孤島の華   12





「こんばんは桜様。」
「・・・・・・。」

「恐ろしくて声も出ませんか?」


怖いに決まっている。

中にはもう気が狂っていて変なうめき声を上げる少女や、手足がない者もいるのだから・・・


「やっと桜様はここへ着てくれましたね。」
「だって貴方、ここへは来てはいけないと・・」
「そう、そう初め忠告したのは僕だ。」
「だから私は来なかった。」

「最後の最後で貴方はここへ来ましたね。」

「一体ここで・・・・何を・・・」
「見てわからないですか?実験ですよ?」
「そんな・・」

見ればわかるが、誰だってこんなこと考えたくない。
人間が人間を使っていることなんて・・


「僕の家は医療に携わる仕事をしていましてね。医療の向上に犠牲はつきものだ。」
「ひどい・・・」
「これは知られていませんが、医療界では一般的なことだ。」

桜は数人の少女達を見たがどの子も悲惨な状態だ。
もう外の世界へは出れないだろう。


「僕は”ここへ来てはいけない”と言われたらいきたくなってしまうという心理をついて、
 ここへきた者を罰則として研究材料にしていたんだ。」
「なんてひどいことを・・」

「まぁ、それだけじゃない。ここはもともと君も知っている通り前主人の拷問部屋だ。危険だし好奇心ではいるには危ない。
 それの忠告でもあったのだけど、ここにいる馬鹿な女どもは好奇心にかられてノコノコ来てしまったわけだ。」
「・・・・」
「君も来ることを期待していたんだけどね。なかなかこないから諦めていたよ。ずいぶん聞き分けがよかったからね。」

今桜はここにいる。
変な声に触発されて立ち入り禁止の部屋へ来てしまった。
一週間後には結婚を控えている桜に・・・・・

それでもカブトは桜をこのまま捕まえて、実験材料にしようというのか?


「でも、僕のツキもやっと回ってきたみたいだね。」
「・・・」
桜は後ずさりをした。
カブトは桜を捕まえようとしている。

「桜様・・・残念ですけど、結婚を控えている貴方にはまことに申し訳ないがここを見てしまわれては・・・・」

「!!」

ドアを開けて出ようとしたが、力と素早さでは男のほうが上だ。
桜はすぐに捕まってしまった。


「・・・ぞくぞくするよ・・。君がどんな声で鳴くのか・・・悲鳴を聞くのが楽しみだね・・。」
















「カブト・・・・・およしなさい・・・」




「大蛇丸様・・・」



「桜がなかなか帰ってこなかったから心配になってきてみたのよ。よかったわ間に合って・・。」

大蛇丸は桜とカブトを放し、桜を自分の後ろへ隠した。



「カブト・・・お前今自分がなにをしようとしたかわかっているの?」
「わかっていますよ。」
「私が聞きたいのは、今桜にこんなことしたらここはどうなるか?ということを聞いているのよ?」
「・・・・・」
「大名との結婚を控えて、その花嫁は館の秘密を知ってしまって人体実験にされてしまいましたなんて馬鹿げた事出来るわけないでしょ?」
「・・・・・ですがここは機密部屋。」
「カブト・・・そんなことしたら私もお前もここのもの全員皆殺しになるわよ。よく考えなさい。」


大蛇丸は桜をつれてさっさとドアを閉め、帰っていった。
「桜・・あの部屋のことは忘れて頂戴ね。」
「はい・・・でもあの中にいる子達は・・・?」
「お前は今自分のことだけ考えてればいいの。それにあの娘達はもう正気には戻れないわね。」
「そんな・・・」


「優しい子ねお前は・・・さあもうお休み・・。私は娘(桜)を婚儀まで無事に婿殿に送り届けなければならないのよ。」

「はい・・おやすみなさい。お母様・・・」
「お休み桜・・・。」


桜はどっと疲れてしまいベットに入ったらすぐに寝てしまった。










「・・・・・聞きたかったな・・・桜様の悲痛な叫び声。きっと綺麗だったろうに・・・クク・・・」
カブトは残っている少女達の顔を一人つづ眺めてはほほをなでて、怖い笑みを浮かべた。


