孤島の華 17 桜とイタチの間に生まれた女の子は”紅葉”と名づけられ、皆に愛され育った。 髪は桜と同じ桃色の髪の毛で、目の色はイタチのように黒水晶のようだった。 将来どのように育つか楽しみと、周りの者は期待した。 「紅葉〜。」 「あ〜・・・。」 紅葉は病に侵されること無く元気に育った。 もう紅葉も2歳となる。 少しは言葉も覚えてきて、ある程度の会話なら可能だ。 イタチは忙しく殆ど桜がついている。 たまにイタチも紅葉のことをかまうが、紅葉からしてみればなかなか合えないイタチよりも、 なにかとかまってくれるサスケの方に”父親”というものを感じていた。 そんなことを桜はうすうす気づき始めていた。 「イタチさん、今度の休みはいつになるの?」 「なんだ?突然?」 普段桜はイタチの急がしさを気遣ってか、あまり休みを催促はしない。 しかし、今日は桜は真剣なようすだった。 今にもイタチが休んでほしいかのように。 「・・紅葉ね、さっきサスケ君のことをパパって言ってたのよ・・。」 「・・・。」 「私・・・それでもっと貴方と、紅葉が親子として触れ合う時間が増えれば・・。」 「ありがとう。桜。俺はその気持ちだけで十分だ。」 「でも・・・それじゃ貴方が!!」 「いいんだ。紅葉のことはサスケにも言ってある”頼む”と。」 「・・・」 そこまで言われてしまったら、桜は何もいえない。 「イタチさんの不器用・・。」 「あぁ・・そうだよ。」 二人はしばらく抱き合っていたが、奥の部屋で紅葉の鳴き声が聞こえた。 まだ夜泣きがなくならない。 そんな桜の顔は、クマが目立って少しやつれているように見えた。 「ごめん・・。紅葉が・・・」 「・・俺も行く。」 「イタチさんはすごい人ね。私は自分が産んだ子供が他の人にお母さんなんて言われるのいやよ。」 桜は泣いている紅葉を抱き上げてあやした。 「・・・俺もそうだ。でも、実際これが現実だ。本当はサスケにこんな役はさせたくないよ。」 イタチは小さな声でつぶやいたが、どうやら桜には聞こえたみたいだった。 「・・もう、それなら今日は3人で寝ましょう。紅葉もだいぶ落ち着いたわ。」 その日の夜は、紅葉をはさんで3人川の字で眠った。 「・・・桜、最近元気ないな。どうしたんだよ?」 「え?」 その日は特にやることも無く、紅葉も昼寝をしていてお気に入りの紅茶を庭で飲んで一休みをしていた。 偶然通りかかったサスケは、桜を見てすぐにそんなことを言ってきた。 桜自身特に疲れを感じていなかったが、サスケにはそう見えたのかもしれない。 ここ2年は紅葉につきっきりだったからだ。 「・・・子育てって大変ね。」 「ま・・・子供は泣くことしか表現できねぇからな。桜はすげぇよ。ちゃんと自分で見て。」 「そうなの?母親だもの当たり前じゃない。」 「そこら辺の貴族なんて、子供は乳母がやってたり、人に押し付けてるぜ。」 「そうなの?」 「そう。」 サスケは空いている椅子に座り、テーブルの上にあったお菓子をつまんだ。 桜はそんなサスケにお茶を差し出した。 「あ・・・ありがと。」 「ううん。」 「サスケ君、今度風の国にいくんだっけ?」 「あぁ、我愛羅とな。風と火はもう殆ど、友好関係がいいからな。 親父達はどうか知らないが、俺と我愛羅は仲いいよ。将来ひとつの大きな国になるとまでは行かないけどきっと大きなプラスになる。」 「そうか・・サスケ君も偉いね。それに比べて私は何してんだろ・・。」 桜は頬杖をついて、横にある綺麗に手入れをされている庭を眺めた。 世継ぎの世話をして、家を守って、紅葉を産んでからは外交の仕事はしていなかった。 あるとしたら、他国の御呼ばれのときに少し程度だった。 「まだ社会は女には厳しいからな。少しずつよくなっていくよ。風のテマリが今良くやってる。」 