孤島の華     20





「サクラさん、暫く故郷へ帰ってはいかが?」



最近のサクラのやつれ具合を見て、ミコトは突然そんなことを言い始めた。
家の者は桜のやつれ具合を見て、暫く休養を・・という話が出ていたのだ。
実家に暫くいれば桜もだいぶ落ち着くだろうとの考えだった。

幸い、イタチも暫く出張で雷の国へ出かけていたのだ。


「ですが、お義母様・・・。」
「いいのよ。少しはゆっくりしてきなさい。そんな目に隈のある状態で大丈夫ですなんて言われてもね・・。」

周りの人たちも桜の事が心配で、そんな表情が伺える。
最近のイタチの行動には目に余るものがあったからだ。
みんな桜を心配していた。

あんなにいい奥さんなのに、どうして?・・・と


「みんな・・・・。」


「とにかく、イタチがいない間いってらっしゃい。イタチには私から言っておくわ。イタチは少しピリピリしすぎなのよ。」
「おかあさま・・・。」
「きっとサスケと仲がいい事を良く思っていないのね。」
「・・・・・。」


さすがは母親だなんでもお見通しだ。
桜もイタチとは早く誤解を解きたいと思っているのだが、怖くてイタチと会うことさえ嫌になっていた。
今はイタチに会いたくない。


「大丈夫よ。桜さんイタチも分かってくれるわ。暫くほとぼりが冷めるまで、ゆっくりしてきなさい。」
「ありがとうございます。お義母様・・・。あ、でも・・・紅葉は・・・。」

「大丈夫よ。紅葉も手のかからない時期になってきたら、私達で大丈夫よ。」



その夜、桜は大蛇丸に連絡を取り帰ることを伝えた。
大蛇丸は久しぶりに娘が帰ってくるのでとても嬉しそうな声だった。


『そうだわ、桜。』
『何?お義母様。』

『旅行の準備もしてこっちへいらして。』
『?』
『まぁまぁ、ずっと屋敷にいてもつまらないわ。どっか出かけましょう。』


桜は大蛇丸の心遣いに感謝した。








相変わらず、うちは低と大蛇館は離れて遠い。
初めて馬車に乗ったとき、とても時間が長く退屈だったのを覚えている。

大蛇丸は元気だろうか?
久しぶり姉のような存在だった多由也とも会えるのか・・・・
それから・・・・・カブトもいるだろう・・・・。
あの夜っきりだった。
電話で何度か交わしていたが、相変わらず何を考えているか分からない男だ。

もう夜に部屋を出るのはやめよう。
桜はそう誓った。













夕方というより、もう夜に近い時間だった。
やっとの思い出大蛇館に着いた。
桜を出迎えてくれたのは、多由也だった。

「桜様!!」
「多由也!!久しぶり」


二人は、つかの間の再会を喜んだ。

「あれ?赤ん坊は連れてこなかったんですね。」
「えぇ、ミコト様がせっかくなんだから、一人でゆっくりしてきてって・・・。」

「そうか、残念。顔見たかったんだが、仕方ないですね。」
「ゴメンね。」
「気にしないでください。大蛇丸様がお待ちかねですよ。」


屋敷は変わらず少し不気味だった。


そういえは、カブトの姿が見えない。

「ね、多由也・・・。」
「なんですか?」
「カブトは・・・・?」


「アイツなら、大蛇丸様と一緒じゃないですかね?」
「そう・・・。」


やっぱりいるのか。
今更ながらあまり、顔をあわせたくなかった。



大蛇丸はリビングで桜のことを待っていた。
テーブルの上には、桜の好きな銘柄の紅茶が入っている。
横にはやはり、カブトがいた。



「まぁお帰り、桜!!会いたかったわ〜。」

大蛇丸は桜を見るなり、喜びのあまり桜を抱きしめた。

「お義母様も、お変わりなくてよかったわ!!」
「桜、一体どのくらいここにいるつもりなの?」
「え・・・っと、考えてなかったわ。ミコト様もイタチさんが帰ってくれるまでいていいと言われてるけど・・・」

