孤島の華 25 「桜にはここにずっといてもらうよ。」 イタチは鎖を取り出すと、それを桜に取り付けた。 「な・・。何これイタチさん!!」 「桜が逃げないようにね。」 「え・・・」 「これから食事も俺がもってくる。お風呂も俺がいれるから俺が出張の場合はちゃんと俺の侍女にやらせるから安心して。」 そんな事を平然と言うイタチの思考回路が良く分からない。 「嫌よ。やめて考え直して?」 「駄目だよ。決定事項だ、これじゃなんの為にサスケを出張にだしたのか分からない。」 狂ってる 桜がイタチに対する抱いた感情だ。 普通の笑顔なのに、イタチがおかしい。 どこから?一体どこからこうなってしまったのか? 怖くて仕方ない。 「イタチさん・・一体どうしたの・・おかしいよ。」 「おかしくない。お前はサスケにそそのかされてるだけだ。少し離れたら落ち着くだろ。大丈夫俺の妻としての自覚を思い出せたら解放してやる。」 「そんな!!いいえ!私は確かにイタチさんを愛していたわ!でも、貴方のは・・・今の貴方は愛じゃないの・・・私が愛して・・・!!」 バンっと強い音とベッドが軋む音が聞こえた。 気づいたら桜はベッドに倒れていた。 顔にヒリヒリと鈍い痛みが走った。 「桜その続きを俺の前で言うのかい?”サスケを愛してるって”?」 「・・・う・・・・。」 「今度そんなこと言おうとしたら・・・ただじゃおかないよ。」 「・・・・。」 イタチは部屋から出てきった。 桜は部屋に一人ベッドに寝転ぶ。 イタチの部屋には窓がない。日が当たる事がなく電気がついているのに薄暗い。 ガランとした無機質な部屋。 イタチは桜を閉じ込める為に作ったように見える部屋。 こんな事をいつから考えていたのか? なす術がなく桜は寝ることにした。 幸い、鎖に繋がれたのは首輪だけで手は自由だ。 窓もないし、ドアも頑丈で閉め方も複雑どうやっても出られないのだろう。 せめて外の景色が見られれば・・・・・そんなことを思った。 「私・・・一生こうなのかしら?」 今更イタチを愛するなんて出来ないのに・・・・・・・ 早くこの情事の後の体を洗い流したい そんなことばかり考えていた。 「気持ち悪い・・・。」 「桜・・・食事もって来たよ。」 訳もわからないまま始まったコモっきり生活。 今がいつなのか、天気も時間も分からない空間に桜の頭がおかしくなりそうだ。 食事はいつもイタチが食べさせる。 もう慣れてしまった。 「ほら桜、口開けて。」 桜はしぶしぶ口を開ける。 少し前までイタチが不在だったので、イタチの忠実なる侍女がここへきて桜の世話をしていた。 「ね・・・イタチさん。」 「なんだい?桜。」 「今・・あれからどのくらい経っているの?」 「2ヶ月だ。」 「そう・・・・。」 桜からみればそれしか経っていないという感覚だ。 同じ風景、時間の経過さえ分からない空間に、狂気を覚える。 一日に3回の食事と、湯浴みが桜をなんとか正気にもたせてきた。 ほんの少しの会話が今の桜にはかけがえのないものだった。 「桜も強情だな。おとなしく観念したらどうなんだ?」 「・・・できなわ」 「そう、ならまただね。」 食べ終わった皿をイタチは積み上げ部屋を出てきった。 今は昼? 雷雨が鳴り響く、雷の国は月に一度雷雨がなる。 サスケは雷の宮殿で、窓から外の景色を眺めていた。 前途多難である。 イタチも二週間が、もう一週間も伸びてしまったほど雷の大名は話好きだ。 しかも、なかなかサスケはこっちに来たことがないので、大名は嬉しそうだった。 サスケは嫌な予感がする。 まさか半年より多くなるなんて事ないよな? いくら半年もいればそんなに引き止められることもないだろう。 「どうしました?サスケ殿。」 後ろから大名の声がした。 「あ、ここに来るのはめったにないものでして、雷雨が本当によくあるなと見ていました。」 「大丈夫じゃ、落ちても町中避雷針がおいてある。それに、この国はこの雷の電気をかりて全て発電をしているのだ。」 「すごですね・・・。」 自慢話をしたら止まらないのが有名な大名は、自分の国の特色、誇れることを話し始めた。 サスケは1時間はつかまるなと観念し、大名の話に耳を傾けた。 つまらい・・・ぐだぐだと他人の自慢話ほど、腹立たしい話はない。 いい加減、体調不良を訴えて部屋に戻ろうと考えた。 その時、大名の息子が丁度良く話を割ってくれた。 「父上、只今戻りました。」 「おぉ!もどったか!」 「サスケ殿もお久しぶりでございます。」 「いや、こちらこそお久しぶりです殿下殿。」 ラッキーだ。この皇子は大名の話好きを心得て、上手く話を切り上げてくれる。 「そういえばサスケ殿、火の国に行ってまいりましたけど桜様のお体の具合がよくないみたいですね。」 一瞬、サスケに電流が走った。 雷に行く前のイタチの凶行、顔色がかわったのを雷の皇子は瞬時に読み取った。 「すみません。大変な時期に申し訳ございません。」 「いや、いいんんだ。」 「部屋にこもりっきりで、なかなかお姿が見えませんでした。