孤島の華  16





イタチと桜が目を覚ましたのはお昼より少し前だった。
初めに気がついたのは桜。


目を開ければ眠っているイタチがいる。
なんて綺麗な人なんだろう。とつい思ってしまう。


夕べのことを思い出して桜が深く潜り、顔まで隠した。
そのシーツの動きによって、イタチの意識が刺激された。

「桜・・・起きたのか?」
「あ・・・おはよう。イタチさん。」
「おはよう。昨晩は無理をさせてしまったな。大丈夫か?」
「え?あ、うん平気よ。」


少し恥ずかしかったけど、体の方は大丈夫そうだ。
ちゃんと動ける。
その日は午後から近くの村へ遊びに行った。
自慢の素材や名物物産など買い込んで、家族や花伝のみんなにとお土産を買う。


そしてまた1箔し、次の日木の葉へ帰っていった。


















あれからはまたイタチは忙しく、家にいる時間が少なくなった。


桜は時々イタチの仕事についていくことした。
妻として一国の大名の后としての義務もあるからだ。
しかし、桜は最近は体の具合が悪く、気分の優れない日々が続いた。

すぐに治るだろうと思って気にはしていなかったが、なかなか治らない。
イタチにソレを気づかれたのはそれからしばらくしてからだ。
一刻もはやく医者に見せるべきだと言って、うちはのかかりつけの医者を家へ呼び寄せた。


桜の病状の診断をした医者が言うのは思い当たる事があるので、しばらくしたら見に来るといった。

意味のわからないイタチやサスケは医者を愚弄したが、ただ一人ミコトはそれを制した。


「なんでだよ?母さ!」
「母上!!」

「いいのよ、これで・・・。私にも思い当たることがあるから。今じゃきっと調べてもわからないわ。」
「お義母さま・・・。」
「とにかくイタチ、今日から桜さんとは別々の部屋よ。」
「!!・・・わかりました。母上。」


イタチは納得がいかなかったが、母親のミコトに言われてしまったら何もいえない。


「大丈夫よイタチさん。あのね・・・きっとあとでイタチさん喜ぶわ。」
「?」

まだ桜の言っている意味がイタチとサスケには解らなかった。


















そして3週間後、桜の体にひとつの命が宿っている事が判明した。


国は御触れを出し、桜の懐妊を喜んだ。

フガクもミコトも初孫が出来喜びに浸っていたが、サスケだけは心から喜べることが出来なかった。



「・・・サスケ君元気ないね。」
「え・・?」


忙しいイタチの代わりにサスケが桜の護衛をしている。

「私が妊娠してからなんか変。私なんか変?」
「いや・・・そんなこと無い。」

サスケは桜がイタチの子供を身籠っているのが嫌なのだ。
そんなこと決して口には出来ないが・・・。

どうしてこう厄介な相手を好きになってしまったのだろうか?
言い聞かせてたはずだ。
桜はもうイタチのものだと・・・。


「サスケ君?」

桜が黙ったままのサスケの顔を覗き込んだ。


「あ・・・!なんでもない。あんな動きまわるな!危ない時期だろ。」
「あ・・・ごめん。」

安定時期に入れば部屋での缶詰な状態は終わるだろう。
医者は定期的にうちは邸に来ることになっていた。
家のものは桜のことを壊れやすいガラスのように扱っていた。
桜もそろそろそんな環境に飽きてきた。



「桜・・今帰った。」

「あ・・・お帰りなさいイタチさん!」


イタチの帰りに桜は抱きついた。


「おかえり兄貴。」

サスケはイタチが帰ってきたと同時に、イタチとすれ違う。

「サスケ・・すまないな。」
「別に・・・・。兄貴・・」
「なんだ?」


「あんまり桜をほったらかしにするなよ。」
「ああ・・解っている。」












「お帰りイタチさん。サスケ君と何話してたの?」
「いや・・・なんでもないよ。もっと早く帰ってこいといわれてしまってな・・。」
「もう、サスケ君たら!!」


桜は笑っていたが、イタチはサスケがあまりにも真剣な眼差しをしていたので笑うことが出来なかった。
サスケのあんな目をみるのは初めてだったからだ。
真剣は目を見ること自体は初めてではないのだが、何かが違った。


「さあ、桜もうお休み。もう遅い時間だ。無理をして俺を待っていなくてもいい。」
「そんな・・・ちゃんとイタチさんの顔を見て眠りたいわ。」

桜はイタチの手を自分の少し大きくなったお腹に当てた。

「桜?」

「生まれたら、しばらくはきっと一緒にはいられないけどこの子と待ってるわ。」
「あぁ・・丈夫な子をだから今日はもうお休み。桜。」
「ええ・・おやすみなさい。イタチさん。」