「大名かい?それなら、二週間ぐらい出張で雷の国になるはずだよ。」
「おや、カブトなんでお前が知ってるんだい?」
「別に・・・・」

「桜、それじゃ来週は風の国へ行きましょう。あそこは同盟国だから治安もいい。いい気分転換になるだろう。」
「ありがとう。お義母様。」



その日の夕食は久しぶりに、盛大で暖かい気分に包み込まれた。



















「・・・ん?母さん。桜は?」
「あらサスケ。お帰り、桜さんなら暫く実家に帰ることになったのよ。」
「そうなのか・・・。」

サスケは帰ってきた矢先、桜がいないことに気づいた。
ミコトから事情を聞くと納得し、早くご飯を済ませて部屋に戻ろうとした。

「あ、そうだわ、サスケ。お願いがあるんだけど・・・。」
「何?」


「イタチが言うには・・・・・・」

桜がらみのとこだろうか?
ミコトなら上手く交わせるだろう。
ただの”姉さん”ていえば納得する。


「忙しくて水の国に滞在する時間がなさそうだから、サスケに行って貰いたいって言うのよ。」
「俺が・・・?」
「そう。風の国に行くのは来週だから、別にかまわないでしょ?」
「そうだけど・・・土の国ならいったことあるんだけどな・・。」
「ごちゃこちゃ言わないの。用件はただの届け物だから、週末にサスケが雷の国へ行ってイタチと待ち合わせてね。」


イタチが行く予定なのだから、届け物はイタチが持っているのは当然だろう。
なんか面倒になってきたようだ。




「あー、早く来週にならねぇかな・・・。水の国にいくのメンドクサイ。我愛羅と早く話したい。」



ふと桜の顔が思い浮かんだ。


「水と風・・・両方お土産買ったほうがいいかもな。桜は確か他国へは兄貴と何度か行った事ある程度だもんな。」

桜の笑顔を考えるとこっちまで、楽しくなる。

「星の砂なんて持ってないだろうな・・風はコレにして、水の方はコレといってなかなかいいものがねえな・・・」



サスケは、桜に渡すお土産を考えながらそのまま寝てしまった。

















「桜様、なんか元気がないですね。」
「そう?」


久しぶりの女同士の会話に花が咲く。
多由也は長年桜を見てきたせいか、小さな所までよく気がつく。

「なんかやつれましたね。結婚生活上手くいってないのですか?」
「初めは・・・そんなことなかったんだけどね・・・。」



















「・・・・悪いなサスケ・・・初めていく国なのに・・。」


サスケは早く用事を済ませたかったので、早めに雷の国へ来ていた。


「別にいいよ。雷のおやじは話好きなのは知ってるし、完璧に捕まったな・・。」
「あぁ・・・・暫くかえれそうにない。」

イタチはサスケに巻物を渡した。
サスケは厳重に巻物をしまった。


「桜は元気か?」
その口調にはとがったものがある。


「桜なら今家にいないぜ。」
「なに?」

「大蛇丸のところに帰ってる。」
「そうか・・・。」


桜が実家に帰っているのを聞いてイタチは少しほっとしたらしい。
家族と、使用人がいれども同じ屋根の下にいるのは誰でも嫌だ。



「俺もまた来週、風のほうへ行って来るから。」
「そうか・・。」

「兄貴あんまり、桜のこと傷つけるなよ。桜、兄貴のとこ怖がってる。」

「どういうことだ?」


「そのままの意味だ。じゃあな。」

「待て!!サスケ!!」



「イタチ殿こんなところにおられたのか・・。」
「大名殿・・。」

「弟さんとの用件はおわったのかね?」
「あ・・はい。」


「そうか、そうか、それでは戻ろうではないか、はてさて、お父上のフガクさんは今どうなさってる?」


「・・・・一線を引かれて、母上とのんびりしています。」

「うんうん、実に結構。イタチ殿たいな息子さんがいらっしゃれば、フガク殿も安心できるだろう。」


雷の大名のペースにだいぶ入ってしまった。
もうサスケを追いかけることは出来ないだろう。


「はて、どうかなされましたかな?」
「いいえ、大丈夫です。」
「そうか、では戻ろうではないか・・・」
「はい。」

「わしの息子にもイタチ君の話を聞かせてやりたくての・・・・・・」






結局、イタチはかなか返してくれない雷の大名に捕まり、予定より五日間も雷の国に滞在するハメになってしまった。




















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