ノスタルジア 11 夜はいのにクロメの病室へ連れて行ってもらった。 病室へ入るとベッドに横たわっているクロメを見つけた。 医療器具を雁字搦めにつけられて、酸素補給を受けている。 「致命傷だったけど一命を取り留めたわ。綱手様がいうにはソコまで心配はないと言うけど・・。」 言葉とは裏腹に、クロメの今の状態は決して大丈夫とは程遠い。 それなら点滴だの、酸素マスクなんていらないのだから・・。 夜はクロメの姿を見て涙が出てきた。 生きている安心感がこみ上げえてきた。 「よかった・・。」 「ちっともよくないわ。」 いのが夜の言葉をさえぎった。 「傷の心配はないわ。手術も成功して、完全とまではいかないけどね・・。問題はメンタル面。」 夜は不安そうに後ろを向いて、いのの顔をうかがった。 いのの険しい顔は変わらなかった。 「意識が戻らないのよ。前の・・・サスケ君とカカシ先生が受けた幻術とはまた違う。 クロメ君がこっちに戻ろうとしないの。心を拒絶しているのよ。」 「そんな・・。」 「私は嘘はいってないわ。事実を述べているの。」 「いの先輩・・・。」 言葉を曲げないいのに夜はもう一度、クロメの顔を見た。 規則正しい息の音が聞こえる。 瞼は重く閉じられて、開きそうにない。 「わたし・・の・・せい?」 自分なんかかばったから・・・。 クロメの笑顔が夜の脳裏に浮かんだ。 もうこの笑顔は二度とみれないのだろうか・・・? 「いやだ・・・いや!」 夜はクロメのベッドに顔を埋めた。 クロメを起こそうと揺らす。 「ちょ・・やめなさいよ。こんなことしたって・・!」 「いの先輩・・放してください・・・クロメが起きるまでここに居させてください。」 「そんな我侭通用すると思うの?!」 「クロメを一人にさせたくないの。」 「誰のせいでこんなことになったと思ってるのよ!」 夜の自分勝手な行動に、ついにいのの堪忍袋が切れた。 いのの怒りが夜へとつきささる。 夜は自分のせいだとハッキリ言われ、動揺を隠せなかった。 「・・・もうずっと・・・ずっと前から!!クロメ君も・・・サクラも!!二人を傷つけて・・あんたは!! そりゃ・・・サスケ君も悪いけど、あんたにも責任はあるよ!!」 いのは無理やり夜を病室から連れ出そうとしたが、夜は全力で抵抗をする。 改めてクロメの思いを知った夜には、少々酷だ。 こんな形で、自分の過ちに気づくなんて一体いままでクロメに対してどんな態度を取っていたのだろうと 夜は自分が恥ずかしくなった。 「ごめ・・・さ・・・クロメ!!クロメェェ!」 少しの差で夜の力が勝った。 いのは少しよろける。 「お願いです・・。ここに居させてください。ちゃんと面会時間が過ぎたら帰ります・・。」 夜は跪いていのに許しを請う。 いのは小さなため息をこぼして、やっと許した。 「わかった・・好きにすればいいわ・・。それとあんたちゃんとサクラにもあやまんなさいよ。 まっ、今は会うことさえ許されないだろうけどね。」 「ありがとうございます・・。」 夜は深く頭を下げた。 夜は面会時間ギリギリまでクロメの隣に座った。 このまま眼を覚まさないかもしれない。 でももしかしたら、もうすぐ覚めるかも・・・ そんな淡い期待を持ってしまえばしまうほど、夜は離れられなくなる。 面会時間の終了時刻がきて、帰りたくなかったがこれ以上病院にも迷惑をかけたくなかったので帰ることにした。 「え・・・・・クロメ君も入院してるの?」 「そう。なんか任務の時に夜か庇って重症だって。今は意識不明。」 「そうなの・・。」 いのはまだサクラも入院していたため、退屈しのぎの話相手になっていた。 それでここ最近の状況を報告してくれている。 「そっか・・クロメ君は夜チャンの事・・・大好きだもんね。」 「ね・・・サクラ・・。」 「何?いの?」 「夜の事許してやんなよ?」 一瞬サクラは怪訝そうな顔したが、コロっと表情を変えた。 「・・・・夜ちゃん今クロメ君の所に居るんだよね。」 「そう・・。」 「それならいい・・。ちゃんとクロメ君の事好きならいいの。」 「サクラ・・・。」 これでサスケ君の所いってたら許さなかったけどね。 と念のため付け足しておいた。 「そんなことしてたら、私が殴ってやるわよ。」 「あはは!ありがとう。」 「さて、そろそろ帰るか。」 「うん、ごめんね。」 「気にしない、暫くあんたのとこの隊はサクラとクロメ君がふっきするまで凍結だって。」 「そっか、じゃ早く元気にならないと。」 「そういうこと!じゃあね!」 いのはウインクをしてサクラの病室を出て行った。 サクラはしんと静まりかえった部屋を見渡して、シーツの中に入る。 個室の病室は退屈で孤独だ。 クロメも集中治療室からはまだ出られないだろう。 「そっか・・・クロメ君は・・・。」 今更いっても仕方ない。 サクラとクロメの関係は体だけだ。 心は違う相手を思いながら、お互い自慰をしているようなものなのだから。 「寂しい・・。」 サスケは病室には一度も来ていない。 彼の事だから来ないのは当たり前だ。 それでも少しは気遣って欲しいと思う。 ナルトなんてすぐに駆けつけてきてくれたのに、そういう所は変わっていない。 きっと凍結状態のことだからコレを機に修行でもしているのだろう。 それとも優秀な人だから、他の班に混じって任務をしているのだろうか? 「会いたいよ。サスケ君。」 窓から見る景色は、日が沈み月が顔を出していた。 長い一人の夜が来る。 誰かこの淋しさを埋めて欲しい。 「・・・・。」 サクラは思わず病室を出てしまった。 「・・・。」 無言のままただ目的地へ向かう。 「・・・・クロメ君・・・また・・・相手をしてくれる?・・・私淋しいの・・・誰かのぬくもりが欲しいの・・。」 サクラはクロメの病室へと入り、クロメの体に触れていった |
BACK NEXT |