ノスタルジア   15





サスケはサクラが気を失ったのを見ると、サクラを放し縛っていた腕を解いた。
乱れていない上半身に比べ、下半身は酷いものだった。
足に白い欲望が、無残な形でベトリとついている。


サスケはこまま放って置くのも後味が悪かったので、サクラを綺麗にした後、部屋を出て行った。
一体サスケは何がしたかったのだろう?と問いただしてみた。
確かに、サクラの言う通り自分達はおかしい。
それはクロメと夜にも当てはまること。
でも、サスケは気持ちを誤って違うベクトルへ、進めた気はない。




問題はサクラだ。
道を誤まってしまったのはサクラだ。
なんでこんなことになってしまったのかも、検討がつかない。



サスケはさっき治まったはずの怒りが、次第にまた怒りを膨らませていた。





















サクラはサスケが出て行った後、暫くして目がさめた。


意識がハッキリしないが、下半身がズキズキと痛い。
着衣の乱れが整っているのを見ると、サスケがしてくれたのだろうと予想がつく。

棚にあつ果物の詰め合わせに目がいった。
そういえばこの前、いのが持ってきてくれたのにまだ全然食べていなかった。
朝からなにも食べていなかったから、丁度いいやと林檎をとった。


ご丁寧に果物ナイフもついている。
林檎の皮をむこうとした時だ、ふと窓の外にふたつの人影に目がいった。

他愛のない一組の恋人同士の姿だ。
つい少し前までは、サスケとサクラもあんな甘い雰囲気をかもし出していたのだろうか?


今となってはもう戻れないのだろうか?
仲睦まじい二人を見て、サクラは胸が痛くなった。


とても羨ましかった。



カップルがキスをしている姿を見て、サクラは固まった。





そういえば、さっきの行為のときも、その前もサスケとサクラの間に、唇の交わりはあっただろうか?
いや、なかった気がする。
記憶があやふやだが、つい先ほどの暴力的行為には一切なかった。


用があったのは下半身だけだというような、酷い仕打ち。


あぁ、もう愛されていないんだな。


心が冷たくなっていった。
果物ナイフの持ち方が変わった。

片手でしっかりと握った。
林檎をもとの籠に戻して、刃の先端を持っていない左の手首に持っていく。




ゆっくりと、深く、抉る様に傷をつけていく。
切り終ったところから、鮮やかな鮮血が流れ出る。



「これでいいんだ。サスケ君はもう私のところには来ない。」



そうこれでいいのだ。
でも、ズルイ・・・クロメと夜だけ仲直りして、自分達は破局を迎える。
こんなことってあるのか?


幽霊になったて成仏出来なかったら、取り付いてやろうと思った。
それで満足したら、天にでも昇ろう。
ちょっとだけ死後のことを考えて、サクラは笑った。














「サックラー?!いる〜?」



タイミングが悪かった、いのがサクラの病室に入ってきた。
サクラはとっさに腕を隠す。
まだそんなに血は多くない、匂いでバレはしないだろう。


サクラは少し血が抜けて、ぐったりしていた。
いのは血色の悪いサクラを見て、少し不審に思った。


「サクラ・・?」

「ごめん・・いの私しょっと気分が悪いの。一人にしてくれる?」
「それは、かまわないけど・・・綱手様呼ぶ?」
「いいの・・少ししたら大丈夫になるだろうから・・。」


「そう・・・。」



サクラの体調が悪いのなら仕方ない、いのは帰ろうとした。

「あ、あんたまだ私の持ってきたフルーツ食べてないわね!!」
「・・ゴメン・・・。」
「早いとこ食べちゃってよ〜。すぐに悪くなるものもあるから。」

「わかった。」


「・・・・・・。」


いのはふと傍にあったナイフがいのの視界をとらえた。
なんだ食べようとしてくれていたのかと思ったが、そんな考えはすぐになくなった。
ナイフに血痕がついている。

そういえば少し・・・さっきよりこの部屋が血なまぐさい。
油断してた。


いのはまさかと、思いきやサクラのシーツをひっぺ返した。



「サクラ!!」

「あ・・・いの・・。」



サクラの左手首は多くの血が流れ、ベッドに染みついていた。


「あんた何やってんのよ!」

「お願い・・・誰にもいわないで・・・このまま・・。」

「馬鹿いってんじゃないわよ!」


サクラの瞳は本気だった。
もう誰にも知られぬまま、逝きたいと思っている。
サクラの必死な目に、いのは何もいえなくなってしまった。



「サスケ君を・・・呼んでくるわ。」


「ありがとう・・・。いの。」



こんな事、止められるのサスケ意外考えられない。
いのは必死でサスケを探すことにした。













いのは必死でサスケを探し回った。
こうやって探しえ居る間、誰かサクラの病室に行ってくれていればいいのだが、朝の検診は終わった。
何もない限りは誰も来ない。



どうやら、受付は朝サスケが来たのを見たと行っていた。
ならそう遠くへは行っていないはずだ。



「もう・・肝心なときにサスケ君はいつも居ないんだから!!」


今度もう一発殴っておこうと、いのは心に誓った。




「あ!!」



見覚えのある黒髪を見つけた。
自然なツンツン頭の、漆黒の髪、間違いないサスケだ。




「サスケ君!!」


いのは慌ててサスケに駆け寄った。
サスケもサスケで不機嫌そうだが、サクラの命がかかっている。
怖がる余裕はない。


「お願い、サクラのところに行ってあげて!」


息を切らせて言った第一声に、サスケは何故と顔をしかめた。

「朝、サクラに会った。」

「違うの!!そういうことじゃなくて・・サクラが!!サクラが!!」


「何か・・・あったのか?」



あるのは当然だ、きっとソノ元凶はサスケにある。



「お願いサスケ君、サクラのところにいって!このっまじゃサクラが本当に壊れちゃう!!」

「わかったよ・・。」



今更いっても何もいえないが、いのが必死になって頼むものだから、断れなくなってしまった。
いのの様子を見ると、明らかに何かあったのだろう。
それは簡単に予想がつく。


サスケは急いで病院に向かった。


















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