孤島の華  23






「・・・もう戻るのか?」


サスケと夜を共にした早朝、桜はサスケに気づかれずに出て行こうとした。
ひっそり入ったからといって、他の目に入ったら大変だからだ。
まだ別々の部屋ならともかく、同じ部屋にいたのだから・・・・。


「うん・・。お義母様も多由也も心配してると思うし・・・。それに・・・。」
「?」

「木の葉に戻ったらいつでもサスケ君と会えるもんね。」


この後に及んで可愛いことをいう桜をサスケは思わず抱きしめた。
本当はこのまま返したくないのだ。
でも、自分にも仕事が残っている。

戻ってくると言ったくせに、堂々と外泊をしてきたのだから我愛羅も怒っているだろうなと思った。

「サスケ君・・苦しい。」
「あ、悪い。」

「とにかく私は戻るわ。サスケ君もやること残ってるんでしょ?」
「そうだ。今度会うときは木の葉だな・・・きっと。」
「そうね・・・。家でだね。」

「心配するな。今度はちゃんと守ってやるよ。」
「うん、ありがとう。サスケ君。」


甘い口付けをしたあと、桜は部屋をあとにした。
そしてサスケも桜と時間をずらして、部屋を出て行った。





それから桜はすぐに泊まる予定だった旅館に戻った。
無論、大蛇丸と多由也からはニヤリと笑われ根掘り葉掘り聞かれたが、笑って誤魔化しておいた。
二人は鋭いからきっとあたっていると思うし・・・。


サスケとの一夜があったせいか、桜の心は大分軽くなった。
旅行の後半はよく笑うようになり、満足のいく気晴らしの旅となった。
連れてってくれた二人に桜は感謝した。








滞在最後の日、桜は偶然サスケに会った。
帰る前に花伝と、フガクとミコトのお土産を買う途中だった。
偶然バッタリ会った。1度あることは2度あると言うことはどうやら本当らしい。
どうやらサスケも今日帰るようだった。

「サスケ君・・・。」
「よ・・・。お前も今日帰るのか?」
「うん・・。」
「親父達のお土産ならこっちの方がいいぜ。そこら辺俺が殆ど買って渡してるから。」
「本当?でもそうだよね。サスケ君いっぱいここ来てるし。」
「でも最近はお土産なんて買ってない。だから新作は知らないぜ?そっち買えよ。」
「そっか・・・ありがとう。」

桜はサスケのアドバイスを受けて買い物を続けた。
無事買い物も済んだ後、三人そろった所で馬車に乗った。
馬で飛ばせば、夜中に着くだろうがそうは行かない。
途中どこかで泊まるようだ。
荷物も多い。まぁ、コレでいいのかもしれない。

思いっきり羽を伸ばせたのだから文句もない。
来てよかったと改めて思った。


火の国に着いたらまず桜は花伝へ行っていの達にお土産を渡した。
そういえば、他国へ行っておみやげなんてここ数年なかった気がする。

「ありがとう桜!」
「いえいえ。」

「そういえば、桜が向こう行ってるときテンテンさんも来たのよ。テンテンさんは雲の国にいってきたお土産もらったんだ。」
「そうだったの。テンテンさん元気だった?」
「うん。」

そうかテンテンの方は順調に行っているようだ。
それに比べて自分は・・・・・
夫の弟に心を奪われてしまったのだ。
こんなこといくらいのでも言えないなと思った。


「どしたの桜・・・急に黙ったりして。」
「ううん。なんでもない!!ソレより・・・あんたは後どのくらいなのよ・・・ここに居るの・・。」
「そうね・・・・あともう少しなのよ!ヒナタもね!最近は新しい娘が多いからそっち行っちゃうけど・・・」
「そっか頑張って!いの。」
「ありがとう。あ、ソレと桜。」

「何?」

「あんた旅行先で何かあった?」

「へ?」

いのは昔から鋭いところがある。
今回も何か読み取ってしまったのだろうか?

「なんか、雰囲気変わった。心が穏やかになった感じ。最近ずっと元気なかったし、ピリピリしてたし・・。」

さすが親友だ。
なんでもお見通し。


「まぁ・・・旅行先で思いっきり満喫してきたから今はきっと落ち着いてるんだよ。きっと・・。」
「それならいいんだけどね・・・。だってなんか恋してるみたい何だもん。」
「ちょ・・いの!!」
「なんてね。冗談。でも、本当にそうだったら面白いのにね。」


これには何も言い返せなかった。


「ま、いいわ。それより早くかえってやんなよ。大名様きっとお待ちかねだぞ!」
「もう!いのったら!」


桜は笑いながらいのに謝った。
別に謝る理由もないし、謝ったって何かが変わるわけでもない。
サスケに心を奪われた自分への戒めだ。





桜は家に着いたら、うちはの人にどういう顔で会えばいいのか分からなかった。
イタチには特に顔をあわせにくい。
察しのいい彼のことだ、少しのことですぐ見破る。
ソレが怖いのだ。



家のドアで少し立ち度待った。
まだ開ける心の準備をして、深呼吸。大丈夫、うまく仮面を被ってしまえばいいのだ。
大名の妻という役を演じればいい・・・。


「ただいま。」


おかえりなさいませ奥様と使いの者が声をかけた。
お土産を渡すと、皆のところへいって分けにいった。
フガクとミコトにも事通りなくみやげ物を渡した。
やはり、サスケの言っていた通り、新発売の品物を選んでよかった。
二人とも喜んでくれていた。

最後にはイタチだ。
幸いにもまだ帰ってきていないらしい。
サスケもまだ家には居ない。きっと明日だろう。ミコトが寄り道してくると連絡があったといっていた。
サスケ同様桜と同じで、合わす顔がないのだろうか?