「さて・・・この研究ももうすぐなんだよね。そのためにも元気な人間がほしかったけど残念だ。」













その日から婚儀の暇ではカブトと顔をあわせることはなかった。
一日一日、ただ単調に平和に過ごしていた。




















「大蛇丸様、うちはの使者が参りました。」
「そう、じゃあ私達も出るわよ。」


結婚の朝、桜は花嫁衣装に身を包み自分部屋で多由也とおしゃべりをしていた。

「桜様がいなくなって寂しいです。」
「私もよ。多由也は私のお姉さんみたいな人だったからさみしいわ。」


うちはの者が迎えに来たと知らせを聞いた桜と多由也は馬車に乗り火の国へ向かう。


馬車の中は桜一人だ。
その後ろの馬車に、大蛇丸と多由也が乗っている。
どうやらカブトの姿は見えない。


馬車は大急ぎで、予定よりも早く火の国に着いた。
うちは邸の前に止まり、イタチが待っていた。


桜が馬車を降りるのをエスコートし、やっとと思ったのか待ちきれなくイタチは思わず抱きついた。

「あの・・・イタチさん・・・」
「・・あ、すまないもう嬉しくて。」


周りには笑いがこぼれた。


「素敵だよ。」
「ありがとう。」



その日、火の国はイタチと桜の婚儀で大賑わいだった。
新しい大名の誕生に民衆は祝福を送ったのだ。

誓いの儀式はうちはの古からの誓いを交わし、花嫁花婿を一目見ようと集まった人たちのために馬車を用意することになった。
国を一周した後、うちは低に戻り両家との親睦会がる。

「イタチさん、ちょっと待って。」
「・・・花伝か?」
察しのいいイタチは桜の望みがわかった。」

「いいとも。おい、木の葉花伝へよってくれるか?」
「はい・・」

近いからそんなに時間はかからない。


桜は花伝のみんなと挨拶を交わした。
紅とアンコは自分達より先に結婚して!なんていわれたが祝福してくれた。
無論いの達もだ。

イタチは自来也と綱手を知ってたため挨拶をしていた。

「素敵よ桜。幸せになりなさいよ〜!」
「ありがとう。」



花伝の者と挨拶が終わった後、馬車はゆっくりうちは邸へと向かった。
もう、屋敷にはイタチの両親と数人の親戚と、大蛇丸と多由也を含めた数人の従者が集まっていた。


夕方から盛り上がり、屋敷全体が二人の結婚を祝福していた。


桜は少し不安はあったが幸せだった。
その喜びが顔からもにじみ出ていてとても幸せそうだった。



「お〜い兄貴!!」

もうみんなお酒が回りベロンベロンに酔っていた。
サスケはあまり酒を飲んでいなかったみたいで平気なようだ。


「俺の新しい姉さん?!いや俺と同じ年だよね?」
「ええ・・はじめまして。」
「はじめまして。よろしくな。姑はぜんぜん気にしなくていいぜ母さんは本当に優しいから!」

「サスケ、俺は忙しいときもあるから何かあったら桜のことをよろしくな。」
「あぁ・・でもあんまり桜さんをほったらかしにするなよ。」
「当たり前だ!」

兄弟のやり取りに桜はくすくすと笑った。





親睦会もそろそろ終わるころ、イタチと桜は奥の部屋へと進んでいった。


「大丈夫だ桜。すべて俺に任せていればいい・・」
「はい・・・私・・・幸せです。」
「俺もだ・・。」






春野桜改め、

うちは桜

人生22年目にして生涯の伴侶イタチとともに生きる決意をする。











第一部 完









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