まだら模様のカーネーション 10





夏大の開会式から数日たった夕方だった。
野球部は一回戦へと向けて、大幅なトレーニンメニューの増加をこなしていた。

今日は一回戦の前日であったため、部活のメニューはそれほど重くなく、
明日に備えて多少軽めにされていた。


そんな中、グランドに三つの影。

その三人の存在に一番先に気付いたのは田島だった。
興味を引かれた田島は、元へ駆け寄った。
学ラン姿は風なのだが、ちょっと違う。
上着が長めで、鉢巻きをしてて下は下駄をはいていた。

「浜田いるか?」

一人が浜田の名前を出すと、田島は浜田を呼んできた。


「お、悪りいな。こっちに来てもらってよ!」

「別にいいって。」

「そうそう。」

この三人は一体誰なのだろうか?
他の野球部員も視線が、浜田と部外者の三人へと集まる。

「あぁ、そっかお前達にはまだ話してなかったな。明日の応援してくれる奴ら。」

そういえば、抽選会から帰った後浜田から、応援団をやってくれる人たちがいると聞いた。
それがいまここにいる人たちなのだろう。

浜田と同じ学年だから、一学年上のようだ。

一人が帽子をとって挨拶をすれば、回りも連鎖で揃って挨拶をする。
応援団をやってくれる人たちも、挨拶を返してくれた。

「で、何人くらい集まったんだ。」

「200人くらいかな?」

「げ、そんなに集めたのかよ〜。」

「でも殆ど、一年生だぜ?三年生はほんとわずか、二年は俺らのクラスが少しと浜田のクラスぐらい。」

「ま、そうだけどよ。」


野球部は、浜田を覗いて全員が一年生だ。

「やりずらい事頼んで悪かったな。」

「別に、ヒマだったしな。」

「で、それが明日着るやつか?」

「そうそう。」

どうやら、応援スタイルのお披露目に来たらしい。

田島は目を輝かせて浜田を見ていた。
カッコイだの凄いだのさっきから連発している。


「篠岡、三橋、お前達も来いよ!」

明日応援を筆頭してくれる人に挨拶しろと、浜田は二人を呼んだ。
篠岡は元気よく返事をして2年生に挨拶をしたが、三橋はネットに隠れて近寄ろうともしなかった。


「どうした?三橋・・。」

「え・・あ・・。」

「大丈夫だよ。怖くないよ?」

篠岡も笑顔で大丈夫と見本を見せるが、頑なにそこを動こうとしない。


「俺達怖い?」

「いや・・そんなことないんだけど・・。どうしちまったんだろう?三橋・・。」


三橋の見せる瞳には怯えているようだった。
同じ年の男の子でさえスムーズに話せないのだから、年上の先輩的存在はもっとダメなのだろうか?

「あ・・!!」


三橋は遠のくようにして、走り去っていった。


「え・・ちょっと三橋?!」

(逃げた〜!!!)


応援団員は三橋から逃げられて事に少しショックだった様だ。

「ああ・・行っちゃったね。」

「可愛い子だったから、しょっと話したかったんだけど・・。」

「悪いな・・アイツちょと男が苦手でよ〜。」

「まぁ、気にしていない。」

「でもそれでよくマネジが勤まるな。」

「野球は好きなんだ。」

「「「ふ〜ん。」」」


(っていうか三橋ってあんな子だったけ?)


浜田の記憶にある三橋は、無邪気に笑って一緒に遊んでい姿。
特に人見知りもしない子だったのを覚えている。
浜田にもよく懐いて、男の子と一緒にキャッチボールだってしていたのに。


(何があったんだ?三橋?)


再会した彼女は、綺麗に育っていたが、儚すぎて壊れそうだった。







次の日、浜田の心が晴れないかのように天気は曇り空だった。
心の天気とシンクロしていてとても嫌だ。


「見事な曇り空だな。」

「降水確率80%だって。」

入場口前、応援団の2年生達が試合に差し支えないような雨になる事を祈った。

「大丈夫かな?浜田達・・。」

「ま、相手が相手だし、全力で応援してやるか。」

「そうだな、あの監督もおっかないしね。」

「そうだな。」





西浦サイドのベンチ側では、本日対戦のポジションと打線発表が行われていた。
それぞれポジションが決まると、円陣を組んで掛け声がスタンドまで聞こえる。


「準便万端ね。」

桐青高校もベンチから出てきたようだ。


「さあ、始めましょう。」

整列が終わると、練習は西浦が先行のようだ。


練習が終わり、桐青高校の練習が終わり、両校互いに整列しえプレイボール。




昨年の優勝高校の桐青と、今大会初出場の西浦高校
誰しもが桐青高校の勝利だろうと思っていた。

まさかこんな所で、とは誰しもが思っても見なかっただろう。
それは桐青高校も対戦していた西浦高校のスタンドにいた観客もだった。


蓋を開けてみてみれば、西浦が9回で逆転勝利を果たしていた。


その衝撃的な勝利が、三橋を危険な目に合わすことも知らすに・・・・・











BACK          NEXT