とりあえず部屋に戻って、ささっと荷物を整理した。
風の国も出来事が嘘のようだ。
また毎日、鳥かごのような生活が始まるのだ。
一体どこで順調だった生活が崩れたのだろう。

もうそんなのも考えたくなかった。
このまま目を閉じたらもう、目を覚ますことがないようにしてくれればいいのに・・・・。

部屋の外が騒がしい。
ああ、そうかイタチが帰ってきたのだな。
そうだ、まだ紅葉の顔も見ていない。
駄目な母親だな。と自分でも思った。


「桜!!」

ノックをした後、桜の了解もとらずにイタチは入ってきた。

「あ、イタチさん!紅葉!」

イタチに抱っこされた紅葉は、桜を見つけるとイタチの腕から降りて桜へと駆け寄った。
「ママ〜お帰り〜。」
「紅葉〜。ただいまいい子にしてた?」
「うん!」

「そういい子ね。そうだ紅葉のお土産もあるのよ。」

紅葉は桜から渡されたお土産をもらいすっかりご機嫌だった。
ちょっと前までは母親がそばに居ないと、ぐずり始める子だったが今ではすっかり治まったようだ。


「ただいま。イタチさん。」
「お帰り、桜・・・。」


イタチの顔はいつものイタチの顔だった。
桜は少し安心した。

「随分と大蛇丸の所にいたんだな。」
「あれ?ミコトさまから聞いてない?私お義母様と多由也と暫く風の国に旅行に行ってたの。」
「そうなのか?」

イタチは初めて聞いたようだった。

「・・・・そういえば、サスケも行ってたな。そっちへ」
「あ、そうそうサスケ君にも会ったよ。最後の日にね一緒にお土産選んでくれたの。」
「・・・そうか。」

イタチの声が暗くなった。
まずいなとは思ったが、実際あったのは事実だ。
サスケとあったのは最後の日だけと口裏を合わせている。

「やぁね。イタチさん、サスケ君に会ったのは最後の日のお土産を選んでいるときだけよ?あとはお義母様たちと一緒だったもの。」
「・・・そうか・・。」


どうやらここは上手く切り抜けられたようだ。
でも内心はハラハラだ。


「桜・・・お前の居ない時間は結構こたえたよ。」
「もう・・イタチさんたら。」

寂しがり屋ね。なんて言ってはぐらかしてここにもないキスをした。
サスケとは違う味。
今の桜の体はサスケのつけた印が多数ある。
コレを見られたら、イタチは怒りに狂うだろうなと人事のように思った。


「桜疲れてるだろ。今日はやめておくよ。」
「・・・ありがとう、イタチさん一日中馬車だったからもうヘトヘトだったの。」

「見たとたんのお前の顔見ればすぐに分かる。今日はゆっくり休め。」
「うん。」



正直体は疲れていた。
さっき本当に抱かれたいたらどうなっていただろうと考えたらゾッとした。
今度こそ本当に部屋に閉じ込められてしまうだろう。

「時間の問題かな・・・?」


今暖かく抱きしめられたイタチより、荒々しく抱かれたサスケの熱を思い出した。
出来るならもう一度抱かれたい。

「もう駄目ね。私・・・サスケ君とのを思い出してる。」


あの力強い腕で抱きしめて?
その綺麗な指で私の中を弄って?

家の壁は厚い。誰にも聞かれはしないだろう。

自分の指を自分の中に入れた。
先日の夜が忘れられない。一夜限りの恋にしたくない。
あの彼の言葉を信じたい。

”好きだ・・・”

”一緒に逃げよう・・・”

「私も・・・わた・・・し・・あぁ!」


”桜・・・・好きだ・・・。”

「私も・・・・ん、はぁ・・・」

貫かれたい。


”兄貴なんか渡さない”

「じゃ・・・うば・・・・て・・う・・・・ぅっ」



弄られたい


こんな感情に支配されるのは初めただ。


「サスケ君・・・・」


一人で慰めて恥ずかしい切ない
早くサスケに会いたいと思った。待ち遠しい。
どんな顔しよう?

考えてきたら楽しくなってきた。
サスケが帰ってきたら、こうしてああして・・・午後のお茶には必ず付き合ってもらう。



そのうち、桜はとうとう睡魔に勝てなくなりそのまま寝てしまった。





次の日、サスケは何食わぬ顔で帰ってきた。
相変わらず、サスケとイタチは顔をあわせるたび険しいオーラを放っているが桜にはもう関係なかった。

これからどうサスケと楽しくひっそりと遊ぼうかと頭でいっぱいだったのだから。
それはきっとサスケと同じ。
イタチを出し抜くのが楽しみでたまらない。
















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