二人はお休みのキスをかわす。


まだドアでサスケが聞いていることも知らずに・・・。


二人の仲睦まじい姿を見てサスケは不愉快になり自分の部屋に戻った。










あれから月日はだいぶたち、十月十日を迎える。
臨月に入った桜のそばには常にメイドがいるようにしていた。
もういつ陣痛がおきてもおかしくは無いのだ。




「桜・・大丈夫か?」
「大丈夫よ。イタチさん、これから水の国の大名と打ち合わせでしょ?頑張ってね。」
「ああ・・・ありがとう。」


夫の見送りの最中陣痛は突然襲った。



「あ・・・うぅ!!」

「桜様!!」

横にいたメイドが桜の異変に反応し、すぐにミコトとフガクに知らせる。
「フガク様!ミコト様!桜様が!!!」


「陣痛ね!わかったわ。医者はすぐに来るようにお願いして!」
「わかりました。」

メイドは他の者にも知らせ、医者の手配をする。
桜は分娩室に運ばれていった。



「兄貴!どうすんだよ今日。」

騒ぎを聞きつけたサスケはイタチをせかしたが、イタチは会議に行くもようだ。


「な・・・兄貴!何考えてるんだよ!会議なんていつでも出来るだろ?!」
「わざわざ水の国の大名が時間を割いて、わざわざ近くまで来てくれている。」
「そんな!桜のそばにいてやれないのかよ!」
「行きたくても行けないのだ。お前と私は違う。」
「わかんねぇよ!おれだったら絶対桜を選ぶ!」

「サスケ・・・」


「兄貴・・行くなら、桜の顔見てからいけよ・・・。」


「無論、そのつもりだ。」



分娩室に運ばれた桜は息を乱し少々混乱気味だった。
どうやらまだ医師は見えていない。

ミコトと、乳母が桜の様子を見ている。


「桜さんしっかり」
「桜様、あの呼吸方法をするのですよ。」

「はぁ・・・ふー・・・・ひぃ・・・ん・・」


イタチは桜の手に握ってやった。


「桜・・頑張るんだぞ。」

「・・あ・・イタ・・・チ・・さ・・・んん!!」


全身に汗をかき不安な桜だったが、イタチの握る手がとても安心できた。


「すまない・・俺は・・いてやれない。頑張るんだぞ。」

「あ!!」


イタチは桜の手を放すと、すぐに家をでて馬車へ飛び移った。

「兄貴!待てよ!!」

そんなイタチをサスケは止めようとしたが、無理だった。
サスケは仕方なく、桜の事も心配だったのでドアのところつ事にした。
その後すぐに、医者が到着し本番の分娩に移った。



桜の初産はなかな終わらなく、既に何時間も時間がたっていた。


桜の体力の限界が心配されていた。
このまま続けば母体ともども生命の危機にある。
どうか無事に生まれてほしい。






おぎゃ・・・おぎゃぁぁ・・・



赤子の鳴き声が聞こえた。


「みんな!生まれたわよ。可愛い女の子よ!!」


すぐさまミコトはドアを開けて回りにいるみんなに呼びかけた。

「イタ・・・じゃなかった!サスケ!孫よ?!孫?!・・よかったわ!!」
「あぁ・・・・そうだね母さん。兄貴にも連絡してやらないと。」
「そうだわ!こうしちゃいられない。」


ミコトはすぐさまイタチと連絡を取り、難産だったが無事女の子が生まれた事を電報で送った。
イタチはしばらく水の国から、帰れないのだ。



「よぉ・・頑張ったな。」
「サスケ君!ありがとう。」

まだ起き上がれない桜はいっぱいの微笑で、サスケに元気なところを見せた。

「・・・ごめんナ。兄貴のヤツ・・。」
「大丈夫よ。・・・・・イタチさん早く帰ってこないかな。早くこの子を見せてあげたい。」
「そうだな。」
「ね、抱いてみる?」

「いいのか?」

「ええ・・。」


サスケは眠っている赤ん坊をそっと抱き上げた。
イタチと桜の血を引いた子。
どことなしか二人に似ている。

今は心から祝福できない。
喜べない。
この子供が桜と・・・・・・・・・・・・・・


「ありがとう。」
変な考えがよぎり、サスケはすぐに赤子を下ろした。


あくる朝、民衆はうちは低の周りを囲み、イタチと桜の第一子の誕生に国が祝福した。















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