全員がそうだろう。 きっとみんなも大丈夫だろう。 じゃぁ・・私はどうなるのかな? ふとそんなことを思った。 夕方はいのたちは仕事に戻るので、桜たちも引き上げることにした。 もう一日宿に泊まり、明日には帰るつもりだ。 火の国への滞在は短かったがとても楽しかった。 みんなにも会えて嬉しかった。 でもきっと一番嬉しかったのは・・・きっと あの人に会ったことなんだろう。 桜はそう思った。 |
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