「そうね。テマリさんならきっと女性のために動いてくれているもの・・。」 「それに、桜には火の国次の時代の鍵を握ってるんだぞ。ソレだって立派な仕事だぜ。」 「サスケ君・・。」 そういわれてみればそうかもしれない。 なにも外交や、経済・財政・政治だけが大名一族の仕事だけじゃない。 次の時代の者を育てるのも大事だ。 サスケにそういわれて、桜は少し安心した。 自分には自分の使命がある。 「ありがとう。サスケ君。」 「いや、どういたしまして。」 「私、少し自身をなくしてたの。サスケ君のおかげで元気になれたわ。」 「それはよかった。」 「・・・ありがとう。サスケ君大好き!」 「わぁ!!引っ付くなよ!こんなとこ誰かに見られたら・・・怪しまれ・・・」 サスケの顔色が変わった。 ピクリともしゃべらなくなった。 「何?サスケ君どうしたの?」 桜はサスケの視線の先へ向けた。 「あら・・お帰りなさい。」 桜は何も無かったかのように、そこにいたイタチのそばによって抱きついた。 桜から見ればさっきのは肉親に対しても愛情表現だったからだ。 何も疚しい気持ちなんてこれぽっちも無い。 だが、サスケはどうだろう? 「ただいま桜。」 「嬉しいわ!今日はこんなに早いなんて!!久しぶりに3人でゆっくりしましょう。」 「あぁ・・・そうだな。」 「えっと、そうだわティーカップ片付けないと・・。」 桜は出していたカップを片付けようとしたが、サスケの手が先に伸びた。 「いいよ。俺がやる。」 「え?でも、これを出したのは私よ?サスケ君やってもらっちゃ・・・ねえ・・・」 桜はサスケのこの行為がなんなのかわからなくただ混乱した。 「せっかく兄貴が早く帰ってきたんだ。ゆっくりしなよ。」 あぁ、そうかサスケは気遣ってくれているのか、だから片づけをしてくれてるのか。 「そんな!!サスケ君の気持ちは嬉しいけど・・・・」 「桜、せっかくのサスケの好意なんだから素直に受け取ったらどうだ?」 「イタチさんまで・・・もう。」 イタチにまで言われてしまったら、桜はしぶしぶ引き下がるしかなかった。 「すまないな。サスケ・・・」 「いいよ・・・。別に・・。」 イタチとサスケの会話には何かとげとげしいものがあった。 「いくか、桜。」 「え・・・えぇ・・・。ごめんね。サスケ君。」 「いい、俺が言い出したんだから、気にするな。」 桜をつれていくイタチと目が合った。 サスケはイタチのその目には確かに、敵意を感じた。 そして、サスケも負けじと睨み返す。 知らずうちにもう始まっているのだ。 ”華の奪い合い"は・・・・・ 「兄貴・・・あんまりかまってあげてないと奪うよ。」 サスケは心に誓った。 この前まで好きになってしまっては駄目だと、理性を働かせていた自分が嘘のようだった。 渡したくない。 今のままでは不利だとして、いつか必ず奪ってやる。 桜も、紅葉も、国も・・・・ 「俺はアンタだけそばにいてくれればそれでいい。」 サスケは桜が飲んでいたティーカップを持ち、桜が口をつけていたところに自分の口を重ねた。 「紅葉〜。今日はパパが早く帰ってきてくれたよ〜。」 「きゃ・・・ぱぁぱぁ・・・。」 紅葉もイタチのことをわかるのか、両手を上げてイタチに甘えてきた。 「暫く見ない間にずいぶん育ったな。」 「やだ、イタチさんてば。それじゃ親戚のおじさんみたいな言い方じゃない。」 桜はイタチの間の抜けた台詞に少し笑った。 「・・・そういわれてみればそうだな。おいで、紅葉・・。」 「親戚のおじさんか・・・。」 「紅葉。お前はサスケのこともパパと呼ぶのか?」 紅葉は言ってる意味がわからなく、不思議そうな顔をしていた。 |
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