そんなに調子が悪いのですか?」 「・・・二人目を産んだときから体の調子が悪い。」 「そうですが・・・それはお大事に・・。」 今頃桜はどうしてるんだろうか? イタチに酷い目にあっていないだろうか? 「そうだ、サスケ様。渡しそびれたのですが、戻られましたらこれを渡してください。」 雷の国の病に効く薬です。 と笑顔でわたしてくれた。 体の調子は・・・きっとよくなってはいるはずだと思う。 問題は、イタチの桜に対する扱い方だ。 どうか無事でいて欲しいと切に願った。 それから何ヶ月か過ぎた。 どうやら長く滞在したおかげで、サスケは火の国に帰る時はなにもひきとめはなかった。 「いやいやサスケ殿、今度はイタチ殿と一緒にいらしてくださいね。」 「さすけさん。桜様とイタチ様にも宜しくお伝えください。」 あいさつも終わり、サスケはあわてて火の国へと帰郷した。 桜が心配だった。 そもそもあんなことになって、自分達の親はなにをしているのか? 頭の切れるイタチのことだ、上手くフガクとミコトに言い訳をしているんだろう。 今でもきっと缶詰だろう。 一刻も早く助けなければ!! 足取りは休むまもなく、進んだ。 「・・・・・一人じゃ・・無理だな・・。」 途中、サスケの帰り道はいったん遠回りになった。 桜は空気の篭った重い世界にいた。 まだなんとか、正気を保っていた。 今日の食事はイタチの侍女が持ってきた。 イタチが持ってくるのは、朝と夜。 昼はこの女が持ってくる。 人形のように無表情な綺麗過ぎる女だった。 無言で食べ終わるのを見計らって、さっさと部屋を出ていく。 桜はこの昼の時間が、一番嫌だった。 今度はイタチか? それとも遅くなってまたあの女がくるのか? イタチであっても桜の苦痛はやむことはない。 また暴力を愛に変換させたイタチの”愛情表現”が待っているのだから。 もう疲れてしまった。限界なのだ。 この何ヶ月自分は良く耐えたと思う。 サスケはきっとまだ帰れないだろう。 帰ってきたとしても、イタチにまた他国へ飛ばされてしまうのが関の山。 どうすることも出来なんて初めからわかっているのだ。 ”一緒ににげよう” 桜はサスケが言ってくれたこの一言を思い出してここまでやってこれた。 でも精神力はもうこれっぽっちも残っていない。 この部屋の空気は日に日に重くなり、イタチの色が強くなっている。 新鮮な空気も、風も入らない。 換気扇の音が一定に変わらず鳴り響いてるだけで、なにも変わらない。 変わってしまったのは桜。 「もう・・・あきらめちゃうかな・・・。」 今度イタチが戻ってきたら、愛してるっていったら解放してくれるかな? 貴方だけしかもうみなから・・・ そうすればラクになれるかな? 「そうだ・・・。そうしちゃおう・・・・・。」 それから何時間かして部屋のドアが開いた。 「イタチさん?」 おかしい。いつもより早いと一瞬思った。 まだお腹はすいていないのだ。 「イタチさん、私まだお腹すいてないの。あと2時間ぐらい・・・」 「桜!!俺だよ!!」 「え・・・?」 その声はずっと聞きたかった声。 恋しかった声。 嘘ではない、今目の前にいる。 「まいったぜ、ここ開けるのに時間かかったよ。もうちょっとてこずったらあの鉄仮面女に鍵無理やり開けさせようかと思ったんだ。」 「サスケ君・・。」 ・・・ああそうだ。戻ってきてくれたんだ。 「サスケ君・・。会いたかったよ。」 「俺もだ。桜。まず、こいつなんとかしねぇと。」 首に繋がれている鎖をはずそうと頑張ってはみるが、あまりにも頑丈でとれない。 「チ、なんだよコレ!!」 「サスケ君、早くしないとあの人帰ってきちゃうわ。」 金属を切る道具なんて今持っていない。 細い針金で、鍵穴をこじ開けてはずすしか・・・・今出来る方法はコレだけだ。 「クソ!!あかねぇ!!」 「何をしている?」 遅かった。 イタチがもう帰って来てしまった。 「つくづく往生際が悪いな・・。サスケ・・。」 「兄貴・・・。」 「サスケをつまみだせ。」 「おい!!!」 またこの前と同じ状況になってしまうのか? 「サスケあまり桜をたぶらかすな。あともう少しだったのに・・・。」 「てめぇ!!」 「そうだ。我愛羅君からまた来いと手紙が来ていたぞ?」 「今度は風かよ?」 「おっしゃるとおりで・・・。」 だが、まだ風なら融通が利く、我愛羅とテマリ、カンクロウに全てをはなせば協力を得られるかもしれない。 「上等だコラ!」 「威勢だけは一人前だな・・。よかろう。今すぐに飛ばせてやる。」 「桜!!必ず!必ず迎えに来るからな!!」 数人のイタチの部下につかまれてもなんとか、コレだけは言うことは出来た。 「迎えに・・?無駄なことを・・・桜・・・驚かせてすまない。さぁおいで・・・・」 逆らったら殺される。 桜はイタチの手をとり、されるがままになった。 今夜もまた鎖が激しく絡まる音が聞こえる。 |
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