孤島の華 26 「・・・じゃぁ。おやすみ桜。」 長時間に及ぶ情事の中、イタチは満足したのか身なりを整えて部屋から出て行った。 桜のいる部屋も、もともとはイタチの部屋だったが今は完全に桜の部屋となっていた。 桜はぐったりさせた体をなんとか鞭打って、寝やすい体勢へ変えた。 体についている汚れはもう明日でいい。 疲れた。 今は眠りたい。 「ようこそお越しくださいました。サスケ様。」 いつもは楽しい気分の風の国も、今回ばかりは嫌な気持ちでいっぱいだった。 サスケは不機嫌そうに風の門番に挨拶をした。 門番も、初めは驚いたがたまたま機嫌が悪かったのだろうと受け流した。 「なんだ?今日のお前はいつもと違うな。」 入った瞬間我愛羅の声が聞こえた。 「しかも、イキナリ来るなんてどういう風の吹き回しだ?いつもは予め連絡ぐらいするだろ?」 「・・・イロイロあってな。」 「で、今火の国も大名から手紙が届いた。」 「!!」 「”しばらくサスケを預かってくれないか”と一体なんなんだ?これは?」 「あのクソ兄貴!!」 「説明してもらうぞ。」 「わかってるよ。ここじゃなんだから・・。」 「わかった部屋に案内する。」 風の国に多く来るサスケは、特別にこっちでも部屋を貰っていた。 いつでもここへ来てもいいように、綺麗に片付いている。 「我愛羅、テマリさんも呼んでくれるか?」 「テマリも?」 「あぁ・・・あとカンクロウさんも・・。三人の力を借りたい。」 「・・・・・・。」 サスケは三人集まると、今の桜とイタチの状況を話し始めた。 桜を連れ出してやりたい、それには自分一人じゃなにも出来ないのだ。 「自業自得だな。」 それを言われてしまえばおしまいだ。 「・・・しょうがねぇだろ。」 「兎に角あんた達の力を借りたいんだ。頼む。」 サスケは頭を下げた。 あのサスケが頭を下げるなんて見た事ない。 それほど必死なのだ。 「いいよ。私は手伝ってやる。」 「「テマリ!!」」 「ありがとう。テマリさん。」 「しょうがない俺もやってやる。友達だしな。」 「我愛羅がそういうなら、俺もやってやろうじゃん?」 三人は早速段取りを始めた。 すぐに実行するのは、怪しまれると思いサスケは一週間ここに居ることにした。 すこしイタチを油断させようとしたのだ。 一週間が過ぎた、イタチもそろそろサスケが帰ってくるのではと考えていた。 いつも通り桜の食事を持っていき、下げに帰ってきたところだった。 「イタチ様!」 「なんだ?!」 イタチの忠実なる執事があわてて駆け寄ってきた。 「それが・・・風のテマリ様がお見えで・・・」 「何?テマリが?」 「久しぶり。イタチ。」 「テマリ・・一体・・?」 応接間にいたテマリはイタチが入ってくると軽く一例をした。 どうやら今回はテマリ一人で来たらしい。 侍女の一人もつけずに、単身でくるのは何かある。 「なんだ?せっかくお前の奥さんの見舞いにきてやったのに・・。 サスケの奴全然、桜殿の話をしてくれないのだから・・・女同士分かる話もあるだろ?だから来た。」 「そうか・・・しかし、桜はなかなか重病でな面会も医者から許可されていない。」 「そんなにか?大丈夫なのか?」 「当分は寝たきりだな・・。」 全てを知っているテマリから見ればなんと図々しい。 もう少し時間を稼がなくては・・・ それに一緒にあるあの、執事も少しの間こっちにいてもらわねば・・・ どいうやら、イタチとあの執事が一番要だ。 「さて、これでいいじゃん?俺が見てるから早く行って来い。」 「ありがとう。カンクロウさん。」 「桜!!」 サスケとカンクロウは屋敷の中にいた。 カンクロウは見張りと、脱出の際の邪魔者の攻撃。 今の内もう出口の人払いはしてある。 後はどれだけ鎖を早く切れるかと、テマリがどれだけあの二人を足止めできるかだ。 サスケが鎖を切っている最中に、桜の目が覚めた。 「あ・・・サスケ君。」 「桜・・・ゴメン。遅くなった・・・逃げよう。」 丁度、鎖が切れた。 「そうか・・・桜殿はそんなに・・。心中お察し申し上げます。」 「かたじけないな。」 「それはそうと、今日はもう一つ話があってきたのだ。」 「?」 「実はカンクロウが、外交にいってから戻らなくてね・・。」 「?」 「遅くなるときは連絡が入るのだが・・・」 「そういえば、水の方にいってる話はお聞きしてましが・・・。」 「そうなんだ。我愛羅は待機させて私は極秘で回っている。水はもうカンクロウは出たといった。 