DOLL 3 破かれた服 荒れ果てた世界 数人の団員に囲まれてククールは痴態をさらされていた。 「いつもの生意気なかおよりずっといい顔してるぜ?」 体を思いっきり揺さぶられて、大人しく耐えてきた。 力では敵わないことはもう知っている。 余計な体力を使わせないように、じっとしていた。 だってそのほうが楽なんだ。 だってもう力は出ない。 与えられる快感に身をゆだねて 時が過ぎるのをまっていた。 「なんだよそんな顔して、もっといい顔しろよ。」 無表情のククールに一人の団員があごを掴みにやりと笑った。 「つまんねぇ顔だなもっと色っぽい顔しろよ。」 その無の表情が気に入らないといい、ククールへ変化を求めた。 しかし、こうなってしまえばいつもククールは終わるまでこんな調子だ。 「ちぇっ!もうそれかよ。最近早いんじゃえの?」 ただ何も考えない。 終わるのをじっと待つ。 これを覚えるようになったのは、思春期を少し過ぎてから。 小さい頃からこの見かけで女扱いされていた。 抵抗すれば、するほど相手はその気になる。 そう教えられたのは、本物の娼婦からだった。 以前、外出でお金持ちの家に祈祷に行ったことがある。 そこの主人はたいそうの節操なしで、綺麗なら男でさえも手を出すと有名だった。 ククールは運良くその男から、汚されることはなかった。 その主人は、一人の娼婦を雇っていたのだ。 「あんた・・・私と同じような感じだね。」 初めて屋敷へ来て、この主人の噂は聞いている。 他の団員達もククールは喰われるとばかり思っていた。 主人が来るまで、部屋で待たされているところに一人の女がやってきたのだ。 彼女こそが主人に目をつけられ、買われた娼婦だった。 「・・・貴方も俺と同じ事をしてるの?」 少し怖かったが、質問されたからは聞き返す。 「そりゃ、私はコレが仕事だからね。でも、あんたは無理やりされてるって感じだね。 見ればわかるよ。・・・まぁそんななりじゃ仕方ないか。」 ククールは自分のこの身なりを呪わない日なんてなかった。 なんでもっと男なら・・・ 「アンタにいい事教えてあげる。」 「え?」 「されてるときはあんまり、抵抗しちゃ駄目よ?」 「どうして?」 女はククールの頭を撫でた。 「だって・・・わかるでしょ?君だって男なんだから・・・」 「・・・」 「すればするほど男はその気になるわ。」 女はかわいらしくウインクをする。 その姿にククールも思わず顔が赤くなる。 「かわいいわね。照れちゃって。」 「おお、こんなところにいたのか。」 屋敷の主人は、扉を開けるなり女にキスをする。 「ごめんなさい。旦那様。可愛いお客さんがきていたから。」 「おぉ・・・噂は聞いているぞ。マイエラ修道院の誇り高き聖堂騎士団の紅の騎士・・。」 「ククールと申します。」 「礼拝堂へ案内しよう。」 「ねー旦那様私も行っていいかしら?」 「おぉ・・・お前は可愛いな〜いいだろう。」 それからはククールが帰るまで娼婦は男から離れなかった。 彼女がいて助かった。 きっといなかったら・・・考えたくもなかった。 「おい・・何考えてやがる!!」 顔を殴られて正気に戻った。 少し前を思い出していたのでは。 「ちぇ!だんまりかよ。つまんねぇな」 「こうなったらククールの奴終わるまでてこでもだからな・・」 「全く白けるね。」 ぶつぶつ文句を言ってもやることはやっているのだ。 貴様らに言われてたくない。 でも、最近ふと思うことがある。 体の調子が可笑しい。 そういえば、あの人も早死にしたんだよね。 こんなことをやらされる人は、体がボロボロになって死ぬのかな・・? 「・・・じゃあな・・またなククール。」 「お前・・・もっと今度はいい顔しろよ。」 「声だって出してくんないと盛り上がんねえっての。」 へらへラと言いたい事をいって団員達は去っていった。 また今日も体が痛い。 コレが始まってからはいつもこうだ。 全く持ってよくならない。 昼間はゆっくりできればいいのに、そうもいかない。 兄の集中攻撃を受けるのだ。 明日は合同での剣の練習稽古があるというのに・・・ 最悪、此処でねるという事もある。 朝になってからこのドロドロしたものを洗い流す。 今日は此処で寝ることになりそうだ。 体が動いてくれない。 手が足が震えて動いてくれない。 拷問室は冷える。 一回風邪をひいたことがあった。 初めて此処で泊まって最悪だった。 きっと明日はあの時ぐらい最悪なんじゃないか・・・? 考えたくないな・・ 明日なんか来なければいいのに・・・ 楽になりたい・・ どうすればいいんだろう・・・・・・ ”あんた私とおんなじだね・・・” 「きっとそうだね。マリアさん・・」 きっとそうだ。 「俺もマリアさんみたいに早く死んじゃうよね。同じ理由で・・・」 あぁ・・・眠い。 もう眠ろう。 明日はきっと大変だから・・・・・ ひんやりとする拷問器具が立ち並ぶ中、ククールは凍えるようにすやすやと寝息をたてていた。 |
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