もしカンクロウを見たら連絡をくれないか?」 「わかった・・・そうしよう・・・。」 イタチはまっすぐテマリを見つめた。 「ん?なんだ?イタチ。」 「テマリ・・・サスケはまだそちらにいるのか?」 「いるよ・・・我愛羅と一緒に待機してもらっている。」 「そうか・・・。」 そろそろ会話が続かなくなる。 ここで話を無駄にながくなってしまっては不自然だ。 「兎に角カンクロウが見つかったら宜しく頼むよ。」 「あぁ・・・。」 テマリは席を立った。 「私はとりあえず一回戻るよ。我愛羅からの連絡も聞きたいしね。」 「そうか、せっかくここへ来たのだからもう少しのんびりしていかれては?」 「いや・・・桜殿が大変なときにあまり長居は出来ない。」 「そうか・・・・またお会いしよう。テマリ殿。」 「そうだな、大名様。」 テマリはとりあえず門を超えるまではこっちにいるだろうと目論み、ゆっくり歩いた。 サスケ達は無事に桜を解放してやったのだろうか? 結構時間は稼げたはずだ。 せめてここの屋敷からは離れていれば大丈夫だ。 あとは、自分が馬車に来るだけだ。 門の前で馬車が止まっている。 テマリの風の馬車だ。 「それでは大名殿。」 「いいえ。たいしたおもてなしが出来ずに・・。」 「いいや、こっちも手紙もよこさずに勝手に来たのだからな。そういえばあの頃と同じだな。」 「?」 「婚約を解消したときのことだ。」 「そういえばソウだったな。」 「私は正直悲しかったよ・・・。」 「え・・・?」 「お前は今幸せか?」 「・・・」 「ゴメン。愚問だったな。またな・・・」 テマリは馬車のドアを閉めた。 騎手は馬にムチを打ち馬車が動き出した。 「桜・・・平気か?」 「ごめんね。おぶってもらちゃって・・・」 「気にするな。」 一足早く屋敷を出ていた、サスケと桜、カンクロウはテマリとの待ち合わせの場所に急いでいた。 人気のない道を選び少々遠回りになる。 それに早く行かなければ、追っても来るだろう。 今のイタチの考えから見れば、みつかったらきっと殺される。 「もう少しだ。」 「ほら桜、ついたぞ。」 火の国から少し離れたところだった。 一本のケヤキの木が目印となる場所。 一足先に着いた、サスケ達はテマリが来てもいいように身なりを整えた。 「サスケ!!カンクロウ!!」 「「テマリ!!」」 サスケは素早く桜を馬車の中に運んだ。 「そこまでだ!!」 イタチはもう追いついていたのだ。 もう気づかれていたのだ。 このままでは危ない。 三人は急いで馬車に乗った。 一気に重みが増して、馬車のスピードが落ちた。 このままでは追いつかれてしまう。 「待て!!サスケ!!」 イタチは馬車から身を乗り出して、今まで見たことのない顔でサスケを睨んでいた。 「・・・まずいな。」 「あぁ・・・この人数じゃまるで早く馬も走れないだろう。」 「テマリさん。俺と桜下ろしてくれるか?」 「何馬鹿言ってるんだ!」 「いいんだ。ちゃんと話つけてくる。」 「じゃぁ、ありがとな手伝ってくれて・・。」 サスケは桜を抱き寄せて、馬車から飛び出した。 「「「サスケ!!」」」 「あ〜あ、海沿いかよ。背水の陣かよ〜まいったなおい!」 「ごめんね・・・サスケ君。」 「いいって、桜・・。それより俺の言ったこと覚えてる?」 「うん・・・覚えてるよ。サスケ君と一緒ならどこだって・・・」 「あぁ・・・」 イタチの乗った馬車が止まった。 乗っているのはイタチ一人だった。 「どういう事だ?逃げないのか?」 「いや、逃げて見せるさ。」 サスケは後ろ一歩さがった。 しかし、今サスケ達がいるところは、林の中とは変わって海に変わった。 ゴツゴツした岩場、背後は少し高い崖になっている。 「どうやってだ?こんな状況で?」 「大丈夫だよ桜。」 サスケは桜をあやす様に、口付けた。 強く桜の体を抱き寄せる。 「サスケ君・・・」 「桜・・」 「ゴメンね。イタチさん・・・・私、サスケ君が好きなの・・。」 「桜・・・俺は・・。」 イタチはこの後の二人の行動が、一つしか読めていない。 でも・・・それでは・・・ 「そんなことをしてまで、俺から逃げたいのか?」 「私・・イタチさんの事愛していたわ。本当に愛していたの・・。」 「桜・・・なら・・・」 「ごめんねイタチさん。・・・・いきましょう。サスケ君・・。」 「あぁ。」 二人は後ろに、身を投げた・・・・・。 |
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